11. 悲劇、そして、打撃
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「え? 何か言った?」
「な、何でもないです! べー」
初めて出会った頃と比べて、俺に見せるユリシアの表情は豊かになった。
それを見て、なんだか名残惜しさを感じていると、先を行くユリシアの足元に何かが見える。
「ユリシア、足元に何か落ちてない?」
「へっ……?」
ユリシアは俺の指さす先を見る。
そこには手のひら位の大きさのカエルがいた。
「かっカエル!!! キャー!!!!」
驚いてユリシアはその場に倒れこむ。
ばっしゃーん。
肩に担いでいた天秤棒が空中でひっくり返り、中に貯めていた水がユリシアめがけて容赦なく降り注ぐ。
「ひっ、ひ、うぅ……。いつも私、こんなことばっかりぃ……」
「大丈夫か……? ユリシア……って……!!」
慌てて駆けつける。
そこに倒れこんでいたユリシアは体中が濡れ、着ていた青白いドレスが透け、中の下着が見える。
それは……、白のチュニック。
「!!!!」
控えめなフリルが裾に結わえており、そこから窮屈そうな胸がこぼれんばかりに締め付けられているのが見える。
水に充てられた服の表面は光沢感を帯び、その艶やかさはまるで誘っているようだ。
だ、ダメだ意識しちゃ。
俺は目線を振り払う。
と、そのとき。
「!?」
俺の胸の鼓動が早くなってくる。
この自分が自分でなくなっていくような感覚、危険だ。
オスフェルとの邂逅の際と全く同じだ。
自分でももう手遅れなのが分かってしまう。
"赤ちゃんになる。"
ユリシアの前で。
この異世界の地で、唯一俺を変態として扱わず、無償の愛を分けてくれる。
俺にとっての唯一の希望、ユリシアの前で。
嫌だ。
ユリシアにあられもない姿を晒し、今までの人々と同じように拒絶され、嫌われる。
それだけは絶対に嫌だ。
とにかく別のことを考えろ。
そうだ。ダクトだ。
ダクトに母性なんて一ミリも感じないし俺の赤ちゃん化を止めてくれるはずだ。
俺は目をつむってダクトが海パン一丁になってこちらにセクシーアピールをしている様子を想像する。
「ヘイヘイ……。はいとぉ……、こっちの水はあまいぞぉ?♡」
よし……、よしいいぞ……! まったくもって興奮しない!
それどころかどんどん変な気がなくなっていく!
赤ちゃんに戻るような感覚も母性とは真逆のこのイメージをもってして封じ込められてそうだ!
「よぉ……。つらかせよぉはいとぉ。俺の上腕二頭筋みろってぇ……」
ひげ面のおっさんがこちらに近づいてくる。
これはこれでなかなか来るものがあるが、ユリシアのことを思えばなんてことはない。
「はいとさん……? 大丈夫ですか?」
俺は自分の想像に精一杯でうかつだった。自分の目の前に近づいてくるユリシアに気づくことができていなかった。
そう、膝立ちで起き上がり、どるんどるんと両胸を弾ませながらこちらにやってくるユリシアの姿に。
重力に負けゆらゆらと揺れている2つの特大水ようかん。
それに気づいた瞬間、俺の中の幼児退行リミッターが一瞬でマックスまで行く。
もう考えずともわかる。
終わった、終わったのだ。
俺の意識は赤ちゃんにとって代わられる。
その準備が完全に整ってしまったのだ。
大きな瞳でこちらをジト目で見上げるユリシア。
「……ユリシア、逃げろ」
俺は最後の力を振り絞りそうユリシアに告げる。
「……? はいとさん、どうかしたんですか?」
キョトンとした顔のユリシア。
自分の顔にかかった水を手の甲で払っていた。
その間にも揺れる水ようかん。
俺の胸の中の赤子は静かにそれを見つめている。
「……ん、ま……」
「……はいとさん?」
ユリシアは不安げにこちらを見つめる。
「……ま、……まま」
「まま?」
ユリシアは俺の口から出てきた俺ならざる者の発した2文字を復唱する。
駄目だ! 逃げろ、ユリシア!!
「んまま~!!!! ぱいぱ~い!!!!」
ユリシアは明らかな俺の異変に気付く。
「……!! はいとさん?!」
「ちゅーちゅ、ちゅーちゅーしたいでちゅー!!!!」
俺の身体を奪った俺の赤子はユリシアの胸めがけて四つん這いで飛びつく。
俺はその様子を、まるで幽体離脱をしているような感覚でただ傍観するしかなかった。
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