レオンと三種の珍パン人
レオンはあれからゲートをつかって研究所に出入りしている。
彼の部下には『み猿』『きか猿』『いわ猿』という相手の五感を一つずつ奪える能力をもっている。
しかし、自分が目を塞いでいるときだけ相手の視覚を失わせ、耳を塞いでいるときだけ聴覚を奪い、口を塞いでいるときだけ喋れなくするといった制約もある。
『非常に興味深いね』
そういったのはアイリのスパーリング相手兼研究所室長の前田だ。
毎日のようにレオンと部下を研究対象としていたが、謝礼として生にくを与えている。
前田はいつもいっていた。
『不思議な生物だ。実に興味深い』
そして、迷い混んどるの迷いコンドル、ナイトリーくんは、今日も自分の縄張りを荒らされたとさわいでいる。
『みなごろしにするトリー』
『上等ダヨヤッテミロ』
『さるがしゃべってるぅー!』
『とりもしゃべった』
『最高に狂ってるじゃん!さいっこうだよぉおー!あぁ狂おしい動物たち』
動物と聞いてくるってるのはおまえだと、前田のことを気でも狂ったのかとおもった、ゆうきであった。
すると、ドアをノックする音が部屋中に響いた。
『ツノバヤシ統一教会のものでーす』
同時に破裂音がすると研究所の会議室にある扉がぶつやぶられた。
『はろはろーデビルオクトパスともうします!みなさん!はじめまして!そして、さようなら!ほな、ばいならっ☆』
ナイトリーくんが暴風の魔法を翼で起こして扉の残骸をはじきとばす。
『デビルオクトパス!?』
ゆうきは喉に引っ掛かっていた謎の不安感が確信に変わったことに気付いた。
倒してきたデビルオクトパスの残党が報復に来たのだ。
『調子に乗りすぎにょーん』
牙のはえた大柄な銀髪の長身痩躯なオトコはにょろにょろとからだをうごかしながらいった。
後ろに構えていた鋭い目付きの白人の男性はにっこりとしろい歯をみせていった。
『はいはーい。ほな話していくでー。みんなーちゅうもーく。そ・の・ま・え・に、ニッコリすまいるよ☆』
『何をしにきた!』
前田がうろたえた。
途端に凶暴な顔つきになっていく白人男性。
『人の話をさえぎるんじゃねえカスがっ☆』
ぽとりと首がおちるおとだけが木霊する。
『いやぁぁぁあああ!』
ユキが叫びへたりこむがそれを支えるゆうき。
感情とは裏腹に頭だけがひえていくのがわかったゆうき。
怒りだった。
その二文字だけ。
激昂したゆうきは自分が自分でなくなる。
そんな感覚に囚われていた。
アイリがぼうだちになるゆうきと違って腰のホルスターにいれている銃をとりだしうちはなっていた。
『Non,Non,Non!WattsThe...f#ck女子にあるまじきふるまいにょーん』
にょろにょろの長身痩躯の男は牙の先から霧状の麻痺毒をへやに散布していたのだ。
『鏖殺だゴルァ!☆』
『ふざけんじゃないわよ!』
首より上だけがかろうじてうごくアイリがそういった。他の面々も総じて動けない。
『またにぶらさげてる宝玉もいであげるわ』
『フザケタくちのききかたにょーん』
野生の本能で危険と見なし直ぐ様襲いかかるレオンと部下達だったがにょろにょろと避けてかわされた攻撃の数は数えきれなかった。
アイリの顔面めがけて白人男性の膝げりがさくれつした。
『ひっ』
鼻血をだしてたおれるアイリ。
それでもゆうきは立ち尽くしたまま茫然としていた。
立ち尽くしていると幻覚と幻聴がしてきた。
『の?なんじゃぬしよ?わしがみえとるのか?』
『なんだ・・・ここ・・・!?』
ゆうきはありえない光景をまのあたりにしていた。
ばぁさんのような声をしたロリがはしゃいでいるにも関わらず、先ほどまでの光景が一寸たりとも動かずにとまっているのだ。
『ここは主の精神世界じゃ。ツノバヤシティでうけた、時の魔力の残滓が影響しとる。あとはあの婦人像じゃな』
はてはて、といいながらすっとんきょうな顔つきではなしかけてくるロリータ。
『ありえない・・・!』
『そうじゃろなぁそれが普通の反応じ』
じゃ。といおうとした時。
『ロ、ロりばばぁだとぉおお!?』
『そこかいな!?』
『幸運卿のかすかな香りがするとおもったら、おかしなやつのもとにたどりついてしまったのじゃ』
くらりと揺らぐ視界の中で、しかし鮮明な意識をたもったまま、脈絡のない会話のドッヂボールは続いた。
『おまえはなにものだ!』
『そう!それ!せいかい!それがききたかった!』
えっへんと無い胸をはって主張しているのは悪辣結社バットカンパニーの黄金卿リトルハニー甘露というロリババ、ならぬロリータであった。
表向きはメイド喫茶をやっているが、きゃくをいざなうのはぁまぃ夢の国黄金郷を魔力でひたひたにしたハチミツをのませて幻覚を見せているBaばぁ、ロリータである。
『神の意志に従いなんじらを幸運卿の魔力から解離させにきたのじゃ』
幸運卿には銃でうたれたにがいおもいでたけが、ゆうきにはあった。
『思考がおいついとらんじゃろ、じゃがよくきけ、でなければみをほろぼすぞぃ!』
『イシス佐竹とバハムート石塚、この二名がそこにおる暴漢どもじゃ』
『二人とも藤堂という男と同等の身体能力をもっとる。エゾレートでいえば4000万エゾはくだらん』
視界の隅からすみへと行き来するロリばばあ。
『お主の愛するアイリはしぬぞ?』
そう聞こえた瞬間すべての音と感覚が消えた。
『きゃーっ!』
アイリが倒れこんだ瞬間であった。
身体がいうことを聞かない。
どうすればいい・・・。
(簡単だ)
分からない。
(解き放て)
『あ、っああっあああ!!!』
おかしくなっていく自我にかすかにかおる幸運卿の魔力の香りがしたきがした。




