↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪族  作者: ゴルゴンゾーラ三国


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/48

08

 開けた先にあるリビングは、記憶の中にある、昔のものと、たいして変わりがなかった。

 庭にもつながる大開口窓がある右奥の方には、大きなL字のソファとテレビ。空間を区切るように置かれている、低い本棚。扉を開けてすぐ、四人掛けのテーブル。テーブルの右側にあるのは、カウンターキッチン。


 多少、ものが増えたような気もするけれど、それは僕がここに訪れなかった間に増えたものなのか、それとも、ただ忘れただけなのか、判断が付かない。

 ただ――埃まみれなのは、ここも変わらなかった。


 リビングの床も、廊下と変わらないくらい埃が積もっていて、テーブルや本棚の上に指を滑らせると、指先が酷く汚れる。

 ここで生活が送られていないのは、明白だ。


「か、母さん? ……父さん?」


 返事はない。

 せめて、足跡の一つでも見つけられないだろうか、と、リビングをうろついてみたが、そんなもの、どこにもありはしなかった。

 僕が歩き回って舞った埃が、大開口窓から入ってくる日光に照らされて、きらきらと光っている。


「……は、――っ」


 何かないか、とあたりを見回して、目に入ったカレンダーを見て、僕の頭は真っ白になった。リビングに入る扉の真横に、固定電話を置く棚があり、その上部分に、壁掛けのカレンダーが取り付けられているので、入ったばかりのときは死角になって気が付かなかったらしい。

 そして、その、カレンダーは――約、十年前のものだった。十年前のものだからか、変色し、右下の方には変な染みができている。


「まっ……、て、待ってくれ……」


 誰への懇願か分からないその言葉は、ひりついた喉にこびりつくように、うまく出てこない。

 母さんがカレンダーを変えないなんて、考えられない。ありえないけれど、万が一、変え忘れていたとしても、一か月程度でなければおかしい。年単位でカレンダーを変えないなんてことがあるわけない。


 この日焼けて汚れたカレンダーが使われていた頃、母さんたちがこの家を出て行ったと仮定したとして――。


 ――いままで、僕の世話をしていたのは、誰、だ。

 あの日、階段を駆け上ってきたのは――なんだ。


 食事が用意されなくなって、両親を探しに来て、もぬけの殻になっていた、なんて話はネットで読んだことはある。

 僕自身、いつかやられるかもなあ、なんて他人事のように感じた記憶もある。

 でも――でも。

 そんなものとは、話が違う。今朝だって、普通に、料理が用意されていて。

 僕が引きこもるようになって二十年弱。一度だって、料理や掃除、洗濯が滞ったことは、なかった。


「ぉう、ぇえ、ッ」


 母さんの料理だと思っていたものは、得体のしれない誰かが用意したものだと気が付いてから、猛烈な吐き気に襲われ、僕は思わず、えずいてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。