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朝の修練

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仕切り直し

…975、976,977…


 朝、王都へ向かう街道を少しそれた場所にある空き地で男の声が響き渡る。

 もっともその声の発生源は俺なんだが。

 朝の冷たい空気が汗ばみ暖められた体に程よく心地よい。


 手には剣。

 名を「無明」。

 そんじょそこらじゃお目にかかることのできないくらい美しさを誇る自慢の愛剣だ。


…983,984,985…


 空き地には俺一人。

 日もようやく登り始めたといったところだ。


 俺は決められた型をただひたすらに繰り返す。


…988,999,1000ッッと…


 残心を終えゆっくりと息を吐く。

 呼吸を整えると次の型に移る。


…8,9,10…


 今こなしているのは魔装流の型をいくつかだ。

 魔装流というのは今よりはるか昔、超魔帝皇国時代に流行ったとされる魔武具、魔装武具を扱う武術の流派だ。


 この流派をぐぐーるさん…俺のギフトである「世界検索」…で探し出し修行法を実践している。

 手本となる書はあれど師はいない状態で手探りでやって来た修行法だが、少なくともあの時よりは強くなっているということは実感できている。


…998,999,1000ッ!ふぅー


 最後の型を終え思わず息を吐く。

 さすがに楽々とこなせるようになるというモノではなく俺の体は汗だくだ。

 タオルで汗をふきハニーウッド製…これまた俺のギフトである「世界通販」こと蜜林さんで取り寄せたものを便宜上こう呼んでいる…の魔具である湧水筒で喉を潤す。

 この魔具はたとえ中身が空になってもすぐさま水が湧き出てくるというすぐれ物の水筒だ。

 今では跡形も無い古代文明の遺物でもあるのだがハニーウッド製品はそんなのかんけぇねぇとばかりにどこからか調達して届けてくれる。

 一体どういう仕組なのだろうか?

 もしこの魔具の効果がバレたとしても”古代文明の遺産”ではなく”新たな発明品”と解釈されてしまうのは都合がいいのか悪いのか…。

 きっとまるで新品のような見た目と遺跡も何も残せなかった古代文明のせいだろう。

 さすがに鑑定のスキルを使われれば「忘れられた古代の遺物」なんて文章が出てくるが。


 しばしの休憩の後目星をつけた一本の木のから30メートルほど離れた場所に立ち、ベルトの後ろからロッド状の長さに調節した伸縮金剛棒、略して「金剛棒」を引き抜く。

 片手に金剛棒を持って脱力した状態から木を的に見立てそれを貫くように腕を突き出し金剛棒に魔力を込める。

 すると一瞬で金剛棒が30メートルほど伸び…的をかすめしばらくして止まる。

 これを100回ほど繰り返す。的にかすったのが17回、命中したのが64回だ。

 まだまだ要鍛錬といったところだろう。


 「おつかれさまー」と愛剣である無明から精霊が飛び出してくる。

 身長は15センチほど。銀の髪を筆頭に全体的に銀色の衣装でまとめられたその姿は10人中10人が美しいと答えるだろう。

 彼女の名は「ミーム」。魔剣である無明の精霊石に宿る精霊である。

 ミームも俺のギフトの一つ「精霊貨獲得」で手に入れることができる「精霊貨」のおかげで成長を続け最近では自分の容姿そっくりの分体を作れるようになった。

 また分体を用いれば人前でも気兼ねなく俺と会話ができるため出来る限り分体を出しているようだ。もっとも日に数時間が限度だが。

 分体は空中を自在に飛び回ることができるため知らない人間が見れば妖精種と勘違いするだろう。


 ミームに声をかけながら軽く髪をなでてやり朝食の準備を始める。

 完全に顔を出した太陽が俺たちを照らしていた。

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