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原始人女子の巣立ち―魔境育ちの原始人女子は、お伴の獣人たちと都会を目指す―  作者: 裏律
一章 世界的危険地帯たる、魔境を旅立ち、原始人女子が成すこととは
7/10

7.冒険者な彼らの調査結果は、極悪ケツバット

 その言葉を聞いたリサは、強く掴んでいたマルマの腕を放す。そして「ごめんなさい」と呟き、マルマから顔を逸らし、一回頭を振ると、口元に手を当て、暗い表情で目を伏せる。

 他の五人も、重い雰囲気で黙り込む。

 その六人の様子に、マルマは小首を傾げると、足元のリンと顔を見合わせると、すぐに逸らす。そしてマルマは、リンに似た、大きい体に比べ、ずいぶん幼さがある動きで、屈むと、リサの顔を、上目遣いに覗き込む。感情の機微がつかめない、やけに丸い目で、リサの顔を見つめながら、マルマは「大丈夫?」と声をかける。

 そんなマルマに、リサは、涙袋が印象的な目を、一瞬、驚いたように、少し見開くと、すぐに細める。そしてバックラーを持つ手とは、反対の手を、マルマの顔に伸ばしかけ、その手に嵌めた、薄手の皮グローブに気が付く。リサは一瞬、グローブを見ると、手を引っ込める。

 その手を、マルマの目が追う。

 リサはグローブを、バックラーを持つ方の手で、外す。そして、その白く細いが、妙に、指の節が目立つ手を、またマルマの顔に伸ばす。そしてリサは、その手を、マルマの頬に添え、撫でる。

 マルマは、ボーっとした表情で、少しリサを見つめると、その手に頬を擦り付ける。頬の肉が圧迫され、マルマの片目は、糸のように細まる。

 その姿に、リサは微笑むと、その褐色肌の頬を引っ張る。

 頬を引っ張ってくるリサの手に、マルマは、ムスッとした表情になると、その手を振り払おうとするかのような、小さい動きで、かぶりを振る。

 リサは、そんなマルマの動きに逆らうことなく、すぐに手を放す。そして放した手で、口元を隠し、笑う。

 笑うリサの顔を、マルマは下がり気味の口角が特徴的な、幼さの強い無表情の上目遣いで、見つめる。

 そんな二人の元に、足音が近づいてくると、リサの肩を、分厚いグローブを嵌めた大きい手が掴む。

 リサが振り向くと、そこには真剣な面持ちのジルダンが、マルマを見つめていた。

 マルマは、屈んでいた姿勢を戻し、ジルダンと向き合う。

 ジルダンは、一瞬、リサを見ると、すぐにマルマに視線を戻す。

「なぁ、嬢ちゃんは、よ。あの魔境から来たんだよな? なら、ちと聞きてぇことがあんだが」

「ちょっ、ジルダンさん、この子に、それを聞くのは……」

 ジルダンの言葉に、リサはそう返す。

 しかしジルダンは、そう言うリサに、横目を向けると、続きを遮るように、分厚いグローブに包まれた、手のひらを向ける。

「あぁ、分かってる、がなぁ。だが、冒険者ギルドが、なんで、こんなとこまで調査に出したのか、忘れたか? 俺たちは、これでも、けっこう切羽詰まってっかんな。急いで情報を集めんのが、最善だ」

 ジルダンは、そこまで言うと、続けて「だろ?」とリサを見返す。

「確かに、それは、そうです、けど……」

 そう歯切れ悪く言いながら、リサは、次にディンを見る。

 ディンは、少し顔を傾けて六人を見つめるマルマに、一瞬、申し訳なさそうな視線を向け、リサに向き直る。

「リサの言いたいことも、分かる。だが、今、俺たちの街は、マズい状況にある。正直、いち早く解決の糸口を掴みたいのが、本音だ」

 そしてリサが、視界に収まってはいるくらいの、ズラすような目の逸らし方をしながら、そう言う。

 それにリサは「ですが……」と、なおも食い下がるように呟く。

 ディンは、そんなリサに、一瞬、逸らした視線を戻すと、すぐに、話す二人を覗うジルダンに、横目を向け、またリサに戻し、口を開く。

「こう言うときの、ジルダンの判断は、必ず正しいわけではないが、間違えることも少ない。だから俺は、早急な判断が必要な場合、コイツを信じる、と決めている」

 そう言うディンを、リサは悲しそうな眼差しで見つめる。

 リサの、その肩を、今まで黙っていた一人の、ジェイルが、軽く、だが労わるような優しい手つきで叩く。

 そのジェイルの手に、リサは触れ、頷く。

 そんな二人に、ディンは、申し訳なさそうに、肩をすくめると、その様子をうかがっていたジルダンを見る。

 それにジルダンは、気まずそうに頷くと、マルマを見る。

 マルマは、いまだに小首を傾げたまま、ボーッとした表情で、目元に生えた黒鱗を、弾くように引っかきながら、六人を見つめていた。

「別に、昔の、こととか、魔境に、居たときの、こととか。楽しい、モンじゃないのは、そう、だけど。そんな、気にしなくて、イイよ」

「はは、そう言ってくれんのは、ありがたいんだがな」

 マルマの言葉に、ジルダンは、それでも申し訳なさそうに返しながら、続けて「そんで、聞きてぇんだが」と一言挟み、口を開く。

「さっきの岩の魔獣だが、嬢ちゃんは、あれを魔境で見たことあっか?」

 そんなジルダンの疑問に、マルマは「ん」と呟き、頷く。

 その瞬間、六人は、真剣な面持ちとなる。

 六人の、その様子を見つめながら、マルマは続けて「あれは、ケツ」と短く告げる。

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