1-0 始まりの記憶
全ての始まりは神との対話。
人生が大きく変わったリクト。
レムナスでの活動。
多くの謎が少しずつ明らかになってゆく。
いつから村の中心にある寺にいることが多くなったのかはもう覚えていない。5歳になる前からずっとこの場所に来ていたことだけは覚えている。毎日のように自宅からここまで歩いてきて、祈りの間にある祈りのための台座に鎮座して胸の前で手を組んで目を閉じる。そうすると頭の中に不思議な声が聞こえてくる。
『我が声を聞きし者。汝は何を望む?』
―――私が望むのは母上や父上、妹とずっと暮らすこと
何度も同じ問をされ、何度も同じ答えを繰り返す。これだけなのだが、寺にいる巫女たちにとっては神と対話できていることがすごいらしい。自分からすれば当たり前のようなことではあるが。
『汝、名はなんと言う?』
あるとき初めて別の質問をされた。いきなりのことで驚いて頭が真っ白になったが、一度大きく息を吸い込んでから神の問に答えた。
―――私の名前はリクト。リクト・ディバイス
今思えばその時が自分に大きな変化を与えたのだろう。
神の声を聴き、神の意思に答え、自分の意思に沿って動く神の代執行者。『戦巫女』
神の力を持って戦いを沈める。そういった役割も持つ。だが、戦巫女としての大きな使命は神の予言を守る事。つまり、神の予言を覆し世界に破滅をもたらそうとする者の排除。
それを達成するためにはかなりの実力をつけなければならないことは明白。
神の力を使う『神降し』だけでなく、武器や魔法の扱いも身につける必要があるだろう。
特に自分の体は。
故郷である村が消える原因となった戦争で、リクトは8歳にして村一つとその周辺を巻き込むほどの強大な力を発動した。その反動で一時的にリクトは衰弱し、一度は命を落としかけた。が、この時にレムナスの創立者であるディルバ・レストバースに拾われ、レムナスで保護されたことにより危険な状態を脱した。
しかし、後遺症としてかリクトは肺の一部がかなり弱ったままになってしまった。しかし、ディルバの魔法のおかげでよほどの無茶をしない限りは普通に生活ができ、戦闘もできる状態までなった。さらに神降しも少しなら扱うことができる。
「にしても、アイズはよくあの時無事だったなぁ」
レムナスの拠点にある自室でリクトは幼馴染に息を吐き出しながら言った。
「爆発に巻き込まれる直前にディルバさんに拾われて安全な所に移動してたの」
ころころと笑うアイズ。種族は天使。天使でありながら忌子として天使界から追われた身で、リクトが弱っているアイズを見つけ家に連れて帰ったことがきっかけでずっと一緒にいるのだ。
「場所っていうか別次元だろ?」
「安全なことは同じでしょ?」
異次元魔法。元の世界とは違う次元を行き来したりする魔法。レムナスの拠点はその異次元の中に作られている。そのためレムナスの存在を知る者は多くはない。
レムナスに所属してから一番最初に叩き込まれた高難度魔法である。
リクトが起こした爆発に巻き込まれる直前にディルバとともに異次元空間に逃げ込んだから無事でいられた。という説明にリクトは納得して立ち上がった。
「リクト、体調は?」
「んー。大丈夫だと思うよー」
「人事みたいに言わないの」
「はいはい」
「はいは一回」
「はーい」
「伸ばさない」
「・・・はい」
お前は母親か何かかとリクトは小さく呟いた。
いつもの日常。任務に行かない限りは基本拠点の中で過ごしているレムナスのメンバー。
今日も何をしようかなと思った矢先、ディルバからあることを言われる。
次回『ファルヴァレン帝国編』




