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『元SSS級暗殺者の道具屋生活。依頼ついでに冒険者をしていたら、なぜか伝説になっていました』  作者: ねむい人
第1章『辺境の道具屋編』

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第一話 暗殺者、道具屋になる

新作です。


今回は「元最強暗殺者が道具屋を営みながら、たまに冒険者もやる」お話になります。


楽しんでいただけたら嬉しいです。

 辺境都市グランベル。


 王都から馬車で七日。


 特産品も名所もない、どこにでもある田舎町だ。


 そんな町の外れに、一軒の道具屋がある。


 店の名は――


 【夜明けの道具店】。


「いらっしゃい」


 店主のレオンは、カウンター越しに顔を上げた。


 入ってきたのは若い冒険者だった。


 革鎧も剣もボロボロ。


 見るからに駆け出しだ。


「すみません! 回復薬ありますか!」


「ああ」


 レオンは棚から瓶を取り出した。


「銀貨三枚」


「助かります!」


 冒険者は代金を払い、慌てて店を出ていく。


 その背中を見送りながらレオンはため息をついた。


「忙しいな」


 実際は忙しくない。


 今日の客は三人目だった。


 だが本人は満足していた。


 なにしろ昔に比べれば天国だからだ。


 血も見ない。


 人も殺さない。


 追われもしない。


 平和そのもの。


「こういうのでいいんだよな」


 レオンは椅子にもたれた。


 元々彼は――


 王国最強の暗殺組織《夜鴉》。


 その頂点だった。


 成功率百パーセント。


 失敗ゼロ。


 正体不明。


 裏社会では伝説扱いされていた男である。


 だが。


『お前、本当に辞めるのか』


『辞めます』


『惜しまないのか』


『惜しみません』


『王国中がお前を探すぞ』


『探させておけばいいです』


 そう言って逃げた。


 結果。


 辺境で道具屋を始めた。


 人生とは分からないものである。


 そんな時だった。


 ドンッ!!


 店の扉が勢いよく開く。


「レオンさん!!」


 飛び込んできたのはギルド受付嬢のミリアだった。


「どうした」


「大変です!!」


「うん」


「大変なんです!!」


「だからどうした」


「森でゴブリンの大群が!!」


「へぇ」


「へぇじゃないです!!」


 ミリアは半泣きだった。


「新人パーティが取り残されてるんです!」


「救助隊は?」


「間に合いません!」


「そうか」


「そうかじゃありません!!」


 レオンは少し考えた。


 面倒だった。


 非常に面倒だった。


 だが。


 見捨てるのも後味が悪い。


「場所は?」


「行ってくれるんですか!?」


「ついでだ」


「ついで?」


「配達がある」


 店の奥から荷物を持ってくる。


 薬草十束。


 注文品だった。


 ミリアは固まった。


「配達のついでに救助へ?」


「方向同じだろ」


「いやいやいや!」


 普通は逆である。


 しかしレオンは気にしなかった。


 外へ出る。


 森へ向かう。


 歩く。


 五分。


 十分。


 そして。


「ぎゃああああ!!」


 悲鳴が聞こえた。


 若い冒険者たちが逃げ回っている。


 その後ろには。


 百体近いゴブリン。


「終わったぁぁ!!」


「死ぬぅぅ!!」


「誰か助けてぇぇ!!」


 絶望だった。


 駆け出し冒険者に対処できる数ではない。


 だが。


 レオンは立ち止まった。


「邪魔だな」


 ボソッ。


 次の瞬間。


 姿が消えた。


 冒険者達は目を疑った。


「え?」


 一瞬だった。


 ゴブリンの群れの中を黒い影が走る。


 ザン。


 ザザン。


 ザザザザザザン。


 音だけが響く。


 そして。


 ドサドサドサドサッ!!


 百体近いゴブリンが同時に倒れた。


「…………」


「…………」


「…………は?」


 静寂。


 誰も理解できない。


 レオンだけが平然としていた。


「終わったな」


 荷物を持ち直す。


 歩き出す。


 冒険者達が叫んだ。


「ま、待ってください!!」


「なんだ」


「今何したんですか!?」


「駆除」


「駆除!?」


「ゴブリンだろ」


 当然のように言う。


 新人達は震えた。


 百体いた。


 百体である。


 普通なら騎士団案件だ。


「えっと……お名前は……」


「レオン」


「レオンさん……」


 彼らは知らない。


 目の前にいる男が。


 かつて王国最強と恐れられた存在だということを。


「じゃあな」


 レオンは手を振った。


 そして去っていく。


 荷物を抱えて。


 本当に配達へ向かった。


 残された冒険者達は呆然としていた。


 その日。


 辺境の冒険者ギルドで。


 『配達のついでにゴブリン百体を消した謎の道具屋』


 の噂が広まり始める。


 本人だけが知らないまま――。


【第二話 ギルドマスター、頭を抱える】へ続く。


ここまで読んでいただきありがとうございます!


面白かったらブックマークや評価で応援していただけると励みになります。


次回はギルドが大騒ぎします。お楽しみに!

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