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異世界指揮官生活。  作者: 谷澤御嶽
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第三二話 楽しいお買い物、です!?

「あ、この服とか、どうですか? 私に似合いますかね? あー、これもありかも。ご主人様、どうですか?」

「いや、まあ、どっちかと言えばこっちの方が良いかもな」

「ですよね! ……いやでもこれも捨て難いな……」


 長かった冬もようやく終わりが見え、春らしい陽気となってきた。いや、まだかなり寒いのだが、少なくとも太陽の陽射しだけは春らしい気がするのであった。


 そんな気持ちの良い青空が広がる今日、俺はミュリア――自宅にいたメイド服姿の綺麗なお姉さんである――とともに、王都の中心部にあるショッピングエリアというか、繁華街を歩いていた。例えるならばちょうど、銀座みたいな街である。あまり行ったことが無いから自信はないが、多分、こんな感じなんだと思う。多分。きっと。……そして俺の手には、既にどこかのデパートやら高級洋品店で購入した大量の服の詰まった袋が何袋も握られていた。


(どうして俺はこんなことをしているのだろうか……?)


 と言っても、理由は分かっている。言うまでもない。自明のことである。そう、あれは今朝のことだった。




 今朝の俺は、久しぶりの休日を自室のふかふかベッドで満喫していた。まだ肌寒いこの時期に、もふもふしたお布団のなかで過ごす時間は至高であった。俺はその布団の中で小説を読んでいた。


 ところで、休日と言っても、スマホもパソコンも、テレビすらもないこの世界では、これをなかなかに持て余すことは言うまでもない。実際以前の休日はそうであった。言ってしまうと、死ぬほど暇だった。昔の人がこの退屈をどうやってやり過ごしていたのか是非とも知りたいところだった。何か趣味でもあれば別なのだが、少なくともこの世界では特に趣味がない俺にとって、控えめに言って退屈極まりない時間だった。これならまだ働いた方が良いとか思ってしまうほどだった。


 だが、最近の俺は違った。というのも、先日俺のだだっ広い書庫を漁っていると、死ぬほど面白い小説をたくさん発見することに成功したのだ。それ以来俺の休日はこれをひたすら読む時間となっていたのだ。今朝も、一瞬だけ起きて軽い朝食を食べた後は、その小説を延々と読んでいた。もう、幸せ空間だった。


 そんなこんなで時折、……自分で言うのもなんだが、若干気味悪い笑いを発しながらページを繰っていると、突然本を持つ手の甲の辺りに、生温かい風のようなものが当たった気がした。軽い気持ちで本から目線を外し、風の発生源を探ると。


 俺の顔の前には、とても綺麗な女性があり、その瞳は俺の顔をじっと見つめていた。


 俺は本を落っことし、ベッドから跳ね起きた。


「な、ななななな、なんだ!? どどどどどうかしたのか!?」


 多少声が裏返りつつ、そう問うと、ミュリアは中腰の姿勢から直立し、満面の笑みを浮かべて言った。


「買い物に、行きましょう!」

「ふぁい? 買い物? どうして?」

「ご主人様の背広とかを買いに行くんですよ。もうそろそろでしょう?」

「背広? もうそろそろって……?」

「もう、忘れたんですか? 毎年恒例の連合王国軍春季パーティーに着ていくやつですよ。今のうちに用意しておかないと、良いものは売り切れてしまいますよ? さあ、早く支度をして、出発しましょう!」


 面倒だったが、駄々をこねるというのも……、ということで、俺は渋々出かけることにしたのだった。




「おお! これも素敵な気がしますね!」

「なあ、今ふと思ったんだが、今まで買ってきたのって全部お前……あなた? ミュリアさん? のではないか?」

「えと、ミュリアで大丈夫ですよ? というか……? あれ……? 確かに……」


 ミュリアは、小首を傾げ、指を頭に当て、軽く考え込んだ。俺は手に食い込む紙袋の持ち手に軽く苛立ちつつ、彼女に問いかけた。


「こんなに買ってどうするんだ?」

「え? ああ、私もパーティーに参加させていただくので、それ用のドレスを買ったんです。まあ、それだけではないですけど。……もちろん、自腹ですよ?」

「あ、はい……。というか、ミュリアも参加するのか? あれ、軍に勤めたっけ?」

「まさか。私はご主人様の付き添いですよ。何でも、招待客一人につき二人位まで付き添い可能らしいので。……えと、許可してくださいましたよね? 確か、二週間ほど前、夕食を食べているときに……?」


 二週間前……のことなんて覚えているわけがないが、言われてみればそんなことを言われた気が全くしないということも無いような、あるような、無いような……。


「あ、あー、そうだった……かな? うん、そうだな。いや忘れていたよ。……しかし、軍のパーティーなんてそうそう面白いものでもないと思うのだが」

「うーん、面白くはないかもですが、なんでも、北で獲れた最高級の魚介を使った魚料理やら、ラージン共和国から取り寄せた最高級野菜をふんだんに用いた料理やらが沢山出るらしいんですよ。これは行くしかありませんよね?」

「……そうだな」


 もはや何も言うまい。


 というか、普通に行きたくないな。パーティーと言ったって、要は軍のお偉いさん方とクソつまらん話を延々とする会なのだろう。そんなんの何がいったい面白いんだろうか? 参加者だって、おっさんとおじいさんしかいないに決まっているし。はあ、お家に引きこもっていたい。私は貝になりたい。……まあ、行かないのもまた色々面倒なんだろうから、行くんだろうけどな。当日風邪でも引かねえかな。


 ……そんなこんなで、何とか俺の背広を購入し、ミュリアのウインドウショッピングに付き合っていると、いつの間にか昼も少し過ぎた時間になっていた。


 俺のまあまあ高かった背広と、なんやかんやでミュリアにいつの間にか買わされたドレスと宝石を合わせて、確か七一五ジルンほどの出費か。軍にいると、給料貰ってもそうそう使い途なんてないから、これがどのくらいの価値なのかあまりピンとこないのだが、俺の半年くらいにわたるこの世界の生活の感覚で言えば、多分六十万円くらいになる気がする。


 ……たっか。


 まあ、どうせ使い途なんてないし、良いんだけどね。それより、ミュリアは確かそれよりたくさん買ってた気がするけど、こいつそんなに貯め込んでいたのか? よく分からんな。


「こんなに買って大丈夫なのか? 多分八百ジルン以上買ってた気がするのだが。」

「あれ、ウソ……。……。いやー、それにしても良い天気ですね!」

「あ、うん、そうね……」


 謎の話題を繰り出しながらも、冷や汗をだらだら流して引き攣った笑みを浮かべるミュリアさん。貯金全部下ろしたの忘れてた、生活費吹き飛んだ、だとか何とかブツブツ呟いている。恐らく、手持ちの金はあればあるだけ使ってしまうタイプの人間なのだろう。どこの世界にもいるもんなんだな。


 とはいえ、知り合いがそれで破産するというのも、どうも外聞が悪いな。


「その、もしあれだったら多少は貸せるから……」

「うう、ありがとうございます……。やらかしました……。油断してしまいました」

「まあ、なんていうの、そういうこともあるよね?」

「これから気を付けます……」


 尋常じゃなくテンションが下がってるよ。富士山から田沢湖だよ。何ならエベレストからマリアナ海溝だよ。


 ……。こほん。


 閑話休題。


 それはさておき。


 もう昼をがっつり過ぎているわけだし、ここらで昼食にするのも良いかもしれない。昼時はとうに過ぎているから、混んでもないだろう。ということで、俺たちは適当なレストランか何かを探すことにした。


「あ、その、あんまり高くないところでですね、お願いしたいかな、なんて……」

「いや、その……。今日のところは俺の奢りで大丈夫だから、好きなところで良いんだぞ?」

「マジでございますか、ご主人様?」

「……いやあの、そんな高くないところでね?」


 だなんてわいのわいのしていると、突然前から歩いてきた女性二人組に声を掛けられた。話に夢中でまったく意識していなかったから、誰かと思ってじっくりと見てみると、そこには私服姿の少尉と中尉がいた。


「おう? こんなところで会うとは奇遇だな。二人で買い物か?」

「はあ、そんなところですねぇ。最近この辺りにすごく美味しいらしいケーキ屋さんが出来たらしいんですよ。それを探して歩き回ってる感じです」


 それは、……なんとまあ微笑ましいな。これぞ休日の正しい使い方ってものだろう。それにしても、少尉と中尉は休日を共に過ごすほど仲が良かったのだろうか? あまり二人で一緒にいるという光景を想像できないのだが。あくまで仕事上の付き合い的な感じだとばかり思っていた。


「ああ、別に二人で約束して、てわけではないですよ? たまたま同じ店を探していたらばったり、みたいな出会いでしたね」


 聞いてもいないのに教えてくれた。まあ、そりゃあそうか。……こう言うとあれだが、この二人ってどうもそりが合わなそうだしな。


「そうだったのか。ところで、そのケーキが美味しい店っていうのは見つかったのか?」

「それがですねえ、聞いてくださいよ! 私たちd」

「あ、あの!」


 突然中尉が割り込んできた。中尉は、何かこう、すごく好奇心旺盛なような、それでいて困惑したような、良く分からない表情で問いかけてきた。


「……どうしたんだ中尉? 何かあったのか?」

「いえ、その、そちらの、女性はどちら様でございましょうか?」


 やたらとオドオドしつつ、そう言った。


「ああ、彼女はうt」

「妻のミュリアと申します。主人がお世話になっております」


 ……うん?


「妻!? よ、よよよろしくお願いいたしますでございます?」

「いえいえ、こちらこそお願いいたします」


 えーと、どういうことだろうか。確か俺はずっと独身だったはずなのだが。……もしかしたら記録には載っていないだけで結婚してたとか? いやもしかしたら内縁的なあれなのか? ううん?


「え、あ、その、えーっと……」

「……中将って、ご結婚されていましたっけ?」


 じとっとした眼で少尉がこちらを見つめている。知らん、こっちが聞きたいくらいだよ、まったく。


「……うふふ、冗談ですよ。私はブライフ中将のお宅で家政婦のようなことをしております。改めまして、ミュリア=ベルボンと申します。よろしく」

「……ですよね。よろしくお願いします。ああ、私はグローヴィア=クレールと言います。一応少尉だったりします」

「え、えーっと、その、あの、わ、私はファーナリアと言います。ファーナリア=ライデンシャフトです。中尉であります」

「はい、お二人ともよろしくお願いします」


 気づいたら自己紹介が終わっていた。というか、こいつはやにわに何を言い出すんだ、まったく。


「ああ、その、もしよろしければなのですが、ここから少し行ったところに私の実家があるので、そこで昼食でもいかがでしょうか? グローヴィアも来ますし、ミュリア、さんも良かったら……」


 まだ頭の整理がついていない中尉が、若干棒読みでそう言った。俺はミュリアに目配せをすると、眼を輝かせて頷いていた。


「そう、だな。まだ昼は食べていないし、迷惑でなければお邪魔しようかな」

「わあ、楽しみです。何が出るん……、コホン。お誘いありがとうございます」

「その、是非ともお越しください。こちらです」


 そう言って歩き始める中尉に、俺たちはついて行った。


「ところで、ケーキ屋探索はもう良いのか?」


 傍らで歩いていた少尉に、俺はそう話しかけた。


「え? ああ、それなんですけど、もうあれなんです、聞いてくださいよ。私たち、この街中を随分と歩き回って探してたんですよ」

「ほう」

「それでですね、ようやく、ようやくついさっき店を見つけたんです。ここからちょっと遠くですけど、とにかく見つけられたんです」

「おお、良かったじゃないか。それでどうだったんだ?」


 俺の言葉で、若干嬉しそうな表情を浮かべていた少尉が、突然キレ気味になった。


「いやですね、見つけられたところまでは良かったんですけど、まあ、酷かったんですよ。店の前がもうすっごい大行列で。店の前の歩道が人で溢れてたんですよ。もう群がってたと言ったほうが良かったかもしれませんね。とにかく、酷い混雑で。とてもあの中に並べたもんじゃないなと思って、結局そのまま素通りですよ。だから私たち、結局何も食べてないんですよね。もうやんなっちゃうなぁ」

「あー、まあ、それは残念だったな。そんなに混んでたのか?」

「それはもう。ぱっと見で二、三百人はいたんじゃないですか? 店も裁ききれてなくて、行列がもう滅茶苦茶に続いてましたね」

「……ご愁傷さまです。それはもう無理だわ。止めて正解だったな」

「まあそうかもしれません。……あとあれですよ、客がみんな女なんですよ。みーんなグループで来てる女ばっかりで、ギャーギャーワーワー五月蠅かったですねー」

「まあ、ケーキ屋さんだしな。あんま男は行かないだろうな」

「にしてもですよ。それにその女たちってのが、まあ、何も考えてなさそうな? 金も時間もあるような連中ばっかりなんですよね。今の流行を逃さないぞ的な? 流行の最先端に乗ってる私最高的な? そんな連中ばっかで。あの中には入れないなと思いましたよ。人種が違うんですかね、ああいうのは。まったくどういう育ち方したらああなるんでしょうね」

「いや、まあ、そうね……。最近よく見るよな。まあ、幸せそうでいいんじゃないかな……」


 ……少尉ってこんな感じだったっけ……? 何かすごい愚痴ってくる……。少尉の顔が微妙に怖い……。いや確かに、俺のいた世界でインスタだのなんだのやってる集団は何かこう違う感じがあるけれども。この世界でスマホがあったら絶対やってるんだろうけれども。


「まあいいんですけどね? それだけ平和ってことでしょうし。でも、もうなんかやんなっちゃいますよ。何でしょう、この仄暗い気持ちは?」


 知らねえよ。自分で考えろ。


「あはは……」


 なんて会話をしていると、中尉が着きました、と言って立ち止まった。ちなみに、中尉とミュリアは前で楽しそうな女子トークを繰り広げていた。最初はギクシャクしていたものの、すぐに意気投合したらしい。俺もそっちに入りたかった。


「ここが中尉の家……うそ、広っ!」

「おお! これは、凄いです!」

「えへへ……。さあ、入りましょう」


 参謀本部を、そして王国宮殿を見てきた俺にしてみれば、そこまで驚くほどのものでも無かったのだが、一般的に見ればとんでもなく広い豪邸だった。俺の家もなかなかの豪邸だとは思うが、その少なくとも三倍……いや五、六倍は広いように思えた。


 綺麗に整えられた植栽が左右に広がる、石畳でできた真っすぐな道を進むと、デカい、如何にも高級木材で造られた玄関に辿り着いた。中尉が、扉に付いていた大きいノブを叩くと、扉はゆっくりと開いた。


「お帰りなさいませ、お嬢様!」

「ええ、今帰りました。ああ、こちらは私の客人です。ダイニングへ案内して差し上げて?」

「はい。伺っております。既に準備もできております。さあ、皆さま、どうぞこちらへ」


 如何にもな風貌の執事と、何人かのメイドさんが俺たちを出迎えてくれた。執事の指示で、メイドさんの一人が俺たちを案内する。中尉は何か用事があるらしく、どこかへ行った。


 長い廊下をひたすら歩く。宮殿ほどではないにしても、ここにも多くの絵画や置物が置いてあった。何となく、こちらの方が良い趣味なような気がする。少なくとも、金ぴかぴんではない、こう、シックと言うか、落ち着いた風合いを醸し出していた。


「いやぁ、広いお家ですねぇ!」


 少尉が歓声を上げた。さっきまでのやさぐれ少尉はどこへやら、年相応の反応で俺は少し安心した。ミュリアもまたきょろきょろとしながら言う。


「そうですね! ご主人様のお家よりもっと広いですよ!」

「……。ああ、大したもんだ。中尉はなかなかお金持ちだったんだな」

「うっすら知ってはいましたけど、改めてみるとお嬢様だったんですねぇ。あとメイドさん可愛い」

「あはは……。あ、こちらがダイニングとなっております。すぐにお嬢様とご主人様がいらっしゃると思います。少しお待ちください」

「はい、ありがとうございます」


 ダイニングには、お金持ち感あふれる真っ白なテーブルクロスの敷かれた長テーブルに、高級そうな料理が所狭しと並んでいた。部屋の隅には、コックらしき壮年のおっさんが恭しく控えていた。


「おお、美味しそう!」

「ミュリアさん、涎垂れてますよ? でも、美味しそうですぅ」

「クレールちゃんも垂れてるわよ? まあ、仕方ないわね。こんなに美味しそうな香りだし」

「お前ら、みっともないぞ……? さっさと拭いとけよ?」


 とか何とか言っていると、別の入り口から、白髪交じりながらスタイルが無駄に良い紳士が入ってきた。後ろには先ほどの私服とはまた違う、高級感あふれるドレスに身を包んだ中尉がいた。


「皆さま、ようこそ我が家にお越しくださいました。私がこの家の主、そしてファーナリアの父、ケルヴィン=ライデンシャフトです。どうか、よろしくお願いします」


 スタイリッシュにお辞儀をすると、俺たちに着席を促し、自らも洗練された動きで椅子に座った。


「ええと、貴方がザーグハルト=ブライフ少将……いえ、中将でございますかな? 娘がいつもお世話になっていると聞いています。私からも、お礼を申し上げたい」

「いえ、こちらこそ娘さんの活躍にはいつも驚かされております。彼女はいまや、我々の師団にとって無くてはならない人材ですよ」

「おお、それはそれは。それにしても……」


 ファーナリア父はそれから延々といろんな話題を振ってきた。俺たちは相槌を打ったり、時折会話に乗ったりしながら、食事を美味しくいただいた。


 それにしても、話題の豊富なおじさんだな。次から次へと新しい話題が出てくる。そしてどれもなかなか面白いし興味深い。まあ、この世界での人生歴約半年の俺には分からないことしかないが。……やっぱり金持ちっていうのは教養も違うんだろうな。


 そして、食事は非常に美味しい。美味である。デリシャスなのである。コックさんありがとう、と言いたい。恥ずかしいから言わないけどな。


 そんなことを考えながら、切り分けた分厚いステーキを頬張っていると、ケルヴィン氏はふと思い出したように、俺に話しかけてきた。


「ああ、ところでブライフ中将。今回はよくぞ御決断頂きました。我々としましても、貴方の国民のためを思った判断には、随分と勇気を頂きました。我々レグリア民族商工会、そしてレグリア救国委員会を代表して、深くお礼申し上げたい。本当に、ありがとう!」

「え? あ、はい……?」


 御決断? 俺は何か決断したんだっけか? また俺何かやっちゃいましたか? ううん? ていうか、レグリア……、てなんだ?


「? どうかなされましたか?」

「いえその、……恐縮ですが、決断とは、いったい何のことでしょうか? あいにく、身に覚えがないのですが……」

「はて? ……ファーナリア、中将閣下に説明申し上げたのではないのか?」

「……あ」


 中尉が一時停止した。どうやら、何か俺に言うべきことがあったらしい。きっと、さっきの騒動で全て吹っ飛んでしまったのだろう。


「あー、忘れたのか。……まあ、良い、良い。いや失敬致しました。私はてっきり御決断の上でいらっしゃったのかと。まあ、決断はいつなさって頂いても良いですしな。では、私から説明申し上げましょう」

「はあ。お願いします」

「回りくどい話は抜きにしましょう。ズバリ言います。貴方には、今度行われる予定の下院総選挙に出馬していただきたい」

「…………選挙!?」


 この親父さんは何を言っているんだろうか? もうボケてしまわれたのだろうか? ……なんて感じではないな。どうやら奴さんは本気らしい。どうやら俺は、更に面倒くさいイベントに巻き込まれてしまうようだ。


(……なあ俺よ。これもまた、お前の望むことなのか?)


 そんな良く分からないことを思い始めた俺だった。


どんどん更新が不定期となる今日この頃、皆さんはどうお過ごしでしょうか? 私は元気です。

さて、今話から新展開となったわけです。まだどうなるかは分かりませんが、よろしければお付き合いください。




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