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霊能少女は物理的に滅する  作者: ひさあさひ
2/2

アンリ•ヴァイエル ②

右も左も分からない。

長い船旅を終えてやっと本土の港町に降り立った。ここから王都まで馬車で2時間ほどだ。

本土に1番近い港でも良いのだが、王都には1週間かかり険しい山や森があり道は整備が行き届いていない場所が多いため遠回りして王都に1番近い港まで船旅をする必要があった。


船旅は意外に心地よく部屋は2番目に良い部屋にしてもらったからベッドはふかふかだった。途中間違えて違う部屋に入った時は半透明な男が天井からぶら下がっていたり、夜の海面を見ていると無数の手が船に張り付いていたが、危害は無いのでそっとしておいた。


港に迎えの馬車が来るまで喫茶店でアマリアとお茶をしていると、窓をコツコツと指で叩く人が窓越しに声をかけてくる。


「あっウィリアムお兄様!」


窓越しから迎えにきたと告げる兄を見て喫茶店から出る。


「大きくなったな!アンリ!何年振りだ?」


「最後に会ったのはお兄様が領地に帰郷された時ですので2年振りかと」


「そうか!そんなに立つのだな!それにしても大きくなったなーアマリアも元気にしてたか?俺に一通も手紙を寄越さないからもう結婚したと思ったぞ!」


「けっ結婚⁉︎姫様を差し置いて私が結婚などしません!ウィリアム様セクハラですよ!」


「様なんてつけるなよ!俺とお前の仲だろウィルでいいぞ!」


「使える主人にそんな気安くできません!ほんとにいい加減にしてください!」


兄であるウィリアムは3人兄弟の次男坊でアマリアとは1つ違いの19歳だ。小さい頃は一緒に田舎の本邸で過ごしていたが、15歳の時に騎士になりたいと騎士学校がある本土に行ってからはあまり会う機会がなかった。アマリアとは歳が近い事もあり幼馴染の関係である。


「お兄様がお迎えに来てくださったのですね!びっくりしました。」


「まーな!仕事が今日休みでな。せっかくだから引きこもりの我が妹と幼馴染の侍女を迎えに来たんだ。馬車置き場に止めてあるから行こう。荷物はこんだけか?少ないな」


アンリやアマリアの荷物は先に王都の屋敷に送ってある。それでも、船旅にしては荷物が少なかった。


「だから言いましたでしょ!姫様!もう少し荷物を持って行こうって!船旅だからって部屋に引きこもってドレスも2着だけってどうなんですか?貴族として!」


「あーあーもういいでしょ。ナイトドレスは7着持って来たんだから!」


「もう!姫様!コルセットが締まらなくなっても知りませんよ!」


これ以上責められても埒があかないと悟ったのでアンリは自分の荷物を持って足速に馬車置き場に向かってしまった。


「相変わらずみたいだなーアンリは」


ウィリアムは笑いながらアマリアの荷物を持ち馬車に向かい「ウィリアム様!荷物は私が持ちます!」とアマリアも小走りで追いかけていった。


馬車の小窓から見る王都への道のりは大変面白い物だった。自分の領地ではこんなに人が闊歩する光景はお目にかかれないだろう。

しかし、道ゆく人に紛れてこの世の物じゃない者たちも一緒に闊歩している。時には歩く人の足を掴んでは引きづられて行くもの出店の店主を真似て手招きをする者とやはり自分の領地では会えない者が多くいる。

あの者たちに引きづられて行ったら何が待ち受けているのだろう。と考えてやはり人が大勢いる場所はアンリにとって恐怖の対象でしかなかった。

人が大勢集まればあのような者達も多く集まる。形も様々で時には危害だって与えてくる。それでも見えない者たちは気づかないまま当てられるのだ。

自分は見えるし話せるがそこまでしかしない。関わるなんてごめんだ。関わったら最後何が起こるか分からない。

今回の舞踏会も王家に挨拶したらすぐに壁の花になって、過ごそう。下手に誰かと関わるとあの者たちとも関わりを持ってしまうかもしれない。

アマリアには悪いが舞踏会が終わったらすぐに帰路につこう。それが1番だ。


そうこうしているうちに馬車は港町を抜けて王都の隣町に来ていた。王都が近くなるにつれて人は活気をまして、華やかな人々が道を行き交う。


「姫様!やはり王都に近づくに連れて華やかな人がたくさんいますね!見てください!姫様!あれトレンドのドレスですよ!公爵様の奥様が去年の舞踏会で披露してから流行ったんですって!すごいですね!さすが都会ですね!」


アマリアは着飾って歩く女性たちのファッションに夢中だ。領地ではあんな煌びやか布など手に入らないし、着飾ったところでお披露目する場所がない。


「アマリアもせっかく来たんだから王都に着いたら買ったらどうだ?そうだ俺が一緒に行って買いに行こう!アマリアなら似合うと思うんだ!」

「いえいえ!そんなとんでもないです!ウィリアム様に買って頂くなんて!私もこの日のために貯金してきたので自分で買いますよ!」


ウィリアムは小さい頃からアマリアを好いているがその気持ちは彼女には届いていない。いや届いていても身分差があるからと彼女は受け止めないだろう。

ウィリアムの妻がアマリアになったら正式に自分の義姉になるからアンリ的にはいいのだが、そうするとアマリアは王都で暮らす事になるのでそれは断固拒否したいところ。


自分の我儘だがもう少しアマリアにはいてほしい。


「姫様!聞いてますか?それとも久しぶりの馬車で酔ってしまわれましたか?」

「いえ…そうではないわ。ただ外が気になるだけよ」

「やはり、領地よりこちらの方がいますか?」

「いるって?あぁなんだお化けが怖いのか?相変わらずだなあこの怖がりさんめ!」

ウィリアムはウインクしながら指鉄砲で妹を指差す。発泡された指から星が出ているように見える。


兄様もアマリアもアンリのこの能力を知っているし、2人ともとても心配してくれているのは分かるが、兄にはイラッとする。

アンリはウィリアムの指鉄砲から放たれた星を掴み窓に投げつける動作をした。


「そうね…領地よりかは数倍いるけれどどれも危害を加える物ではないわ。だけど王宮なんて初めてだからちょっと不安なだけよ。」


アンリは窓から目を離し2人に向き直って告げると、2人は微笑みながらアマリアはアンリの手を両手に握りしめ、ウィリアムはアンリの頭に手を添えながら大丈夫だと何も心配はいらないと言ったのだった。


馬車は王都に向かってどんどん進み、御者が窓をコンコンと叩きながら声をかけてきた。


「もう少しで着きます」


馬車が王都に入り、高級住宅しか並ばない路地に入り一軒の屋敷前に止まる。

「ほら、着いたぞ。父上もアル兄さんもお前を待っているぞ。」


屋敷の中に入るとまず出迎えてくれたのは我が家の家令であるウェスカーだった。


「お嬢様大きくなられまして、大変お美しくなられて、さぞ奥様とアマリアの教育が良かったのですね!」


ウェスカーは父上にずっと付いている家令なのであったのは実に10年振りだ。

「ウェスカー会いたかったわ!元気してた?奥様のミリアも息災かしら?」


「元気ですとも今日からお嬢様が来ると聞いて3日前から料理のメニューを考えて夜も眠れないと言ってましたとも。」


「まぁ!それは楽しみにしてるわ!そうだわお土産に領地のチーズとワイン持ってきたの!今年のワインは一級品よ!賞が取れるわよ!」


「それは楽しみですな!」


ウェスカーと久しぶりの再会に話ているとドタドタと貴族らしくない足音が階段から降りてきた。


「マイプリティーエンジェルルルル!!!」


騒がしい足音の人物はそう言うとアンリの脇の下に腕を差し込み持ち上げてその場でらクルクル回り出した。


「お父様!!やめてください!恥ずかしいです!やめて!!私成人したのよ!子供じゃないんですか!!」


なおもクルクル周りながらエンジェルやら世界一可愛いやらと成人した女に言うにはとても恥ずかしいことを言っている。


「下ろして!お父様!ほんとに恥ずかしいからやめて!!」


「父上、親バカも程々にしてください。見ててこっちが恥ずかしい」


そう言って扉から顔を出したのは1番上のアルバート兄様だった。

お父様はまだ物たりないと言うように中々下ろしてくれなかったが無理矢理腕から抜け出して床に降り立った。


「息災だったねアンリ。アマリアも長旅ご苦労だったね」


「そうだな。アンリこんなに大きくなって、しかもこんな美人になってパパ嬉しい」


「お父様お母様と会わないうちにどこかおかしくなったのではなくて」


「父上が頭おかしいのは今に始まったことでないだろうよ。昔から母上とアンリにはデレデレだ。俺らにもその愛情を寄越して欲しいてね」


「ほんとだねー父上は僕らには厳しいから」


「当たり前だろう。お前たちは俺に似てゴツいし繊細のかけらも無いじゃないか。それよりシリルは元気にしてるかい?最近、手紙を書いても一言か二言しか帰って来なくてパパ悲しいんだ」


父上は母上が16歳の時に舞踏会で出会いストーカーのように追いかけ回したのち結婚したそうだ。母上は父上の溺愛に胸焼けを起こすとの事で自分が領地に戻る時に一緒に戻ったのだった。


そんな父上と母上だが今時の貴族には珍しく相思相愛である。今も父上の肩には母上が、母上の周りにはいつでも父上がハートを飛ばしながら生霊として徘徊している。

しかし、そんなことは告げない言ってしまえば母上が恥ずかしくてさらに引きこもってしまう。


「大丈夫ですよ。母上は恥ずかしがりやなのです。いつも手紙を受け取っては嬉しそうに読んでますよ」


「そうか。それは良かった。シリルに会いたいが、まだ仕事が落ち着かなくて会いに行けないんだ。と言っても早くお前らが俺の仕事を引き受けて妻を娶ればいいのだがな」


父上はそういってアルバート兄様とウィリアム兄様を見た。


「父上僕はまだ勉強することがあります。女性も伯爵家に相応しい女性と縁談したいと思います。」


「俺は…まぁボチボチかな」


ウィリアム兄様はアマリアを見ながら顔をすこし赤らめているがアマリアにはその視線は届かず、ウェスカーに屋敷内での仕事について伺っている。


「ようは2人ともまだ結婚はしないってことだな」


ヴァイエル家は今時珍しく政略結婚を推奨とせず自分の伴侶は自分で決めるという決まりがあり女でも縁談を申し込まれても最終決定権は本人任せである。


というより、父も祖父も一目惚れした女をストーカーしてゲットした粘着男性だから政略結婚で好きじゃない女性と結婚させようとしたならば大変なことになっていただろう。


1番父に近いウィリアム兄様もアマリア一筋数十年。アマリアと添い遂げることを夢見て今日も伝わらない恋心を一心に向けているのだ。


きっとアマリアがウィリアム兄様以外と結婚したならば最悪その相手の明日は無いだろう。


それとは別に領地が広大であり、この国の農作物の収益は我が領地が5割をせしめているからである。


別に位の高い家柄と結婚してもその相手が伯爵家を害する者なら受け入れないのだ。


「アンリも成人したらすぐ結婚じゃなくていいからね。」


自分で言うのもなんだが、恵まれている。恵まれすぎている。


「はい、父様。ずっと領地で兄様達がいない間領地経営しますわ。もし奥さんができても領地のどこかに引っ込んで自然豊かな土地で暮らしますわね」


アンリは微笑み父親の対応をみて心底ホッとした。


「うん!うん!娘の笑顔が見れただけで幸せだよ!ずっといてね!」


「はい!お父様!」


父と娘のそんな会話を聞いていた兄2人は妹の将来を案じるのだった。


ヒーロー出てくるまでが長い

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