7-16.海の魔獣討伐大作戦!の打ち合わせ 前編
「···ん、改めてよろしく。私はハル。こっちのナナと一緒に世界中を旅しながら冒険者なんて仕事をたまにやってるんだ」
「あたしはナナよ。見ての通り青竜の一族のドラゴンよ。ハルとは気の合う相棒のようなものだから息はバッチリよ!よろしくね~」
「ボクはアキって言います。見た目は女の子に見えますけど、男ですからね。···ちょっとした事情で今は女の子にされちゃってますけど」
「「···え?女の子、じゃない?ウソでしょ?」」
「···なんで息ピッタリで返すんですか?本当ですよ。ただ、今は体が女の子になってしまう邪法を受けてしまってね。見た目は変わらないんですけど女の子になってます」
「···はー。これはビックリしたわー。こんなかわいい男の子が世の中にいるのね~。世界中を旅し始めたけど、こんな事もあるのね~」
「···うん、ビックリした。里で教わった『見た目に騙されるな』といういい例だね。今日もひとついい勉強になった」
「···それはどうも。なかなか納得してくれない人が多いので、ご理解いただけただけでもありがたいですよ」
「···もしかして気を悪くした?それなら謝るよ。ゴメンね。···それと、そちらの白銀竜のお名前を聞いてもいい?」
「オレはリオって言うんだー。アキとは一緒に世界中を旅して回ってるんだぞー」
「へぇ~。あたしたちと一緒ね!···それにしても白銀竜でリオって言ったら先代整調者と一緒ね。···まさかご本人って事は、···ないよね?」
「あー、まーお前たちならバラしても大丈夫だろうなー。内緒にしておけよー、本人だぞー」
「···本物の英雄に出会ってしまった。どうしよう?サインもらった方がいいかな、ナナ?」
「···そんなものもらってどうするっていうのよ?家なんてないんだから飾ることもできないわよ?でも、まさかこんなところで英雄に出会うなんて思わなかったわ!これなら討伐はチョロいわね!」
「勝手に妄想してるところ悪いけどなー、もう任は降りてるから大した力はもう持ってないぞー。多少報酬として魔力はそこそこ多めにはあるけどなー」
「あら、そうなのね?でも、普通の人よりは強いなら安心だわ。あたしたちだけでは海の魔獣討伐なんて厳しそうだったからね~」
「あんまりアテにはするなよー。こっちも海の魔獣なんて相手したことないんだからなー」
···冒頭から凄腕冒険者としてやってきた二人と自己紹介しながら話しているけど、ここは宿の特別貴賓室の中なんだ。
どうしてこうなったか?って言うと、結局ボクたちも討伐作戦に参加させられることになったんだよ。
ボクたちも依頼が書かれた紙を見たら、『ピムエム皇国 情報部 辺境情報第一部 特別部長 パス』ってサインがしてあった!やっぱりパスさんが仕込んでたんだよ!
っていうか、かなり上席の人だったんだね。パスさんって。結構ドジっ子のようなかんじだったんだけどなぁ~。それもカモフラージュなのかな?
依頼内容は『現地の白銀竜を連れた凄腕協力者2名と共同で魔獣を討伐されたし。方法は町や船舶に被害がなければ問わない。なお、協力者の個人情報は口外を厳しく禁ずる』とあって、一人あたり300万ジールという破格の報酬内容が書かれていたよ。
それだけ物流が停滞することを避けたいんだね。この世界では元の世界と違って物流に携わる人が桁違いに多い。それは一人当たりが運べる荷物の量が圧倒的に少ないからだ。
元の世界だとRORO船なんかは40フィートの海上コンテナを万単位で積んで少ない人数で運んでいたからね。こっちの世界だと食料の保存技術も拙いから、それも考えたら当然かな?
あとはパスさんがボクたちの情報を漏らすことを禁止すると警告もしてくれていたんだ。だからリオは元整調者だってバラしたんだよ。
だから、ボク自身も情報をバラす事にしたんだ。
···それに、この二人はパスさんが警告しなくても口が堅いような気がするんだよね。
···なぜだろう?雰囲気からして信用できるんだよね。
「ボクの武器はこの魔力で作る剣と魔法をアシストしてくれるスマホです。どうも神器らしいんですよね」
「···初めて見た武器だね。それにそっちの板っぽいのも見たことはないね」
「そりゃ『神器』なんて名前が付いてるものですもの。私たちでも扱うことはできないでしょうけどね」
「そうですね。ちなみにこんな変わった魔法が使えるんですよ。···ポチっと。パスさ~ん!見えますか~?」
「···なにこれ?目の前に景色が違う板が出てきた?」
「はぁ~、変わった創作魔法ね。面白いわね~」
『はいは~い!···ってアキくん!?こんな機能もあるの!?お姉さんビックリなんだけど!?』
「あれ?言ってませんでしたっけ?通話やチャット以外にもこうやって顔を合わせて会議もできるんですよ?」
『···もう何があっても驚かないって思ってたけど、これもとんでもないわね···。これが誰でも使えたらそれはそれで脅威だわ』
「大丈夫ですよ。ボクしか使えませんからね。そうそう、パスさん?ボクたちご指名で依頼出すのやめてくれません?とっても困るんですけど?」
『···あ~、もう二人と合流できたのね?ゴメンね!今回の件は皇国としてはすぐにでも解決したい案件だったからね。悪いけど協力してほしいんだよ~。今後の旅の支援になれるよう破格の報酬は出すから、助けてほしいのよ~!』
「はぁ~。もう、わかりましたよ。ボクたちでどこまでやれるかわかりませんけど、やれるだけ事はしますよ。その代わり、皇国に着いたら観光案内とかして下さいよ?」
『ありがと~!その件は大丈夫よ。もう休暇申請出してるしね!思いっきり皇国で翼を伸ばしてもらうから楽しみにしといてね!』
「そうしますね。じゃあ、次は討伐したら連絡しますね」
『そうしてもらえると嬉しいなぁ。いい情報を期待してるからね!
そうそう、ハルさんとナナさん。私が今回の依頼主であるパスと申します。もしかしたらもうこの二人の素性や戦闘方法について聞いたかもしれないけど、この二人の情報は皇国の『最重要国家機密』に該当しています。もし情報を漏らした場合はあなたたちに対する討伐命令が理由の如何なく下されますので、くれぐれも扱いに気を付けて下さい』
「···はい。私も里の出身者です。漏らすことは決してありません」
「あたしも。こんな情報、おいそれと口にできないわね」
『ふふ、ご協力感謝しますね。この二人は信頼できるし、戦力としては素晴らしいわ。4人協力して魔獣討伐を達成される事を期待します。
···じゃあ、アキくん!リオくん!気を付けて討伐してね~』
「リオ、ボクたちの情報って皇国じゃ最重要国家機密になってるなんてビックリだね」
「ホントかどうかわからないけど、まーあの力は知られない方がいいもんなー」
「そうだね。パスさんはボクたちの情報は皇国に伝えないって言ってたけど、もしかしたら何かしら情報工作してるのかもね」
「そのあたりは皇国に着いたら問い詰めたらいいと思うぞー。それより、討伐作戦の詳細な打ち合わせをするぞー」
「そうだね。やるからにはノーダメージクリアは目指さないとね!ハルさん、ナナさん。よろしくお願いしますね」
「···こちらこそ。まずは戦力についてお互いに共有してから戦術を考えよう」
という事で、ボクたちは魔獣討伐作戦を立案すべく、話し合うことにしたんだ。
今回は自己紹介で終わってしまいました···。
作戦立案は次回に持ち越しです。
そして今回の依頼主は予想通りパスさんでした。
なかなかすごい肩書を持ってたんですね~。このほかにもまだまだ隠してそうです。
さて次回予告ですが、しっかりと自己紹介したのですっかり気心知れた仲になってしまった4人。海の魔獣に対して効果的な作戦は立案されるのでしょうか?
次回もお楽しみに~!




