首邑アーダン
メメさんは、ジラセに歩きながら会話を続ける。
何故、首領艇に入ったのかという題材に入ったときにジラセは唾を吐きかけるかのような勢いで彼女に対して畳みかけた。
「僕は近い年月の頃に冒険家になります。
そして、レ=メゾン国の国力を高めてみせます、その為には先ずは権力者との繋がりを持つことが大事だと思いました」
彼は父であるザッカスを非難せずに心を籠めた返答ができる言葉になったかどうか、慎重に答えた。
その心配事の雰囲気は、額から汗が流れ出そうなぐらいであった。
メメさんは微笑した。
その笑顔は心の底から嬉しいといった事を感じさせた。
そして、「そういう事なら、アーダン村で絶対外せない場所があるわ!
そこは昔、冒険家が制度として始動したときに最初に開かれた支部があるの。それとね、此処の土地の神の御使い様が存在しているのよ! あとは、レ=メゾン国有数の港が整備されているの」と語った。
それから太陽が地平線に沈み始めた夕方。
彼らの視界の前に巨大な水を湛える大地の手前に広がっている村落が目に入った。
そこは、“集落”と言うには大きくしっかりしている様にジラセには想えた。
「あれが、私たちのレ=メゾン国の最大規模の集落であるアーダン村だわ。
そして、海の向こうには支配下の唯一の町であるリン=ジェンが在るの」
彼女は悪戯っ子のような声色で喋った。
その表情を見ることなくジラセが思ったのは、親に対して揶揄うように舌を出す子供に思えた。
視界に村とは思えないほどの規模と壮麗さを誇っている様子が迫ってきていた。
村の家々の壁面は白色で塗られていた。
彼は何時もの作業の一環として、賜力を使うことにした。
そこで彼はその集落に意識を集中した。
彼の魂が額にある霊胞に導かれ、それからボキ女神様から与えられた賜力によって使える“解析し本懐”を使った。
そのエネルギーが額の根源の部分を通り、集落へと投射されていった。
『アーダン村 宗首国レ=メゾン国。経済規模、首府レ=メゾンの七割。人口、六百人強。交易国家数、二。Etc』
何故、そのような土地が未だに一介の村落で満足しているのか彼には疑問に想った。
「メメさん、何でレ=メゾンから政権を奪取しようと彼の土地━━アーダン村━━の方々は考えなかったのでしょうか?
僕には疑問に思えますが」
ジラセは自らの賜力の内容を伝えないように慎重に言葉を選んで先輩に訊ねた。
賜力は、皆自らの“切り札”のようなモノであり発覚すると不利になる事が多いといわれていた。
その為、全世界の民全員は自らの配偶者にすらひた隠しにしている者も多かった。
「ジラセ君、それはね。
何処にも向き不向きがあるってことよ。私たちの土地が首府に選ばれたのは後の事らしいの。
建立式典の時には違っていたそうだわ。あの町に入ってみたら即座に分かる事よ。
元々は、アーダン村がそうだったらしいの。
そこから即座に遷都して今の位置に移したって話には聞いているわ」
彼女は詳細にその時の情景が脳内に浮かぶように教えてくれた。
まるで見たことがあるかのように。
彼女は有無を言わせない態度で後輩に返答した。
(メメさんって本当に物知りだなぁ。
彼女の軽そうな雰囲気とは似つかず、本来は歴史学との知識が豊富だったりしてね。
それでも何故、首府としての機能を得ようとしないのか、少し聞いてみるか)
ジラセは腹の底に力を籠めた。
そして遠望できる範囲内でのその姿でのその姿の隅々まで、目に焼き付けてから先輩に訊ねた。
「何でアーダンは首府の座を獲得しようとしなかったんですか?
あの大きさの礼拝堂の鐘楼が此処からでも見えます。財力は潤沢であるように思えますが」
その礼拝堂には鐘楼があった。
礼拝堂に設けられた高所の施設であり、連結した通路で男女の修道士及び修道女が離れた建物で暮らしていた。
人間としての性欲を抑える為に、建物を離していた。
といっても、同一敷地内にあり時折共同でイベントを施行することもあった。
「それは集落に入れば、おのずと分かると思うわ」
七話まで更新(26.08.12)




