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ももまん大好き桃太郎

昔々、あるところにお爺さんとお婆さんが居ました。


「じいさん、また村長さんたちに負けたのかい?」

「うるさいわいっ、仕方ないじゃろう?あやつらむっきむきの筋肉バカなんじゃもん。非力なわしなんぞ腕相撲でも適わんわい」


お爺さんは刈ってきた柴や竹を編みながら、厨(台所)にいる御婆さんに言い返します。

御婆さんは何かをコネては蒸し、蒸しては捏ねるという作業をしながら、


「それで仕事を増やされちゃあたしが適わないよ。そういってあんたが持ってきた惣(自治会)の会計、結局あたしがやったんですからね。もっとしっかりしてくださいな。これじゃあ何のために嫁いできたのかわかりゃあしないよ。」

「ばあさん、そりゃちと言い過ぎじゃないかね? わしだって傷つくときは傷つくぞ?」


爺さんは悲しくなって笠を編みます。編んでいる笠は心なしか爺さんの心の中のようにしょぼくれて目が大きくなっていました。これでは売り物にもなりません。


「黙れこの種無しがっ。そんな気概無しのへたれだからこの年になってまであたしたちに子供が出来ないんだよ!」

「婆さんっ!」


爺さんは肩を怒らせて婆さんを睨みつけます。お婆さんは先程から作っていた可愛らしい桃の形をしたピンク色のまんじゅうを、おじいさんが作った竹の籠に盛り付けて囲炉裏端に運び、粋に笑います。


「ふっ、冗談さ。そんなに怒らないでおくれよ。あたしには爺さん、あんたがいりゃそれでいいんだから。子供なんていらないよ。いいからさっさとお食べ。あたしはあんたが美味しそうにあたしの作った“ももまん”を食べている姿が好きなんだから。まあ爺さんの事なら大概何でも好きなんだけどね。」

「婆さん……」


お爺さんとお婆さんは心底美味しそうに、この村の名物である桃まんを一緒に食べました。



お爺さんは村での立場が弱く仕事は柴刈りと笠編みなどをしています。お婆さんは“桃まん”という作りの達人。非力でちょっとお茶目なお婆ちゃんです。


お婆さんが川に洗濯に行った日の事――。


川上からドンブラコ、ドンブラコッコ、よいせっせ、桃の形をした小舟が流れてきました。


お婆さんは不思議に思い、川岸から中を覗き込みます。


「おやまあ、でかい桃だよ。邪魔だね誰が流したのやら、はあ…仕事仕事」


手を止めず、じっと見ていると船の中には小さな赤子が…


「は?……赤子? 赤子、赤子ね。赤子ぉぉーーーっ!? うっ、げほごほっ、こ、腰が…っ」


捨て子です。


「大変じゃ!腰なんぞには構っておれんっ! ふんぬらばっ、(ゴキっ)…あたたたたたたっ、引きあげるぞジジイっ…あ、いないのじゃったわ、あ、待てっ、待つのじゃ桃―――っ!」


お婆さんは大慌てで流れてきた小船――大きさは子供のプールが出来るタライぐらい――を川岸に寄せます。


「…ふぅ、ふぅ、…こんなに走ったのは何年ぶりじゃろうか。あいたたたっ、赤子っ、無事かっ!?」


お婆さんは船の中の赤ん坊を確認するとかなり弱っている様子。急いで船ごと連れて帰ります。


家に帰るとお爺さんは笠を編んでいる最中のようでした。


「お爺さんっ!!」

「な、なんじゃ?何事じゃ?」


お爺さんは抱かれた赤ん坊を見て、

「ばあさんや、その赤ん坊はどうしたんじゃ?」

「河で拾ったんじゃ。弱ってる。丁度いいから家で育てよう」


お婆さんは赤子を船から抱き上げて、看病しようとしながら答えます。

お爺さんは肩を震わせ、顔を真っ青にして、


「バカなことをいうんじゃないっ。ウチはお前とわし二人でやっとの生活なんじゃぞ!!」

「だからって死にかけの赤ん坊をそのまま見捨てろって言うのかい?なんとまあ…あたしゃあんたのことを見損なったよ、この…ろくでなしのへたれ!」

「なっ…!?」

「おじいさん、あんたは生まれてすぐ捨てられたこの子が可哀想だとは思わぬかえ?」

「そりゃ思うが…それとこれとは…っ」

「おじいさん、この子のつぶらな瞳をみとくれよ。こんなに輝いて…あたしゃもう…」

「ぐぬぬぬぬぬぬっ…!」


大喧嘩の末、口達者なお婆さんが勝利。

赤ん坊は“桃太郎”と名付けられ、お爺さんとお婆さんに育てらえることになりました。


それから約数年、


「おばあちゃん、このおまんじゅうなんて言うの?」

「それはね、“桃まん”っていうんだよ。大陸から伝わったこの村の名物菓子さ」

「へぇ~、そうなんだ~! ボクね、この桃まんだ~いすきっ!おばあちゃんが作った桃まんが一番好き!」

「そうかいそうかい、あたしのが一番好きかい。じゃあたーんとお食べ」


お婆さんは桃太郎に自慢の桃まんじゅうを愛情込めてたくさん作ってあげます。もう可愛いくて可愛いくて仕方がないのでした。


「うんっ!おじいちゃんのブコツな笠や竹細工(?)も好きっ!だーい好き!」

「……桃太郎…」


おじいさんは感動して桃太郎をひしと抱きしめます。


「おじいさん、痛い痛い」

「おお、すまんすまん。ばあさんや、わしらはいい子を持ったのう…。」

「当然じゃ。なんせあたしたちが育てた子じゃからの。」


桃太郎はお婆さん特性の桃まんを食べて、すくすくと成長。

“桃まん大好き桃太郎”というあだ名が付けられるくらいももまんが大好きな、食い意地の張った、可愛らしく強い少年に育ちました。




――或る日の事、鬼たちがお宝を手にし、人間に腕試しを申し込んできました。


鬼:「あの~、すいません。お宝が手に入ったのでそれをかけて私どもと勝負しませんか?」

村人:「なに?お宝だと? 帰ぇんな帰ぇんなっ。俺たち人間がお前ら鬼に勝てる訳ねぇだろが。」


ですが並の人間が鬼にかなうわけがありません。


鬼:「あの~…そこをなんとか、お願いします。ウチも上からの指示で困ってるんですよ。ね? 一回だけ、一回だけお願いします~」

村人:「しょうがねぇな~……一回だけだぞ?」


村人たちは協議の末、桃太郎に鬼退治を押し付けようということになりました。

それに反対したお爺さんはすぐに黙らされてしまい、役に立ちません。

村長:「オラァァァ!! 御御酢戸罵素(ごおすとばす)()――――!!!(※ただの回し蹴りからのラリアット)」

おじいさん:「なんのこれしき……ぐべらっ! げふっ、ごふっ、ひぃえええええーーーっ!!!!」



村人よ、一言言おう。お前らはアホか。



桃太郎はしかたなく、仕方がなく、鬼が島に鬼退治に行くことにしました。


「……家にいたい。家でお爺さんお婆さんと一緒にモモマンを食べていたい。行きたくない…」


桃太郎は文句をたれながらも、渋々家から出て、村を旅立ちます。


しばらくすると、道に猫又と人(?)が行き倒れていました。


「・・・ああ、きび団子が食べたい。このさい、桃団子でも桃まんでもいいや。」

「お腹、・・・・すいた。」


猫が呟き、人?の男の子の腹が鳴り響きました。


桃太郎は二人に近寄り、傍ら(かたわら)にしゃがみます。

懐を探り、きび団子ならぬ桃まんを二人の前に差し出します。


「「・・・・え?」」


「この桃まんをあげるから、ボクの代わりに鬼退治に行ってきて!!」


――こうして彼らの鬼退治が幕を開けたのでした。


きび団子→桃団子に修正。

5/2 改稿。改行。文構成など。

10/12 改稿。

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