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亡き王女のためのパヴァーヌ
アレムアンド王国は、激動の時代の中で王政を守り抜き、国は豊かになっていった。
王室は権力の象徴へと変わり、議会が開かれ、国民が広く政治に参画するようになったのは、諸外国よりも半世紀早いと記録されている。
その礎である教育制度を広めたのは、この国には珍しい女王だったという。彼女は、弱冠20歳で戴冠し、40年近く国民に母と慕われた。
彼女は生涯独身を貫き、その墓石には百合の女王と記されたが、女王の傍らには、いつも騎士がいたという。
彼は生涯、女王を支え、ただ一人、その名を呼ぶことを許されていた。彼の墓石は、女王の隣に作られ、その墓石を囲むようにリコリスが埋められている。
決まった季節に咲く花が、今もなお「唯一」を二人に捧げ続けている。




