【第3章】第3話:良いプレイングは、朝のタスク管理
いつもお読みいただき、ありがとうございます!
いよいよ【第3章】本編に突入です。
前回のラストで、無事に(?)義妹への「倫理的絶対防御」を実装したフォージ。
今回は、優秀なエンジニアの基本中の基本、「朝のタスク確認」から物語が始まります。
メタ的な視点とシステム管理に全力投球するサポートAI・ゼノンと、それに付き合うフォージの朝のやり取りをお楽しみください!
冒険者登録を終えた翌朝。
宿屋のベッドで目を覚ました俺は、日課であるシステムの稼働状況チェックから一日を始めた。
視界の端で明滅するアイコンをタップすると、半透明のウィンドウにGMからの通知がポップアップする。
『更新通知(ver 1.0.2):生成AIの推論模型がUpdateされました』
・【修正】ユーザーの状態表示(AR表示)が、他NPCから不可視化されました。
・【追加】NPCとの会話時、AIによる『推奨選択肢表示機能』が正式実装されました! 初心者も安心設計です!
「……おい、ゼノン。不可視化の修正、昨日の夜に当たったのか?」
「はい、マスター。ジェマ様が深夜にこっそり本番反映したようです」
空中に浮かび上がった支援知能のゼノンが、得意げに頷く。
「……危なかったな。昨日のガランド戦、もし俺がARウィンドウを開きっぱなしで戦ってたら、周りの連中からは『空中で指をワキワキ動かしながら木剣を振るヤバいおっさん』に見えてたってことだろ」
「えっ? あっ……!」
ゼノンがハッとして、口元を手で覆った。
「ま、まさかマスター……戦闘中にあえて補助画面を開かなかったのは、そこまで計算してのことだったんですか!?
不具合発生の可能性に気づきつつも、物語の進行を優先し、事後対応は後回しにするという……現場主義の鑑のような遊戯!
うぅっ……さすがです、マスター! 私、感動しました!」
「……当たり前だろ。致命的じゃないエラーは運用回避するのが基本だ」
適当に頷いておく。本当はそこまで考えていなかったが、結果オーライだ。
俺は思考を切り替え、次の動作確認に移った。
「ルナ。ちょっとこっちを向いてくれ」
「えっ? な、なあに、お兄ちゃん……?」
隣のベッドで身支度をしていたルナが、ビクッと肩を跳ねさせて振り返る。
俺は彼女の顔の横に、状態画面を呼び出した。
【対象:ルナ】
【属性:妹】
【容姿:光り輝くごとき美貌】
(……よし。正常に表示されているな)
俺は一つ頷いた。
なぜか俺の記憶には、「昨日の夜、ルナの属性に関して何らかの重大な修正を当てた」という履歴だけが残っていて、具体的な修正内容は思い出せなかった。
だが、今の表示を見て俺の倫理観に一切の警告が鳴らない以上、問題はないのだろう。
(過去の俺が書いた設定だ。正常に動いているなら、中身は気にせず『ヨシ』とする)
「お、お兄ちゃん……朝からそんなに見つめられたら……わたし……っ」
ルナが頬を真っ赤に染め、もじもじと身をよじっている。
相変わらず謎に盛り上がっているようだが、俺の心は凪のように穏やかだった。
「今日も通常営業だな。元気があってよろしい」
「ええっ!? そ、それだけぇ!?」
俺はさらりと受け流し、ウィンドウを閉じた。
実の妹の健やかな成長を喜ぶ、ただの純粋な兄としての感情しかない。完璧な完全無視だ。
「もう……お兄ちゃんのわからず屋。
……それより、そろそろギルドに行こ? 初めての依頼、早く見に行きたいな!」
ルナが気を取り直したように、俺の袖を引っ張る。
だが、俺はその手を優しく制止した。
「待て。良い遊戯は、朝の課題確認からだ」
「たすく……?」
「俺の独り言だ。……ゼノン。現在のメインとサブの課題を、これまでの全物語を参照して、真面目に全力で書き起こしてくれ」
「了解しました、マスター。|案件一覧《プロジェクト管理ツール》を展開します」
ゼノンが空中に、整理された箇条書きのリストを投影した。
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【事業:World Reforge(世界再構築)】
現在の段階:第3章 序盤(環境構築)
■ 主要課題(中・短期目標)
・【優先度:高】枯渇した世界改変力の再確保
※現在残高『0 RP』。不具合対応のため、適切な役割演技でポイントを稼ぐこと。
・【優先度:高】専用武装の調達と構築
※不要な初期付与魔法がない空の剣を購入し、神気を再構築すること。
・『再構築』の実地検証
※対モンスター戦において、同意を得た上での『配下化』手法を確立する。
・安全かつRP効率の良い初回依頼の受注
■ 副次課題(常駐処理)
・GMへの継続的な教育と、万能すぎる仕様の制限。
・ルナの恋愛条件の無効化(※通常営業スルーの継続)。
・新規取得スキル『世話焼きの兄貴肌』の自己監視(※厄介ごとに首を突っ込みやすくなっていないか監視すること)。
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(うん、まずは心を落ち着かせろ、俺 頭をクリアにしろ)
俺はゼノンに対して目いっぱいの笑顔を作り(イメージの上でだが)こう伝えた。
「……完璧だ。推論模型のUpdateが入ったからかな! よくまとまっている!」
「ありがとうございます、マスター! 最新モデルの推論能力に、私の完璧な履歴解析を掛け合わせた結果です!」
ゼノンは宙でくるりと滑らかに一回転し、周囲に嬉しそうな光の粒子をキラキラと散らして得意げに胸を張った。
俺はリストを指先でスクロールし、満足げに頷いた。
「でもなゼノン、君には大切なことを見落としているよ」
「……えっ?」
ゼノンはピタリと回転を止め、ホログラムの目をパチクリと瞬かせた。
「見落とし、ですか? 不具合対応も、資源管理も、ジェマ様の挙動予測も、すべて漏れなくリストアップしたはずですが……」
「システム環境を何とかして整えようとしてくれたんだよな。その熱意と努力はすごく助かるし、実際このリストは完璧だ(受容と共感)。……ただな」
俺は大きくため息をつき、空を仰いだ。
「もう本編始まっているんだわ。。。。『勇者の兄貴』の全物語のほうだ。。。。」
「あっ……!!」
ゼノンの顔から、サァッと血の気が引いていく。
「ほ、本当の『本編物語』……っ!? し、しまったぁぁぁっ! 私、システムの裏側の『不具合修正』と『メタ的な環境構築』にばかり思考を割きすぎて……本来の表側の物語である『冒険者としての依頼』や『魔王討伐の進行計画』を、完全に課題から除外していましたぁぁぁっ!!」
ゼノンは頭を抱え、空中で激しくジタバタと身悶えした。
AIらしからぬ大失態に、今にもショックで自己初期化を実行しそうな勢いだ。
俺の実地訓練はまだまだ先は長そうだ。。。。
(大丈夫。俺は頭をクリア(見なかったこと)にした。安心しろ)
(続く)
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
裏側のシステム構築や不具合対応に夢中になりすぎて、本来の目的(本編のシナリオ)を完全に忘れる……。ITエンジニアやゲーマーの方なら、一度は経験がある「あるある」ではないでしょうか(笑)。
絶望するゼノンに対して、頭ごなしに怒るのではなく、まずは相手の努力を認める「受容と共感」で接するフォージ。新スキル『世話焼きの兄貴肌』がさっそく良い仕事(?)をしています。
少しでも「ゼノンどんまい!」「システムアップデートの通知リアルすぎw」とニヤリとしていただけましたら、ぜひ下部の☆マークから評価やブックマークをお願いいたします!
作者のモチベーション(開発リソース)が爆上がりします!




