私と契約して!
「私、実は悪魔なの」
とアリス・マルガレットと名乗る少女はそういった。
年の頃なら12,3才。ストレートにしたブロンドヘアーに陶磁のような白い肌。蒼い瞳に薄いピンクのドレス。
よくよく見ればどこか人間離れした風に見えなくもない少女はそういった。
アリス・マルガレットは3年前に死亡している。ぐぐーるさん情報だ。
それを指摘してやると出てきたのが上の言葉だ。
なんでも娘をなくした貴族の老夫婦に魅惑の魔眼を使って潜り込んだらしい。
…娘をなくした人物に悪魔関係者が接触する…どこかで聞いたような話だ。
魅惑の魔眼と聞いて「魅惑耐性」のスキルを速達で購入したのは余談である。
ちなみに購入してすぐ不快感に襲われた。
どうやらアリスからの攻撃だと思っていた不快感は、スキルを速達で購入した時の障害だったみたいだ。
道具を速達で購入した時にはこんなことはなかったんだがな。
悪魔だということをばらしたアリスは自身について色々と教えてくれた。
悪魔は悪魔同士戦って力を奪い合っていること。
自分は戦いに敗れ大部分の力と記憶と名前を失っていること。
未だに力の残り物である自分を付け狙い完全に吸収しようとしている奴がいることなど。
ちなみにアリスは元に比べて弱体化しているため魔眼をかけるときはまず相手を弱らせる必要があったとか。
俺の場合罪悪感で折ってからかけるつもりだったらしい。
ちなみに老夫婦は娘が死んだ悲しみで弱っているところにつけ込んだのだとか。
「しゅ、羞恥心で真っ赤になったあなたはとても可愛かったわよ」
なんて言われたが自分が辱めを受けたことをネタにしたのを思い出したのか、顔を真っ赤にしながら言うアリスはどう見ても背伸びしているようでかわいかった。
「で、なんでそんなことをわざわざ言うんだ?」
ぶっちゃけ悪魔同士の抗争には興味はない。
ミームも俺を「魅惑」しようとしたためアリスにはいい感情を抱いていないようだ。
「私と契約してほしいからかな?(エロそうなのは不本意だけど。)」
最後の方はぼそぼそとして聞こえなかったが、詳しく聞いてみると悪魔がその力を増やすためには次のような方法があるらしい。
一つ、同族と戦って勝利しその力を取り込む。
一つ、迷宮などの魔素の多い場所に篭もり力を蓄える。
一つ、眷属などを使い魔素を集めさせる。
おおまかに分けるとこの3つだそうだ。
基本的に魔素というものが悪魔の力には必要なようだ。
まぁ魔物を動かす元にもなっているのだからわからなくもない。
ちなみにアリスの弱体化前の状態では迷宮を作る能力を持っていたという記憶があるそうだ。そこから沸き上がってくる魔素でじっくり育っていたところを横合いからさっくりやられたらしい……らしいというのはそのへんの記憶が欠落しているからだ。
で、俺と契約してと言うのは3つ目の眷属を使って~に当たる。
悪魔がその力を貸し与えるのと引き換えに魔素を集めてきてもらうのだとか。
「力を与える~?人一人魅惑できないその状態でか」
「悪魔が与える力っていうのは単純な力じゃないの!知恵とか魔法の道具とかよ!」
ちょっと興味が出たので詳しく聞いてみた。
なんでも悪魔の持つ知識をいつでも辞書をひくように閲覧できるようになったり(ぐぐーるさんがあるから必要ないな)
悪魔にしか手にはいらない独自の流通網でいろんな道具を手に入れられるとか(蜜林さんがあるからいらないな)
最もそれらを使うには魔素と引き換えのため魔素を集めて自由に操れるようになるだとか(精霊貨と似てね?)
うん、見事に俺のギフトとかぶってる。別にこの力は要らねーや。
「悪いけどまn…」
「…私のおしりを揉んだくせに…」
「うぐっ」
断ろうとするとボソリとだがこちらに聞こえるようにつぶやかれた一言。
よくよく見れば自分のセリフに顔を真っ赤にして…ってなんでそこまで俺にこだわるかなー?
「だって他に行くとこないし」「追手二人を倒せるくらいには強いし」「(後弱み握ってるし…)」
最後のは聞き取れなかったが要するに住居兼用心棒がわりといったところか…
と、そうそうそういえば貴族の老夫婦んとこに世話になってたはずだ。そこに戻らないのかと聞けば
「追手にバレた可能性があるし…迷惑もかかるから戻れないわよ…」と、今まで利用してた割には心配するような態度。
「俺には迷惑がかかってもいいんだな」と聞けば「い、慰謝料よ!慰謝料!私を辱めた!」と切れられた。
んーこうやって見てると普通の女の子なんだけどなー。
置いておく分には問題ないんだけどなー。と「悪魔 契約 有利」あたりの単語でぐぐーるさんで調べていく。
お、このアイテムがあれば無茶なことはされなさそうだな…悪魔の気配とやらも抑えられるらしいし。
俺はそのアイテムを密林さんに注文すると、とりあえず夜も遅くなっていたので続きは明日ということにした。
アリスは渋っていたが「契約しなくてもしばらくなら面倒は見てやる」といったらまぁ納得してくれた。
寝る場所について「ベッドはひとつしかないから…」お前が使えと言おうとしたら
「だ!ダメダメ!私達まだ出会ったばかりだし!契約もしてないのにそんなの絶対ダメー!!」
…何を勘違いしているんだ…
ミームはミームで「一緒のベッドで寝るのになんであんなに嫌がってるのですか?」と聞いてくるし…
寝る前に起こったこの騒動を収集させることを思うと思わずため息が出るのだった。




