【第6章】第8話:三つのタスクと、盤石なる定跡
いつもお読みいただき、ありがとうございます!
温泉旅館という究極のビジネスロジックを打ち立てたフォージ。
今回はいよいよ、その途方もない計画を実現するための「実作業(タスク割り振り)」が始まります。
「よし! それじゃあやることの整理と、メンバー選定に入るぞ!」
(ゼノン、ここからの進行は任せるぞ)
『――マスター! お疲れ様です! 今後のタスクを整理し、推奨選択肢として演算いたしました!』
同時に、俺の視界の端にホログラムのウィンドウが展開され、三つの選択肢が表示される。
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【行動を選択してください】
①システム・マイグレーション実行:「弦、解体を開始しろ」と命じ、王都の拠点をリソース化。同時に、この土地を「ダンジョン・エリア」へ書き換える作業を始める。
②ルナへのリソース確保指示:「よし、ルナ。周辺のダンジョンからリソースを狩ってこい。ただし、無理はするな」と、彼女に「素材集め」という名の勇者業を任せる。
③魔力炉の同期:「まずは原初の魔力炉を俺の管理下に置く」と、王都の地下深層にある魔力炉のプロトコル解析を最優先する。
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(ゼノン。俺が説明したロードマップを細分化できてる。良い感じだ。ちゃんとこのトークの流れを理解できてるな)
『ありがとうございます! 裏で議事録しっかりとっていましたので!』
久しぶりの登場となったゼノンの調子は良いようで、安心した。
この世界自体が、俺にとってはTRPGのシステムそのものだ。ゼノンの的確なサポートは本当に助かる。
(頭の中が整理できた。……よし、この通りに進めるか)
俺はゼノンの選択肢をなぞるように、ホワイトボードに書き込みながら声に出した。
「まずは、ルナ。お前には②のリソース確保……つまり、周辺のダンジョンからの収集を任せたい」
「はいっ、お兄様! 私、いっぱい悪い魔物を倒して、お兄様の旅館の材料を集めてきますわ!」
「ああ、頼んだぞ。ただし、市民の生活に支障が出るような、放置されて実害が出ているダンジョンに絞ってくれ。ギルドに行けば情報があるはずだ。絶対に無理はするなよ」
「お任せください! お兄様の秘密基地のためなら、どんな魔物も一撃ですわ!」
ルナは嬉しそうに俺が作ったハンドメイドの剣を握りしめ、意気揚々と仮会議室を飛び出していこうとする。俺はその首根っこを捕まえて座らせた。
「ありがたいが、気が早い。お前一人でも勝てるだろうが、回収や運搬の雑務もある。何人か人型の配下を連れていってくれ」
「あ……なるほど! 確かに私一人だと、お荷物が持ちきれませんわね」
「それと、もう一つ重要な設定がある」
俺はルナのギルドカードに触れ、システム権限にアクセスした。
「ダンジョンで得たリソースを直接こちらの拠点ポイント(DP)に還元するため、ルナにこの拠点の『サブマスター』権限を付与する。これで、お前が倒した分も無駄なくこっちの資産になる」
「サブマスター……! よくわかりませんけれど、お兄様の次にかっこいい役職ですわね! 頑張ります!」
権限付与《パーミッション設定》を終え、目を輝かせるルナを見送った後、俺は皆に向き直った。
「さて、残るは①の王都拠点の移設と、③の魔力炉の同期だ。……③は、地上の準備ができてからだな」
『ふむ。原初の魔力炉の確保を後回しにするのか?』
「はい、アルバス様。攻めるにしても、まずは守りを固めるのが鉄則です。いくら強力なエンジン(魔力炉)を手に入れても、それをマウントする車体(拠点)が完成していなければ、敵の標的になるだけですから」
将棋の「囲い」と同じ定跡だ。
俺の言葉に、戦神オルステッドが深く頷く気配がした。
『……理にかなっている。まさに軍師の采配。敵の攻撃を無効化する盤石な陣形があってこそ、攻めは鋭さを増す。主よ、貴公の武の理は、この世界の軍略をも凌駕するようだ』
『ガハハ! 地上の準備が整うまで魔力炉を温存するのも賢明だぜ! 端から着実に制圧していくとしよう!』
神々の賛同を得て、俺は管理者の黒衣を纏う弦へと視線を向けた。
「そういうわけだ。弦、①の拠点移設を少し気長に始めてくれ。王都の地下の解体は、ログを汚さないように低負荷で進めるんだ」
「……御意。王都のコアを抽出し、この土地をダンジョン・エリアとして書き換えるバックグラウンド処理を開始いたします」
「旅館を運営するとなれば、接客や裏方を回すスタッフが必要になる。弦、この作業にあたっておすすめのメンバーはいるか?」
俺の問いに、弦は実務家らしい無駄のない所作で答える。
「……ハッ。私が影の宰相であった時代に、諜報や身辺の世話に特化させていた『影の侍女』や『書記官』が数名、マスターの再錬を待機しております。彼女らであれば、旅館のサービスを完璧にこなすパーツとなるかと」
――ビンゴだ。
接客スタッフの人材不足というエラーも解消できる。
「うん、良い人選だ。よろしく頼むよ」
「身に余る光栄です。直ちに手配いたします」
「よし。ルナが帰ってくるまでに、まずはその侍女たちの再錬と、新拠点の地盤固めを行うぞ」
俺はホワイトボードに『初期化完了』のチェックマークを書き込み、ペンを置いた。
ここからいよいよ、この地での本格的な環境構築がスタートする。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
ゼノンのTRPG風サポートによりタスクが明確化され、ルナにはついに「サブマスター」の役職が与えられました! これで彼女の活躍も無駄なく拠点の養分(DP)になりますね(笑)。
そして「まずは守り(旅館の運営基盤)を固める」ことを選択したフォージ。弦の的確な人選により、いよいよ新たな配下となる「影の侍女」たちの召喚に乗り出します。
次回、フォージの再錬によって侍女たちはどのような姿で現れるのか!?
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