愛される太子とダチョウのダンス(ヒューマンドラマ)
!注意書き! 破綻、誤字脱字乱文まつりです。
どぶどぶのフィクションです。
ジャンルはヒューマンドラマかな。
ドタバタコメディー? 始まり
→長めの宮中のドロドロシリアスR15、複雑な家庭
→ドタバタ→ほのぼのハッピーエンド
あたい、西洋の身分とか知らなかった……!
家系図とかワカラナイ。政治も知らない。
なんも予備知識がない……!!
あと命名、すーごい苦手で適当です。
コメディーを書こうとしたらドロドロ好きが顔を出してしまいました。
ダチョウは最初と最後にしか出て来ません。
何度も読んで、直していたのですが……もうヤダってなりました。
「僕を救えるのはこのひとだけだ!」
青髪、空色の瞳の幸薄そうなファーリース王家の血を引く男子であるダニエル・オーレンシスは、人払いにされた騎士団の訓練所の広場で、異世界から転生だか転移だかしてきたと彼が聞かされた、ファーリース王国のある大陸にはいない珍鳥、ダチョウの『プリンセスちゃん』の首に捕まって、超高速でグルングルン回されていた。
「離れなさいダニエル! その鳥は危険なんだ!!」
そんな子を、父王が遠いバルコニーから大声を張り上げて叱りつける。
「僕の命は永くはないのでしょう、王よ! ならばせめて最期に好きなひとと結ばれることをお許しください!!」
プリンセスちゃんはダニエルを物凄く嫌がって威嚇しまくり、走ったり、回ったり、嘴で突きたくったり、とにかく彼を己の体から引き剥がそうと、ありとあらゆる全力を振り絞りまくっていた。
プリンセスちゃんに剥がされようとすればするほど、幸薄く体重も軽そうな細身で、まるで重ねられていない線画のようにヒョロっとしたダニエルは、しがみつく執念の粘度を上げて、引き摺られても振り回されても、たとえ骨が折れたとしても、プリンセスちゃんの首を離しはしないぞ、という気持ちを濃く表していっていた。
「ダーニー! そいつはオスのダチョウなんだぞ!!」
五十路も遠くなくなってきている王は、王妃の子ではないが実質的には一番最初の息子であるダニエルを『あまりに愛くるしいため』に六人いる全ての子らの中で、一番可愛がっていた。
公爵家に養子に出し、結局一番手元に置いて「我が愛しき息子」、などと呼び、理由をつけては事あるごとに側で語り合って、情を深めてきたのた。
ダニエルが何かやらかす度に、少しでも余裕があれば、わざわざ現地に出向いて叱りに行く程までに……父親として、王はダニエルを愛していた。
「王……、いや、父上! いいえ、いいえ……、お父様! プリンセスちゃんは! 孤独な私に求愛のダンスをしてくれたのです!! 証人もおりますから!」
「ダーニーエール! その鳥は相手を見て愛を語りあえるような知性はないのだと何度言えば……、ダーニー、ああ、愛しい私の息子、お願いだから、その鳥の首を離しなさい……!」
「……離したら踏み砕かれるでしょう……! 僕はどうせ永くない! だからこのまま、プリンセスちゃんとこうして踊って……、この愛を真実のものにするのです……、それこそが私の生の救いなのです……!!」
愛する息子を唆された王はギリィィと首を後ろに回し下に向けると、とある男に向けて怒気のこもった溜め息を大きく吐きだした。
「話せ」
王の後方で男を縛り、地に伏せさせている屈強な体付きの鎧兜姿の顔の見えない王の私兵が、男にそう促すと……、男はもったりと喋り出した。
「……まぁ、繁殖期で確かに何にでもあのダチョウは事あるごとに踊ってましたけど……、まさか、えーと、その……、太子さまが……いやしい珍動物の見せ物の檻へお通いだとは思いませんでして」
ダニエルに証人と呼ばれた動物商のその男は、地面と接吻しているような状態でベソべそと『お許しくだせぇ節』を口から流し出した。
「嘘を申すな……、解っているぞ、全てはお前の黒い腹積もりの咎であると……、ダニエルを利用しようとしたな」
王はダニエルという息子を確かに愛しすぎていたが、だからといって盲目な暗君、という訳でもなかった。
王太子には政の力のある、人望あつい王妃の第三王子をたて、語学に長けた第二王女の賢く素早い頭の回転速度と正確な采配を見抜くと、後の世にも続くような外交の補佐の役目を作って、そこに性別に拘らずに彼女を据えていたりした。
人を見出しては適材を適所に置き、よい方向へ全体を回していくような、そんな王だった。
自らに目覚ましい力が無いからこそと、よくよく周囲を見て優れたものを埋もれさせず、腐らせないことに尽力し、悪い草を見ればより悪所へと遣り、どう出るか見極めてから目立たない間引きもスルリとして、しかもそういったやり方を悪どく広くは報せないように人を配置しては対処する『巧い主』だった。
王がダニエルを特別に愛した理由を問われたら『最も愛されるべきもの』として一番向いた天性をダニエルが持っていたから、だと答えるだろう。
しかし、愛すれどダニエルを王は官職には就けさせなかった。責を負うようなものを、何も任せはしなかった。
彼は個人の感情と公務とは別だ、と考えている王だったのだ。
愛するものに対しては悔やむことのないように真摯に常に愛を語り、務めに向くものには正しく相応しい席を用意し、 己に褪色が少しでも見えた時の為に、嘆くより早く次に位を渡せるよう、工程を密に整えて準備しておく。
事細かく政務の記録と伝達をし、継承の順の理由なども、しがらみなく真っ直ぐに後に伝えられるように……。
己が賢王では無いからこそ、王家が完全な善でも正義でも律でもないと知っているからこそ、王はそういった人事や政務の伝え方に気を配っていた。
……ダニエルは、王の立太子前の、若すぎる時分に生まれた庶子であった。
★☆★
ダニエルの実母は野心的で、当時少年だった今の王……オーリソー王子の寝所に狡猾に幾度も忍び込み、恐怖で彼を縛り付けながら『子を産んだら自分が妃になれるから』と迫ってくるような女であり……。
……王の当時の婚約者だった、今の王妃の侍女だった。
政略的な婚約だったが、オーリソー少年は八つ年上の婚約者のキャロライン公爵令嬢と初めて手紙を交わし、その姿絵を見せられた時から、彼女に一途な恋を募らせていた。
しかし、滅多に会えない婚約者の隣にはあの侍女が必ず付いてくる……。少年の王子は苦しみ、悩んでいた。
王国で催しのあったある宵に『自分の侍女が妊娠を仄めかしてきて窮じている……誰の子か問うても笑いながら蔑みを込めた瞳で見てくるだけで、流石に堪えるものがある……』と、社交の合間に束の間の人払いをして東屋の寝椅子で珍しく休憩をとっていたキャロライン嬢の疲れた呟きを聞いて、彼女に付き添っていた少年だった当時のオーリソー王子は、泣きながら腰から崩れ落ち……。
頭を掻きむしりながら『キャリー、キャリーごめん、ごめんなさい……僕が、僕が……!』と、本当にごく幼い、童の様に退行しながら、自分がしてしまった残酷過ぎる出来事の全てを、子供言葉でキャロラインに伝えた。
オーリソー王子がキャロライン嬢の侍女に愚行を強いられてから、半年以上が過ぎた頃だった。
そこでやっと、地面に頭をつけて婚約者に裏切りの謝罪をする事が彼に叶った。
言い出せず子まで成してしまったこと、非道い裏切り行為をしたことをひたすらにオーリソー王子が頭を地面に打ち付けて謝っていると、キャロラインは存外冷静に王子の謝罪を聞いているようだった。
けれど、しゃくりあげる王子が声にならない過呼吸の音をヒュカヒュカと喉から出し始めると、何も考えずに遠くを見つめるような、虚ろな表情をしながら、普段真っ直ぐに保っているピンとした姿勢をグラリと傾けさせて彼女は立ち上がり……。
気丈に、今まで見せてこなかった涙を薄っすらと初めて王子の前で自身の濃茶の色の瞳に浮かべて、静かに『あなたのせいじゃない』、『わたくしも彼女には嫌な思いをさせられたけど、オーリー程じゃなかったのね』と言葉を震えさせた。
キャロライン嬢は、一見そうは見えなくとも、オーリソー王子の言葉には確かに動揺していて……、それでも混乱する感情と寝耳に水の情報たちの中で『あの侍女』ならそんな非道もやりかねない……、と頭の片隅で分析し、幼い少年である婚約者の不貞を責め立てる事よりも、オーリソー王子もあの女の被害者だったのだという事――程度は違えど、同じ相手から辛い痛みや屈辱を受けていたのだという事に、胸を熱くさせた。
誰にも言えずに苦しんでいた、という、自分たちの負わされた理不尽な共通の気持ち――。それを知り。
キャロラインはようやく侍女への仕置きをする為の決意を固めた。自分だけにされている意地悪ならば、彼女は胸に押し留めただろう。けれども、王子にすら手を出す相手ならば……きっと他にも被害者は出ている。これからも、出るだろう。
それを防ぐためならば、公爵家令嬢の自分は王子に手を添え肩を抱き、共に立ち上がろう。
オーリソーの王家の力、自分の公爵家の力。
自分たちでは年若すぎて、信じて動いてくれるものがどれだけいるか分からないが、未来の王と王妃に恩を売りたい貴族と陳情を述べたい立場の弱い被害者たちはいるだろう。
賢く。強く。二人で、きっと、とキャロライン嬢は決意した。
それに、オーリソー王子とは年の差で気後れして少し距離を取っていたけれど、キャロライン嬢もやっぱり彼に惹かれており、彼とするお喋りや議論が大好きで、願わくば伴侶として護り合える関係になりたい……、と常から思っていたのだった。
渦巻く感情の中にあってもキャロライン嬢も恋心を捨てられなかった。
王子を落ち着かせてから、キャロラインは王子に自分と侍女の関係性をゆっくり話した。
――実はあの侍女は自分の、良いとは言えない血縁者の押し付けで、身分が低くはないて断れなかった。時に主である自分よりも居丈高に振る舞うことさえもあり、自分が謝罪に回ることもあるのだ、それがずっと惨めに思えていた、辛かった――、と告白した後、キャロラインは年下の少年であるオーリソー王子と同じ、貴族のご令嬢らしからぬ地べたにべたんと座り込む姿勢を取り、彼の手に己の両手を重ね額を付けて、『ごめんなさい、貴方のいたみに気付けなくって……怖かったでしょう』と、そう彼を労った。
オーリソー王子がキャロライン嬢を一生離さず愛そう、と心に誓ったのは、この時だった。
二人は泣き、絆を抱きしめ合いながら互いを支え、オーリソーは王太子となり、闇を晴らすように婚姻を遂げた。
――ダニエルは王太子の庶子として辺境の古城に隠されるように生み落とされ――、
血の繋がりのある母親を知らずに三年半ほどをやや淋しく育った。
生涯を幽閉され、狂女として恐れられ、子を生んだ母であることも認められずに、あの侍女は独り終わったのだった。
若くなく、我儘に不摂生を溜め込み、キャロライン嬢から婚約者であるオーリソー王子を奪おうと侍女に志願し――、そして凶行に及んでしまうような女。
オーリソー達が調べた彼女の素行は悪いどころではなく、関わってきた者の口から明るい肯定の言葉は一つも出てこず、むしろ狂女という名では到底温い位の悪辣な犯罪や事件が他に複数件露見してくる……、という有り様だった。
低くはない身分であるにも関わらず、尼になることすらも許されずに、誰に看取られることもなく流刑と幽閉の果てに、女は風化した。
生き汚く助けを乞う宛先の書かれていない手紙や詩が山ほど女の最期の部屋には積み重なっていて、それを見付けた女の実弟によりその文書は束ねられ、親族の集まりに持ち出されて読み上げられると『あの女が死んだぞ』『助けなど何処に求める気だったのだ』などと罵られつつ、宴もたけなわの頃に一斉にそれらは火にくべられ……、女の執念が燃える様を見て、親族たちから大きな歓声が上がった、というのは王家の者でも知らない話である。
実母がそういった女である事実があるから、王家にとっても、将来の王オーリソーとその妃キャロラインにも、ダニエルの存在はただの醜聞で恥である筈だった。
しかし、顔色と発育が悪く泣き声も弱々しいと密かに聞かされ、警戒しながら庶子にいちど気まぐれに見舞いの名目で会いに行った若き王太子とその妃は……。
――驚くことに、その子を見て『かわいい』と思ってしまい、虜となったのだった。
幼いダニエルは、二人にとってあまりにもかわいいと思わされる子供だったのだ。
自身の高い身分から、物心つかない時分より厳しい教育を受け、品定めをする周囲の目を強く意識し、慎重に所作や言葉を選び対応しなければいけない環境のもとに置かれていて、しかもそれに応えられてしまった聡明な二人は、こんなになんの計算もなく、可愛くうごめく生き物を見たことが無かった。
どうやら天性の愛され属性で生まれた子だとみえ、本来ヒトではあり得ない、陽光を受けると青に見える髪を生やし、華奢で、発する言葉も年齢より拙く、語彙も少ない……。
あの恐ろしい侍女の悍ましい逞しさと、饒舌さと野心、骨太な巨躯、狡猾な悪知恵を継ぎそうにもない、本当に無垢で純粋さの塊のような子どもが二人の前にただ幼く、たどたどしく、まろんでは立っていた。
薄幸そうな弱々しさをふんだんに纏った、愛想笑いも知らずにイヤイヤと素直にグズる男の子は、会ってしまえば、忌避すべきところなど一つも持ってはいなかった。
むしろその逆に、オーリソー王太子とその妃キャロラインに、何を置いても庇護すべき対象として思わせ、心の底から微笑ませてしまうような、そんな存在だったのだ。
そして、別の名前で呼ばれていた幼子は『ダニエル』という名前を付け直され、あの侍女の名や血の繋がりの証拠は抹消された。
……しかし、かといって流石に庶子を王家には入れられないし、あの侍女の存在は無いものとなっているから……、と、然るべき身分の家にダニエルは形式上何度か養子へ出され、実際には養父母や乳母、王と王妃に愛情を以って接されて、公爵家の太子として慎重に育てあげられることになったのだった。
☆★☆
少し重たく複雑で奇妙な経緯が、この親子の間にはあって、けれど愛情も確かに互いに持っていた。
ダニエルが養子に出されてから数年後、父であった先王なきあと、オーリソーは新王として即位し、キャロラインは王妃となって、二人の間に産まれた子は正式に王女王子と呼ばれ、王宮に住むようになった。
王宮ではない場所で寝起きしていたダニエルも、愛され属性だろうという王と王妃の予感が的中し、とびきり豊かな育ち方をして、今に至っているのだ。
☆★☆
「……ダニエルが私にちかい縁者だと思って、ダチョウを高額で買うよう仕向けたのだろう」
王はダニエルの方に向き直ってから、お見通しだぞ、と背後の動物商に向かって小さな声を落とした。
親子の過去をなにも知らない輩に『大切に愛している』ダニエルを利用してやろう、などと思われ、そしてその賤しい魂胆を少しでも許してしまったとあれば……それこそ……『醜聞』であり『恥』であり『王家の傷』となってしまう、というものなのだった。
「……私はダニエルを愛しているよ。王妃も同じさ。ただな」
――愛している、この感情の純度はとびきり高い。文字通りなにものにもかえがたい――
「この言葉の意味を、お前という商人は解らないのだろうな」
王は怒気を隠さずドブリと笑った。
儲けに拘るだけの、日の下に店を構えない商人には解らない感情が、この父王とダニエルとの親子関係の中には、あったのだ。
「ダチョウは買えても飼い慣らすことは出来はしない」
王は兵に手で合図をして、動物商を連れて行かせた。
話のわかる王であればこそ、一度下された判断は覆ることはもう決して無い。
動物商には、もう一銭も稼げなくなるような厳罰が与えられた。
「……ダーニー! 疲れただろう、もうおよしなさい」
商人に見せた冷たい態度とは打って変わって、ダチョウにしがみつく息子へ、王は猫なで声で心配の忠告を改めて出す。
「――プリンセスちゃん! 僕のプリンセスちゃん!!」
ダニエルは王の忠告を聞きながらも全く諦めようとしなかった。
顔色は悪く薄幸そうだが、ダニエルは特に目立った病気もすることなく、思い込みと浮き沈みが激しい性格で、色んなものに対し急激に熱しては冷めるを繰り返す、ちゃらんぽらんな芸術家体質の男だったのだった。
彼の命が永くないかどうか、は……そりゃあ、健康で安全な暮らしのもと世話されているゾウガメと比べたら、確かに永くはないのかもしれなかった。
――まあそれはダニエルに限らず全人類が、であるのだが。
芸術家肌のダニエルは、名画と珍画と素晴らしい詩と駄文をよく拵えては、モジモジ彼の父王と、母と呼ぶその正妃の女性に見せに来る男性だ。
『お父様、お母様大好き!』のとっつぁん坊やに、彼は仕上がっていた。
ダニエルはおおよそ無害なのだが、問題をよく連れてきては騒がしくするきらいがある。
憎めないけれど、ちょっとめんどうくさい、面白キャラとして生きているのだ。
「はぁ……、やはり騒ぎになりましたね」
「……キャリー!」
「おかーさま!!」
威厳のある優美にふくよかな、青いドレスの黒髪の貴婦人のバルコニーへの登場に、王とその息子は待ってましたよ! とばかりに声を上げる。
「……オーリー、我が王よ。貴方、また手こずっていますね」
「キャリー……美しい……! いや、んんっ、我が妃キャロラインよ、ダニエル太子が危ないというのにあのダチョウの首から手を離さないのだ」
(――私が見付けた動物商はもう?)
(ああ。君の手を煩わせて済まないな)
夫婦の目配せはダニエルには判らない早さと精度を誇って展開される。
「おかぁーさまー! 僕が運命のひとと踊る姿を見てください!! どうか余命短いであろう僕に、このひととの愛を貫くことへのお許しを〜〜!」
ダニエルはダチョウに引き摺られたり浮いたりしながら敬愛する国母に向けて話しかけた。
「……そのひとは書面に婚姻のサインが出来ますか? 宣誓の言葉にイエスと言えますか、ダニエル」
キャロライン王妃は血の繋がらない愛しい息子にそう優しく、しかしシャランと通る声でハッキリ問いかけた。
「……将来的にはプリンセスちゃんには必ずそう出来るように……僕が教えます」
王妃の言葉に、ダニエルがやっと少し考え込むような間を作った。
「婚姻を期待して踊ってみせるような『むすめ』を、わたくしは持てはしませんよ、ダーニー!」
「……」
王妃の言はいつも鋭く、的確に相手の心を探り出し、相手に自らの行いを省みさせるような、心を洗うシャボン水のような浸透力を持っていた。
王は、そんな王妃を改めて眩しく見つめた。
キャロラインのこの力になんど糺され感謝してきたことか、本当に数え切れないほどだ、この人はずっと美しい、とオーリソーは少年の日の時のようにまた彼女に惚れ直していた。
「お母様は貴方が描くプリンセスちゃんのダンスの絵や詩を、危なっかしい婚姻の舞踏よりも沢山みせて欲しいわよ、ダーニー! 私の愛するおうじさま!!」
「おか……おかーさま……!」
敬愛する母の言葉を受け、ダニエルはダチョウの首を離し、キャサリン王妃に向けて感無量といったように大げさにその両腕を伸ばした。
ようやく解放されたダチョウのオスのプリンセスちゃんは、一旦ダニエルから一目散に離れたあと、あちこちに曲がりながら迷走し、それでも結局『あいつに蹴りを入れてやる! 攻撃対象!!』と走る軌道をダニエルの方に直して、攻撃の体勢になりガチガチと嘴を鳴らして、速度を出し、そのまま自身の脚力を活かしてダニエルへ跳びかかった……!
が。
実は控えて構えていた重装備の複数人の兵により、要塞のような大きな盾で囲まれ、体に縄を幾重にもかけられ、座らされて、ポカンと首を傾げ口を開けたのだった。
☆★☆
「プリンセスちゃんの絵です!」
「舞踏の詩に友人が曲を付けてくれました!」
「お父様! お母様!!」
あれから、ダニエルは絵や詩の題材のミューズに恵まれて、頻繁に父と母の元を訪れていた。
そして、弟や妹たちに『是非兄上の芸術を自分たちにも見せてほしい』、とせがまれると、こそばゆいというように、両手の指をモゾモゾと動かしながら、それでも嬉しそうに揺れる笑顔になって『下手の横好きでお恥ずかしい限りですが、お目汚しをお許し下さいますでしょうか、王子殿下、姫君様がた』と言いながら、自作のやや先進的で幻想的な、やわらかい筆致の絵を紹介したり、詩の朗読をうっとりしながらしたりして、王家に笑顔を運ぶのだった。
☆★☆
『プリンセスちゃん』は、売れなくなった動物商の元から脱走し、王家の古くからのお抱えの商家にとらえられ、公爵家に買い上げられて、ダニエルの家の馬宿を一つ借り切って、もうすぐ来る筈の『オヨメサン』という名前が決められたメスのダチョウの到着を……待つこともなく気ままに毎日を元気に何も考えずに過ごしている。
ダニエルはめっちゃよい子です!
ふだん、お金のかかるおねだりはしません。
ただ、市井の悪を吊り出す役もしてるかも……?
人名の付け方紹介
オーリソー王子→ オー! ソーリー とかです。
ハハハ〜〜☆ はー凹




