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ハーナル王立図書館地下蔵書  作者: K
ハーナル王国民話 ーハーナル王国七不思議ー
3/16

消えた男

とある村に、とある女の人がいました。


少し気が強くて意地っ張りな、ごくごく普通の女の人です。


彼女には、ある知り合いがいました。


感受性が強くて、内気ですが真面目な男の人です。


人に迷惑をかけるのが大嫌いで、どんなことでも1人で抱え込むような性格でした。


女の人は彼を「男なんだからうじうじしないの!」とよく叱っていました。


でも本当は、男の人をいつもいつも心配しています。


そして、色々なことを深く考えられ、丁寧にゆっくり喋ってくれる彼を尊敬していました。



ある日、男の人が酷く悩んでいるようなのを、彼女は見つけました。


声をかけると、男の人はなぜか、怯えたように彼女と話します。


「ねぇ、何を悩んでいるの? 私に、話してくれない?」


彼女は優しい声で言いました。


男の人に、素直になってみよう、と勇気を出して言った言葉でした。


もっと仲良くなりたい、と思い切って願いをかけるように言います。


「私たち、友達でしょ……?」


「違う!」


男の人は、急に叫びました。


「君は、友達じゃない!」


肩で大きく息をつく彼を、彼女は呆然と眺めていました。


その、淡いブルーの瞳から涙が溢れるのに、そう時間はかかりませんでした。


それを見ると男の人は駆け出し、谷へと向かいました。


我に返った女の人は追いかけましたが……。


男の人は、消えていました。


確かにここへ走っていったはずなのに。


崖には、誰もいませんでした。


男の人の声が響いていたような気がして、彼女は耳を澄ませます。


小石が谷へ落ちていく音しか、聞こえません。



そして女の人は悲しみのあまり、谷へその身を投げましたとさ……。

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