第一回親睦発表会01
ジラセはユマと共にシャインの実家である星の沈まぬ亭へと向かった。
其処は、都市レ=メゾンでも有数の大通りに面している二階建ての建物であった。
門構えも立派で、出入り口の門柱には瞬く星星を模っした彫像の掘られた彫像がある。
「ス、スゴイ」
ジラセはゴクリと唾を呑み込んだ。
圧倒されないように勇気をふり絞って観音開きの扉の中に入った。
中は受付ホールになっており、創設者であろうか一人の男性の絵画が飾ってある。
床には緑色の落ち着いた色合いのカーペットが敷かれていた。
二人は客としてホールで待っている十名ほどの人々に同時に気おくれしていた。
服装も優雅で金がかかっている様に見え、所有物の鞄なども豪勢である。
それと同時に付き人が居る人も多い様であった。
「ジラセ君とユマちゃん、ようこそ、僕の実家へ」
そこに一人の赤髪のやや小太りの少年がゆっくりと歩いてくる。
同じ成人の儀の時に同班に配属されたシャインであった。
その行動も含めて彼の服装も金の飾りがされ立派であった。
さらに表情は、毒毛を抜かれるように思える笑顔でもあった。
「貴方の家ってとても立派ね。
あたしらは御大層な住居に関わった事ないから……緊張しちゃうわ」
彼女は幼馴染の方へ視線を向けた。
彼はその目線を見返すと少しドキッと来たが、まるで心を見透かされる様であった。
(ユマの目、前の夢以降どこか僕を困らせないか?)
彼は頭を捻りながらも、ユマと共に案内されていった。
シャインが案内したのは、一室。
十名ほどの人が円卓状の椅子に座って会談ができるつくりであった。
壁には黒い闇の中で輝く星星の絵画と、四人の家族と思われる人の絵。
「この絵はね、この旅館の創設に関わった家族を描いた物」
と手を円卓に向けて、「皆、二人もやっと来たよ」
ジラセは円卓の方へ注意を移すと、バルとミィンは既に着席していた。
それからシャインも椅子を二脚ほど引いて座る様に促して、自分も座った。
「それでは、全員揃ったな。
今から第一回木漏れ日の狐班親睦発表会を開催する」
全てを呑み込むかのような双眸の眼をギロリで中空を睨みつけたバルが喋った。
その声音は重々しく、圧倒するかの様であった。
そして彼はジラセの方にニコリとした笑顔を向けると頷いた。
どうやら発表を促されているようだと彼は感じた。
「皆御免。
僕は昨年の冒険家に就くための試練を乗り越える事ができなかった。
その為、今は首領邸で事務官として働いているよ。
代わりといっては何だけど、仕事で気が付いた点を伝えようと思う」
「それも宜しいですわね。
わたくしは、御父様から気軽に家から出る事も禁止されているのよ。
婚約するまでその身を傷つける事は許されんと」
ミィンの悲しそうな声が室内に響いた。
自らの艶やかなその脚を組み替えると身を乗り出す。
その姿勢は会話の言葉を聞き洩らさないように心がけている様子を暗示していた。
ジラセは細心の注意を払っているつもりで言葉を語りだした。
「先ずは最初の任務地であった別の町であるリン=ジェンの事を語ろうと思うよ。
そこは」
彼はその地で見た総督邸の重厚さや潤沢な資金を投じられて建築されたであろう設備の数々。
それと迫力の備わった総督の印象。
波止場に係留してあった船。
神獣と同種のリーバック亀との邂逅。
それと襲撃によって気が付いた事。
「僕の実力では冒険家の危険を歩く力を備えていない事に気づかされたんだよ。
それで去年の後半から今年の今日まで鍛錬を続けてきた、のさ」
一言切ってさらに力強く宣言した。
「今年中に父ちゃん、いや父上との勝負に勝ってみせる!
それでだよバル、僕と決闘しろ」
彼は真剣な眼差しで班長を睨んだ。
その瞳の視線には覚悟の輝きが映っている。
バルは立ち上がり胸元を叩いた。レ=メゾン国で伝統の“承知”という意味も有する行動であった。
其れにウットリと惚れ惚れとしているユマの存在には彼は気が付かなかった。




