79.統一戦争④
場所:ノイエ帝国東部戦線
エヴァ視点。
『第2師団による攻勢作戦は失敗。撤退部隊の負傷兵の治療を支援するため、1部衛生部隊は一時的に第7師団から分離するものとする』
師団本部からの命令で、第2師団の所へ行くことになった。
「空いてる奴!今すぐこっちに来てくれ。人が足りてない!」
「新しい鎮静剤をさっさと持ってきてくれ!」
「足を切断する。猿轡を噛ませろ」
「…ぁがぁがががぁぁあああ!!」
「まだいるのか!クソっ早く連れてこい」
私のいる野戦病院のテント群では、文字通りの地獄が広がっていた。
血塗れでところどころ欠けている兵士達に、朱色の白衣に身を包む目の下の隈が濃い衛生兵達、聞こえる様々な声に、何より酷いのは匂い。汚物の匂いと…何か甘ったるく酸っぱい匂い。
「お前らが第7の連中か。俺はここの責任者だ。こんな惨状だ、御託は良い、今すぐ取り掛かってくれ」
煙草を咥えながら走ってきた、少佐の階級章を付けている男が大きめの声でそう言う。
「あの…具体的に何をすれば」
説明が少な過ぎる。
「そこら辺を走っとけ。そうすれば衛生兵連中がお前らを呼ぶ。頼んだぞ」
少佐はそう言ってまた駆けていった。
「おいお前、手伝え!」
言われた通りなんとなく歩いていたら、声がかかった。
声の方向にあったのは「28」と書かれたテントで、すぐにそこに入る。
「来たな新入り、とりあえず手伝え!やるぞ!」
声をかけてきた男の階級は少尉で、ここの責任者っぽい。
「ぁぅ…ぁ…」
患者は小さく声をあげ続けているようで、ちらと声の主を見る。
そこには顔右部分が焼かれ、右腕は吹き飛んでいる女がいた。
「魔術修復を使うのですか?」
「ンなわけあるかよ。野戦魔法が開発されたとはいえ魔力が圧倒的に足りない」
「魔術腕の定着手術は…」
「こいつは貴族じゃねえし、少なくとも今は無理だ。さあやるぞ!」
少尉の声に周りの衛生兵が頷く。声をあげる気力ももうないらしい。
そこからは地獄だった。まず、負傷箇所の確認。腹部に銃創が認められたため緊急で開腹手術を実施、腹部を開き内臓が大丈夫か確認した。幸い内臓に損傷がなく、縫って腹部を治療し終えた。
次は右腕。感染症対策のため切断と止血をやることとなった。止血用の使い捨て魔道具と、切断用のノコギリ、猿轡を衛生物資本部から持ってきて、早速手術することになる。
大きい切断用のノコギリを持つ。私が切る役目らしい。
ノコギリが微妙に熱を持っている。我が軍ではお湯に浸し消毒して使い回すシステムで運用されている。非衛生的か衛生的かはよく分からない。
「えっと…行くよ!」
猿轡を噛んだ患者にそう声をかけ、ノコギリの刃を右腕にガリッと食い込ませた。
「ぅぅ…ぁがががぁぁぁああああ!!」
曇った叫び声が響く。
私はそれを気にせず、淡々と斬っていった。
「止血!」
切断と同時に止血用の使い捨て魔道具が押し当てられ、起動する。
キュィィィブォォンっと音がして、患者が拘束された状態でありながら激しく跳ね回る。
「ぁぁあぁあああああがッあっああ!!!」
止血完了。止血した部分に包帯を巻く。
患者は泡を吹いて気絶している。
ちなみに止血と言っても魔法により超高熱で熱した金属を押し付けただけで、大して先進的な技術でもない。
最後に顔の右部分に包帯を巻いて終了。
ひょいと持ち上げて治療済み患者用のテントに置いていく。
「良かったぞ新入り!お前は長く戦えそうだ!」
少尉はそう私に声をかける。
…これだけやってやっと1人。
私達は休むこと無く、そこら辺に横たわっている新しい患者をテントに持ってきて、また新しい治療を始めた。
次回、野戦病院の天使様




