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スキル無しゴトーさんは最弱のはずです!~勇者召喚に巻き込まれたモブサラリーマンの異世界冒険記~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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第5話 続・スキル無しのスキル

 ユキタカは人物鑑定後、そのまま用意されていた馬車に乗せられ、猶予を与えられる事なく辺境に向かう事になった。


 ユキタカもこうなったら腹を括るしかないと思い始めた。


 辺境でも村に移送されるなら人がいる。


 そこで、ラノベらしくこの鑑定眼鏡と現代知識を用いて、出来る事をやろうと考え直したのだ。


 途中の街で買い物をしたいと思ったが、用意された生活費となるお金は辺境についてから渡すとの一点張りだったから、今のところ無一文である。


 だから、ユキタカは辺境までは大人しく従うしかないのだった。



 辺境まで一か月も移動時間を要した。


 ユキタカは馬車に揺られながら行き交う人々を観察したり、途中の街の宿屋の部屋から人々の生活を眺めるくらいしかできない日々を送っていたが、辺境まで来ると野宿が増え、人の往来もほとんどなくなってくる。


 文字通りの辺境だった。


 御者や同行している護衛は、一切自分と話してくれないので、どういう人物かわからないが、全員が腕に覚えがあるようだという事だけはわかっている。


 彼らの会話を聞いていたからだ。


 御者は元王国騎士で引退してから、要人の護衛兼御者をしているという。


 護衛は冒険者で相当有能らしく、メンバーの一人は一流の弓使いらしい。


 『必中の射』という、狙った相手の心の臓を必ず射抜く技があるのだとか。


 だから、辺境まではユキタカも安全に向かう事ができると、その点だけは安堵していた。


 そんなある日の事。


 もうすぐ、辺境の村に到着するらしいという事を、御者や護衛が一安心した様子で、ユキタカが寝静まった深夜にコソコソと話していた。


 その時、いつもなら寝ているユキタカはなぜか寝られず、仕方ないのでテントの中で横になったまま、村についたら最初に何をするか復習していた。


 ここまでくる間に、これからどうやって生き残るか、色々な事を散々考えていたからだ。


 そこに護衛の冒険者達の声が微かに聞こえる。


「依頼通り、開拓村はもうすぐだ。到着する前日の夜に、絶望した奴が逃亡を図り、俺がその心臓を射抜く、という事でいいんだな?」


「ええ。その為に、高い契約金であなた方を雇ったのですよ」


「それにしても、たった一人のスキル無しの無能を殺す為に、『竜殺し』の異名を持つ俺達専門家を雇うかね?」


「稀人を野放しにして、国が亡びるなんて事は過去に例がいくつもあります。国王陛下は、念には念を入れているのですよ」


「その点は任せろ。人相手なら、この俺の『必中の射』で死ななかった者はいないからな。大抵の鎧なら貫通させて心臓を射抜けるくらいの威力があるから安心しろ」


 国王や御者にとってだけは心強い言葉で、冒険者達はユキタカの暗殺計画を話していた。


「!」


 ユキタカは一気に震え上がる。


(僕の眼鏡でその『必中の射』とやらを防ぐ事はできないよ……。これはもう、今のうちに逃げるしかない……!)


 ユキタカは、焚火をする冒険者達の死角になるようテントの反対側から抜け出して、逃げようと画策した。


 ゆっくり、身を伏せ、焚火の周囲で見張りを務めている三人に見つからないように、草むらの方にこっそりと這っていく。


 すると、


「早速、かかったな。俺は索敵能力持ちだから、動きがあればすぐにわかるんだよ!」


 という声がこちらに向けて告げられた。


 ユキタカはすぐに自分の事だとわかったので、立ち上がると走り出す。


 草や木を死角にしながら、ユキタカは護衛冒険者の『必中の射』を避けようと必死に駆ける。


「はははっ! 誰もが考える事だが、スキル無しではそれが限界か?」


 弓使いは、ユキタカの必死の行動も嘲笑うと、弓に矢を番えて振り絞る。


「この距離なら外さないのが俺の『必中の射』だ!」


 弓使いはそう宣言すると、矢を放つ。


 その宣言通り、ジグザグに走って難を逃れようとしているユキタカの心臓めがけて、矢が吸い込まれていく。


 特別製の矢はユキタカの背中のビジネスリュック越しに心臓部分へ突き刺さった。


「ぐっ!」


 ユキタカの悲鳴にならない声が響く。


 ユキタカは、矢の威力の前に突き飛ばされたように吹き飛び、その先の傾斜に、転がり落ちていく。


「あっ! 確実に射抜いた手応えはあったが、崖に落ちたぞ!」


 弓使いが、遠見能力を使ってユキタカの死体が回収できない可能性に悔しがる。


「困りましたね……。仕留めたら、その証拠に眼鏡を回収する予定だったのですが……」


 御者が、お役目達成の証拠を持ち帰るように依頼されていたのだ。


「眼鏡なら、ここに落ちているぞ?」


 冒険者の一人が、地面に転がっていた眼鏡を拾って見せた。


「それなら問題ありません。天下に名高い『必中の射』を見れて良かった。これでお仕事は終了です。夜が明けたら王都に帰りましょうか」


 御者は笑顔でそう告げると、護衛達も何事もなかったように、朝までひと眠りするのだった。



 心臓を射抜かれて、崖に転落したユキタカはというと……。


 どういうわけか、一命を取り留めていた。


 弓使いの『必中の射』は確実に心臓部分を捉えていたのだが、貫く事は出来ていなかったのだ。


 ビジネスリュックが守ってくれた?


 いや、地球ではどこにでも売っている市販のビジネスリュックが、『竜殺し』専門の弓使いの矢を防げるわけがない。


 だがなぜか、ユキタカは全く負傷する事無く崖に転落し、右手に傘、左手に鞄を握った状態で気を失って倒れていた。


 「……こ、ここは? ──そうか……、僕は命を狙われて……。助かったの?」


 ユキタカは意識を取り戻すと、無傷である事を確認する。


 空を見上げると夜が明けているのが微かに確認できた。


 恐るべきは、落下した崖の深さである。


 下から上を眺めると、ここが、はるかに深い奈落の底である事がわかった。


 なぜなら、周囲に光があまり届かない程だったからである。


 その暗さに、懐からスマホを取り出して、ライトを付けた。


 周囲は、岩がごつごつとしているが、魔物がいる気配はない。


 これで、魔物の巣窟だったら最悪だったろう。


 不幸中の幸いで周囲には何もないようだ。


 安堵した事で余裕が生まれたユキタカは、そこでようやくいろんな疑問に気づいた。


「凄そうな技の矢を食らって何で僕は生きているんだろう……? この高さから落ちて何で怪我一つないのもおかしいよね? それに……、スマホのライト、やけに光が強くないか!?」


 ユキタカは助かった事に安堵した反面、色々とこの状況にはツッコミどころが多い事に気づくのだった。

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