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9. ユリシアの想い(3)

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「死ねぇぇぇ!!! はいとぉ!!!」


ダクトのバトルアックスが俺めがけて振りかぶられた。


「嘘だろ?! 俺、こんなところで死ぬのかよ…!」


もう駄目だと思ったその時……。


「「いい加減にしてくださいっ!!!!」」


意識を取り戻したユリシアが、恐ろしい剣幕でダクトを睨んでいた。


今の、ユリシアの声か……?


普段あれだけか細い声のユリシアから、今の地響きのような大声が出たとは信じられない。


「い、いや、だってよ、お前、今こいつに口説かれてたじゃねえか。

嫌だったろ……?」


今まで見たこともないようなユリシアの様子にダクトはたじたじになっている。


「そんなこと、私、一言も言ってません。

はいとさんは、優しくて誠実な人です。

ダクトさんの思ってるような人じゃありません……!

これ以上、私の大切なお客様に危害を加えるようであれば、私はダクトさんを許しません」


ユリシア……、いつも引っ込み思案なのに、俺のためにこんなに感情的になってくれてるのか。


「わ、悪かったよ。ちょっと早とちりしていたみてぇだ」


ダクトはバトルアックスを下げ、キョロキョロと目を泳がせながら両手を広げて降参した。


「だ、大丈夫でしたか……? はいとさん……」


俺に振り返ったユリシアはいつも通りの優しい雰囲気のユリシアだった。


「あ、ああ……。

ありがとな。

でも驚いたよ。

ユリシアって度胸あるんだな」


ユリシアはもじもじと両手をこちらに振る。


「はぅ……。

そんなこと、ないですよ……。

でも、はいとさんのことを思ったら、自然と……」


「そっか……。ありがとな!」


俺はユリシアの頭を撫でる。


「う、うぅ……////」


ユリシアは頬を赤くしながら下を向く。

どうやら嬉しそうだ。


ユリシアのおかげで何とか場は収まり、俺はダクトのバトルアックスで八つ裂きにならずに済んだ。

落ち着いたダクトは話をしだす。


「お前とユリシアのことにはもう手は出さねえから安心しろ。

ユリシアが嫌じゃないって言うんならな。

だが、もしユリシアを悲しませるようなことがあったら、今度こそお前をひき肉にしてやるからな。

覚悟しとけ」


ダクトは俺ににらみを利かす。


「お、おう……」


「だが、今回は俺の親心が行き過ぎていたようだ。

すまなかった」


「ま、まあいいって。

お前がユリシアのことを本当に大切にしているのは分かってるからな」


すると、ダクトは突然俺を抱きしめる。


「う、うおぉぉぉ!!

はいと、疑ってすまなかった!

やっぱり、お前はいい奴だったんだな!

街でお前のあんな姿見てからお前を信じられなくなっていたんだ……。

街の奴らがどう思っているかは置いとくとして、少なくとも俺はお前の味方だ!!」


ダクトの力強い抱擁によって、俺のあばらはめきめきと悲鳴を上げている。

ダクトの誤解が解けたのはよかったとして、街での俺の噂はやはり芳しくないらしいな……。


「お前酔ってんのか?!  わかったから、体をどけてくれ……。お前の愛が強すぎて、俺のあばらが持たなそうなんだ……」


「おっと、わりいわりい。」


やっと俺の身体が解放された。

ふらふらとよろめく俺をユリシアが支えてくれた。


「そんなことよりもだ、今日はお前らに伝えることがあってきたんだ。

最近、化けガエルのあの一件以降、魔物がらみの事件がよく起きるだろ?

それで、王国の方からも警告が来てな、不用意な外出は控えろとのことだ」


「魔物……」


ユリシアはそれを聞いて不安げに目線を落とす。

俺に触れたユリシアの手に力が入る。


「大丈夫だって。魔物なんて俺が一撃で仕留めてやるよ」


「はいとさん……」


ユリシアは俺を見つめる。

ダクトが俺の肩を叩く。


「そうだぜ。

こいつはこう見えても戦闘の腕は確かだからな!

化けガエルの時だってな……!

まあ、そのあとは……、まああれも何か事情があったんだろ! な?」


ダクトは苦し紛れに俺をフォローする。

その様子を見て、ユリシアは不思議そうに首をかしげる。


「化けガエル……。そういえば、はいとさんにずっと聞きたかったことがあるのですが……」


「なんだ?」


「はいとさんが私と一緒に町に出た日以降、街の人たちがなんだかはいとさんの話題を避けているようなんです。

私がはいとさんについてみんなに話すと、触れちゃいけないような雰囲気になってしまって……。

あの日、私と別れた後で何かあったんですか……?」


「うっ?!」


一緒に暮らしていればいつか聞かれるとは思っていたが……。

あの日の俺の醜態は今のところユリシアには知られていないようだった。

正直なところ、ユリシアには絶対知ってほしくない……。

嫌われたくないから。

だが、ここでごまかし続けるのも、俺を信頼しきってくれているユリシアに面目が立たない。


「あ、あの日、あの後な……」


俺が一部始終を告げようとしたその時、ダクトが割って入ってきた。


「実はな、あの化けガエル倒したの、はいとなんだよ!

だからみんな尊敬してなかなか話題に出しにくいんじゃねえか?

な! きっとそうだろ!」


ダクトは俺の肩を揺らす。

仲間になってくれると心強い奴だ。


「そ、そうかも……な」


うん。嘘はついてないぞ。

ユリシアはそれを聞いて驚く。


「はいとさん……、すごいです……!

戦闘もできるんですね……!」


「いや、別に俺は大したことは……」


実際ガラガラを振りかざしただけだからな。


「わっはっは。

何かあったらはいとに守ってもらえ。

それから、明日のパーティのことも安心しな。

ユリシアのためにこの辺の奴らがみんな集まってパーッとやってやるからな!

……そうだな、明日で最後だもんな」


そう言ってダクトはしゃがみこんで泣き出した。

あわあわとそれをなだめるユリシア。


そう明日はユリシアの都への上京を祝うパーティの日だ。

ユリシアがこの町にいるのは明日が最後になる。


(続く)

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