【第4章】第2話:予算なき調達計画は、ただのウィンドウショッピング
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第4章のスタートです。ジェマが提示した「王道3択」を、「ガバガバな要件定義」と切り捨てるフォージの真意とは?
フォージがまず着手するのは、果たして……。
「ダイブした直後、俺の視界に先ほどのタスク一覧を表示してくれ。その上で、現地サポートであるお前自身の『おすすめ』を提案するんだ。いいな?」
『も、もったいつけないでくださいよぉ……!』
「ハッハッハ。期待してるぞ、ナビゲーター。さあ、元の世界へ同期だ」
視界が真っ白な空間から、王都の賑やかな通りへと切り替わる。
現実の時間の流れが再開した直後、俺の網膜に半透明のシステムウィンドウがポップアップした。
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【AI推奨の次期課題】
▶ 選択肢1:新たな仲間を導くため、ギルドで情報を探す
▶ 選択肢2:己の枷を外すため、強敵を求めて実戦を行う
▶ 選択肢3:共に成長する器を求め、武器屋へ向かう
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『マスター! 私の現地サポートAIとしての推奨は、ズバリ【選択肢3】です! ここはやはり、冒険の基本である初期装備の調達から始めるべきかと!』
ゼノンの弾んだ声と共に、俺の目の前には無骨な看板を掲げた『武器屋』があった。そして隣には、期待に目を輝かせているルナがいる。
「お兄様、行きましょう! ルナ、お兄様に似合う最高に強くてカッコいい剣、一生懸命選びますわね!」
鼻息を荒くして扉に手をかけようとするルナ。……だが、俺はその肩を優しく叩いて制止した。
「待て、ルナ。予定変更だ。まずはギルドへ行くぞ」
(ゼノン、正解は【選択肢4】だ)
「えっ? ギルド、ですか? でも、さっき『武器屋に行く』って……」
ルナが不思議そうに首を傾げる。
その脳内に、ゼノンの狼狽した声が響き渡った。
『マ、マスター!? 何をおっしゃるのですか! 【選択肢4】なんてどこにもありませんよ!? それに今の課題の最優先は武器屋だったはずです! ギルドでの情報収集は優先度を下げたはずでは!?』
(ゼノン、お前もジェマも、現場というものが分かっていないな)
俺は心の中で、テンパっている支援AIを諭すように告げた。
(いいか、今の俺たちの手持ち(リソース)を見てみろ。昨日の宿泊費と食事代で、残金はほぼ底をついている。この状態で武器屋に行って、何を買うつもりだ? 見積もりだけ取って『検討します』と帰ってくるのか?)
『あ……。そ、それは……』
(予算のない調達計画など、ただの空論だ。それにだ、昨日のあの安宿……あんなサーバーラック以下の寝床に、いつまでもルナを置いておけるか。福利厚生はプロジェクトの基本だぞ)
高パフォーマンスを発揮するエンジニアほど、良質な睡眠と環境を求めるものだ。
ルナは勇者、いわばこのプロジェクトの「エースプログラマー」だ。彼女の士気を削るような労働環境(安宿)を放置するのは、PMとして失格だ。
『さ、流石はマスター……! 目先の装備よりも、まずは開発資金の調達と開発環境(宿所)の整備を優先されるのですね!』
「お兄様、どうしたの? 難しい顔をして……」
「いや。ルナ、いいか。最高の剣を買うには、最高の予算が必要だ。それに、お前をいつまでもあんなボロ宿に泊めておくわけにはいかないからな。まずはギルドに行って、現在の調査報告と、前金の交渉をしてくる」
「お兄様……。ルナのこと、そんなに考えてくださっていたのですね……っ」
ルナが感動に打ち震え、潤んだ瞳で俺を見上げてくる。
……まあ、兄貴として可愛い妹にいい思いをさせてやりたいというのは、理屈抜きの本音でもあるんだがな。
「……というわけでゼノン。ジェマの出した3択は一旦保留だ。差し込み案件として『ギルドでの報酬交渉』を最優先で実行する」
『了解いたしました、マスター! ルート再計算……完了です!』
『目標は、ギルド職員を論理で言いくるめ、相場以上の前金(予算)をせしめることですね!』
俺たちは武器屋に背を向け、冒険者ギルドへと足を向けた。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
ジェマが用意した「3択」に、自ら「選択肢4」をねじ込み華麗にスルーするフォージ。彼が選んだのはまさかの「予算交渉」でした。
「お金がないのに買い物に行けるか!」という、身も蓋もないけれど正論すぎる一言。まさに現実世界のプロジェクトと同じですね(笑)。
そしてルナへの福利厚生を忘れないフォージ。
やっぱり、デキる上司(兄貴)は、部下(妹)の労働環境には妥協しません!
次回、ギルドでの交渉はどうなるでしょうか。
高次元存在(読者)の皆様、フォージがギルド職員をどう論破するのか、ぜひ見守って(評価・ブクマして)いただけると嬉しいです!




