89.殲滅戦
エヴェリン視点
場所:フーロイ=ゼン統一王国西部戦線
「敵浸透勢力の殲滅を完了しました」
部下からそんな報告を聞かされる。
「こちらの損害は?」
「第608戦闘団が壊滅したものの大した損害ではありません」
「ふーん…原因は?」
「側面強襲を狙って返り討ちにされました。恐らく第4師団付の戦闘団の連中が言っていた悪魔が原因かと」
「返り討ち?なら正面戦だけで片付けたの?」
「いえ、敵突破距離が大きかったため少し違う地点から側面強襲を再度仕掛けることで、包囲殲滅しました」
「それで、第4はどれくらい残ってる?」
「謎の魔法攻撃によりかなりの損害を負って、定数の半分を割っています」
「解体が妥当ね。戦闘団に再編して掃討戦に投入して」
「ということは…」
「ええ、第6軍で一時的に戦闘正面を引き受けるものとするわ」
「歩兵戦力に関して若干の不安が残りますが…」
「あくまで南方軍が来るまでの繋ぎよ。それに、敵第7師団を蹂躙した以上あちらの予備戦力状況はカツカツのはず。マトモなら攻勢なんて仕掛けてこないわ」
「なるほど。了解しました」
「で、悪魔は殺せたの?」
「はい。最終的には包囲下の第7師団の暫定的な司令官として奮闘していたみたいですが、大した抵抗もなく殺害に成功しました」
「まぁ、兵員の質と量、あと情報伝達の問題のせいかしらね。おそらく部下のほとんどがまともに命令も聞かず独断行動をやったんじゃない?で、一応聞くけれど悪魔の名前は?」
「アドゥルフ・オーレル、階級は少佐です」
「そう…貴族ではないのね。まぁいいわ。仕事に取り掛かってちょうだい」
「はッ」
部下は敬礼をして下がっていく。
「中尉殿。次の命令を!」
「今すぐ前線の最新情報を持ってきてくれ」
「第2大隊北部前線司令部より決別電!」
「近隣の第4大隊及びその付随部隊は今すぐ持ち場を放棄。撤退して第3線へ撤退するよう命令しろ」
「第6独立中隊から決別電。降伏するそうです!」
「くそッ最後の予備部隊を投入しろ。撤退戦のために何としても東部防衛線は死守だ」
どかりと椅子に座り込む。こんなことになるのなら最初から降伏していれば良かった。
ぼんやりと目の前で書き換えられていく地図を眺める。これは無理そうだ、とどうしても思う。
「中尉殿!予備部隊の展開に失敗して敵に先を越されました!」
「撤退命令を出せ!陣地が無ければ太刀打ちなんてできない。予備防衛線を守らせろ」
とうとう本格的に戻れなさそうだ。
どう死ぬべきだろうか。
「閣下。もう無理です。こうなったら遊撃戦に移行すべきかと」
古参がそう言う。そうしよう。敵に少しでも損害を与えることこそが軍人の役目なのだから。
「最優先命令だ。第7師団は現時刻をもって解散。責任は私が取る。各自、中長期的な遊撃戦に移行し、もって敵の兵站破壊による損害の強要を行え。"全ては皇帝陛下のために"」
第7師団司令部全体が、先程よりもより騒がしくなる。
「閣下!首を斬られるおつもりですか!」
「必要とあらばその程度覚悟しなくてはな」
「しかし、閣下がいなくては…」
「…わかった。私も戦おう。しかしあちらの手を緩めるため死体の偽装は必要だ」
「であれば元司令部要員の連中の死体を使っては?」
「そうしよう。さぁ、こんなところさっさと去るぞ!予備防衛線の連中に連絡しろ。今からそっちに行くと」
今しがた死んだ少佐は席を立ち、元第7師団司令部を去っていった。
アドゥルフの口調が違うのは部下を安心させるために演じているからです。決して私の個人的な趣向は混じってません。はい。




