1-1 ファルヴァレン帝国編
街の中心部に城があるファルヴァレン帝国。街の治安は見回りをする帝国軍の兵士のおかげで安定している。
そんな帝国へ任務で行くことになったリクトであるが、どうも帝国に入るまでにひと波乱があるようだ。
「ファルバレンに行ってこい」
始まりはその言葉で、期間の指定はなかった。
別に何をしろと言われたわけではないので自由に動いていつものようにその国についていろいろと調べればいいのだろう。
「ファルバレンってあの帝国の?」
リクトが首を傾げて聞くとすぐにそうだという返事が返ってきた。
「追加の任務は後々伝えていく」
「・・・うげ」
リクトの上司であるディルバの仕事の進め方は、とりあえず街に行かせて街に慣れさせた後からいろんな任務を付け足していく方法。行けと言われた段階では後からどんな任務が来るのかがわからないため安心ができない。
「・・・あぁ、そうだ。帝国に入る前に近隣の反帝国軍に入っておけ」
ただし、今回は最初から面倒くさそうだ。
「組手開始!」
真っ青な空の下でスピーカーからの開始合図とともに動き出す人。反帝国軍の入隊テストの一番最後の対人戦のトーナメントだ。ここまで来るのに入隊希望者が386人だったのに対して、今では40名までに減っている。
(ど素人ばかりだったから仕方ないか)
トーナメントもベスト4を決める戦いのみとなっており、今その戦いの開始が告げられた。
「よっと・・・」
目の前で振り下ろされる木刀。それを横に体をすっと移動させて回避し、一定の距離を保つ。
このリーグ戦で使う武器は木刀一本で魔法等の使用制限はない。しかし多くの人がここまで来るのに魔法を使わずにいる。いや、大半の者が魔法を会得してないだけかもしれないが。リクトもその例にならってここまで魔法を一度も使わずに勝ち上がってきた。
ひょいひょいと相手の攻撃を身軽な動きで回避し続けながらリクトはため息をついた。普段のレムナスでの鍛錬のせいか相手の剣がまるで止まっているかのように見えてしまう。例えば、相手が今振り下ろしてきている剣に自分の剣をそっと当てて剣の軌道を斜めに受け流せば相手はバランスを崩す。
「・・・くそっ」
しかし相手は流石というべきかここまで勝ち上がってきただけあって、素早く体制を直して距離を取るためにバックステップで後ろに下がった。
「遅い」
相手が下がった瞬間、リクトは脚で強く地面を蹴り開きかけた間合いを一気に詰め、木刀を横一線になぎ払った。
相手が息を詰める音と地面に落ちる音を同時に聞きながら相手に戦意がないことを確かめて、リクトは係員に木刀を渡した。
「次は決勝戦です。試合は10分後に開始されますのでA会場へ移動してください」
「ん。わかった」
正直つまらない。とリクトは思っている。もしこれが任務に何も関係のないことであればこんなところには絶対にいなかっただろう。今の対戦相手ももし使っていた武器が木刀ではなく真剣であれば命を落としていただろう。テストだから木刀というのは仕方ないと思うが緊張感が全然ないため、少しも面白くない。
「次の対戦相手はお前か?」
この男に話しかけられる前まではそう思っていた。
「たぶんな」
身長は男からすれば平均より少し上くらいだろうか、それでもリクトからすれば長身に見える。(リクトの身長は150半ば)
男から放たれる静かな威圧感がそこらにいる人とは別格だということを教えてくれている。
「決勝戦。楽しみにしているぞ」
男はそれだけで去っていったが、リクトは静かに息を吐き出した。
「・・・こりゃぁ、少しは気を引き締めないとな」
会場に入るとそこに用意されていた木刀を手に取り所定の位置に立つ。相手の男は既に準備を終わらせていた。
「名前を教えてくれないか?」
「自分から名乗るのが礼儀じゃないのか?」
指先で木刀の柄を回しながら答えたリクトを見て男が少し笑う。
「失礼。俺はレウスだ」
「僕はリクトだ」
「これより決勝戦を始めます。・・・試合開始!」
リクトがそう答えた瞬間開始の号令がかかる。その瞬間、会場が無音の威圧感に覆われた。
剣を構えたまま無言のプレッシャーを放つレウス。反対にリクトは剣を下ろし脱力した状態。
「さぁ、楽しませてくれ」
沈黙を破ったのはレウス。呟くのと同時に一気にリクトに距離を詰めた。その速度はさっきまで戦ってきた人たちとはけた違いの速度だ。
「はあっ!」
勢いを殺さず、さらに脚を踏み込んでから放たれる横薙ぎの一閃。
思わず剣でガードをしたリクトであったが、相手の勢いに押されて体が宙に浮いた。
「なんつぅ馬鹿力だよ・・・」
空中で回転して体制を整えたリクトが少し痺れる腕をさすりながら呟いた。
「あれを耐えたのか」
地面を蹴って宙に飛び上がってきたレウス。
「力負けはしたけどな!」
お互いが振るった木刀が重なり合い、鈍い音が聞こえてきた。
一度お互いに距離をとって着地し、一気に距離を詰めて何度も何度も切り合う。
「・・・!」
攻撃の中、はっとリクトが顔を上げてその場から後ろに下がる。
するとさっきまでリクトが居た場所を風の刃が通り抜けた。
「魔法か。なら・・・」
にやりと笑みを浮かべるレウスにリクトは目を細めた。
今の魔法は魔法を使ってこいという挑発目的だろう。ならばここは大人しく挑発に乗ることにするか。
「後悔させてやる」
「後悔させてやる」
その言葉とともに発動される魔法。何年もかけて洗練された魔法が会場を包み込む。
「よし。お前明日から暗殺部隊の隊長でもやってみろ」
いきなり告げられた言葉。
反帝国軍での暮らしは長くはなく、ついに反帝国軍の一員としてファルヴァレンの中に入っていく。
◆ ◆ ◆
おはようございますこんにちはこんばんはみなさんお元気ですか?
のんびり書いてます
これからもよろしくお願いします




