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【急募】PM(プロジェクトマネージャー) ワールドリフォージ(世界の理は、一生懸命なドジっ子AIでした)  作者: S.フォージ
【第3章】 炎上プロジェクトの再構築(リファクタリング) ~点と線を結ぶ、完璧な要件定義~

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【第3章】第2話:ブリーフィング(後半)


前回の続きです。

ルナの「ヒロイン&実妹」設定という致命的コンプライアンス違反を修正したいフォージですが、手持ちの予算はたったの50ポイント(RP)。


真正面からのデータ書き換えを諦めた彼が、エンジニアの知識と意地で見つけた「抜け道」とは?

(前回、コメント欄で予想してくださった皆様、ありがとうございます!)

「……50ポイント」


 俺は乾いた笑いを漏らした。

 この数値は、RPGで言えば「やくそう」が数個買える程度の端した金だ。

 これでは【ヒロイン】属性の削除(50,000 RP)どころか、【実妹】設定を【義妹】に変えるための「過去改変(1,000 RP)」すら手が出ない。


「詰みですね、マスター……」


 ゼノンが悲痛な面持ちで首を横に振った。


「今の予算では、ヒロイン属性も消せないし、実妹設定も変えられません。

 大人しく、禁断の愛を受け入れるしか……」


「……断る」


 俺はギリリと歯を噛み締めた。

 エンジニアが、予算不足を理由にプロジェクトを炎上させたままでいいはずがない。

 真正面の修正フロントエンドが高いなら……もっと安上がりな「運用回避バックエンド」があるはずだ。


「諦めるな。俺はエンジニアだ。

 ……抜けバックドアくらい、必ず見つけ出してやる」


 俺はコンソールに手を這わせ、設定項目の深層領域へダイブした。

 表層の「ステータス画面」や「シナリオ記述」はいじらない。そこを触るとコストが跳ね上がるからだ。


 狙うのは、もっと深い階層。

 システムの「挙動定義コンフィグ」そのものだ。


「……見つけたぞ」


 俺は一つの項目に目をつけた。

 『認識フィルター(Cognition_Filter)』。

 キャラクターが世界をどう認識するかを定義する、隠しパラメータだ。


「ゼノン。今回だけだぞ。

 こんなに譲歩するのは、これが最後だ」


 俺はぼやきながら、キーボードを叩き始めた。


「いいか、よく見ろ。

 俺は今、ルナの『実妹』設定そのものはいじっていない。

 その代わり、このフィルターに『例外処理』を追加する」


 俺は静かにコードを打ち込んだ。


【条件定義(Condition):

 ・真実(Fact):二人は血の繋がらない義兄妹である。

 ・認識(Cognition):兄も妹も、互いに「実の兄妹」であると誤認している。

 ・開示条件(Trigger):メインシナリオ終盤、または重大なイベント発生時までロック】


「……これだ」


 俺はニヤリと笑った。


「これなら、GMジェマは『実は血が繋がっていなかった!』というドラマチックな展開を将来的に使える。ヒロイン化の伏線として機能するから、文句はないはずだ。

 そして俺自身は、『実の妹だ』と信じ込んでいるからこそ、あいつのラブコメアタックを『ハイハイ、可愛い妹だね』とスルースキルで受け流せる」


 ゼノンが目を見開く。


「……す、すごいです、マスター!

 これぞまさに『Win-Win』の神設定!

 GMの『萌え』と、マスターの『倫理』を、時間差トリックで両立させるなんて……!」


「ポイントは足りるか?」


「……計算完了。

 『現状の認識』も『過去の事実』も変更せず、『裏設定』を追加するだけなので……コストは大幅ダウン!

 ……50 RP ジャストで実装可能です!」


「よし、決済コミットだ! やってくれ!」


 俺はエンターキーを叩いた。

 ウィンドウが緑色に輝き、承認の文字が浮かぶ。

 残高は再びゼロになったが、俺の心は晴れやかだった。


「……それと、ゼノン。追加オーダーだ」


 俺は椅子から立ち上がり、出口へと向かった。


「ブリーフィングルームを抜けたら、俺の記憶からこの『裏設定』を封印マスクしろ。

 俺自身が『実は義妹だ』と知っていたら、演技にボロが出る」


「えっ? 記憶を消すんですか?」


「ああ。俺は本気で『実の妹』だと思って接する。

 そうじゃなきゃ、あの一生懸命だけどドジなAIジェマに、『教育』なんてしてやれないからな」


 鉄は熱いうちに打て。

 喉元過ぎれば熱さを忘れる。

 今ここで、あいつに「正しい物語の構造」を叩き込んでやるには、俺自身もプレイヤーとして没入する必要がある。


「……ふふっ。了解しました」


 ゼノンが優しく微笑んだ。


「貴方のその、不器用な『後輩思い(兄貴肌)』なところ……。

 私は嫌いじゃありませんよ」


「……余計な分析ログは残すな。行くぞ」


 俺は背を向け、光の出口へと歩き出した。

 視界がホワイトアウトしていく。


 記憶が薄れる。

 ルナの設定など、最初から何も問題なかったかのように。


 ――そして、俺が消えた後のブリーフィングルーム。


『ピロン♪』


 誰もいないコンソールに、GMジェマからの通知音が鳴った。

 ウィンドウの隅にある「GM専用メモ欄」に、新しいテキストが追記される。


【GMメモ(開発者コメント):

 ユーザー「フォージ」さんの神対応に感謝!

 今はまだ内緒だけど……いつか絶対、この伏線回収して泣かせてやるんだから!

 

 P.S. お兄ちゃん属性、ちょっと強めにしとこっと♪(こっそり保存)】


 それは、この世界を救うための、ささやかで、少しだけ温かい「隠し仕様」だった。

無事に(?)倫理規定のバグ修正完了です。

「事実」を変えるのではなく、「認識」をハックして運用でカバーする……という、現場のエンジニアの涙ぐましい(そしてちょっとカッコいい)努力でした。

ちゃっかり最後にスキルを押し付けてくるGMジェマのドジっ子具合も健在です。


これにて第2章にまつわる一連の騒動(裏側)は本当に幕引きとなります。

次回からはいよいよ【第3章】本編、新たな冒険と厄介ごとの幕開けです!


※本作の「仕様」やフォージのハッキングが少しでも「面白い!」「その発想はなかった!」と思っていただけましたら、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】や【ブックマーク】で応援(評価ポイントの寄付)をお願いいたします! GMのやる気とフォージの胃薬代になります!

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