第一話:路地に置き去りにされた子供
はじめましての方も、お馴染みの方も、お越しいただきありがとうございます!作者のティラピア池です。今日も皆様に楽しんでいただけるよう、気合を入れてお届けします!
その日の朝。
日差しはまだ弱く、簡素な部屋のカーテンの隙間から、そっと差し込んでいた。
僕はふらつく小さな体で目を覚まし、両足に力を込めて立ち上がろうとしていた。
一歩。
二歩。
三歩——。
よろめいて倒れかけた瞬間、母の温かい手が僕を支えてくれた。
「ヒカルが歩けた! 見て、歩けたわ!」
母は笑いと涙が入り混じった声で叫んだ。
父は戸口に立ち、目を細めるほど大きく微笑んでいた。
「さすが俺たちの子だな」
そう言って、僕を高々と抱き上げる。
何がそんなに嬉しいのか、幼い僕にはまだよく分からなかった。
でも、つられて笑ってしまった。
あの時、僕は嬉しさのあまりお漏らしをしてしまい——。
父はただ大声で笑いながらこう言った。
「さすが俺の息子だ。飛びながらでも用を足せるとはな!」
あの朝の最初の一口も、覚えている。
母がゆっくりと冷ましながら食べさせてくれた、温かい粥。
その後にコップ一杯の水。
僕たちの家は小さくて質素で、壁に貼られた家族写真と、いつも部屋に漂う母の料理の匂い以外には、何も特別なものはなかった。
それでも僕にとっては、完璧な世界だった。
あの何気ない瞬間。
あの温もりこそが——家族が揃っていた、最後の記憶だった。
すべては、瞬きする間に変わってしまった。
五歳になったばかりのある日。
父と母の顔が突然、真っ青になった。
二人は幼い僕にはとても理解できないほどの速さで動き出した。
父は無言のまま僕を抱え、家を飛び出した。
急ぎながらも、足音を殺そうとしている。
母はその後ろを歩きながら、何度も——いや、誰かが暗闇に潜んでいるかのように——通りを振り返っていた。
二人は僕を、古びた建物の間にある狭い路地へと連れて行った。
湿った空気とゴミの臭いが入り混じる、薄暗い場所だった。
「ヒカル、よく聞くんだ」
父は僕の高さに合わせて膝をつき、囁いた。
肩を掴む手が、震えていた。
「ここでじっとしているんだ。何があっても出てくるな。分かったか?」
僕は頷いた。
よく理解できないまま。
母は僕を強く、痛いほど強く抱きしめた。
まるで、それが最後の抱擁であるかのように。
「ヒカル、大好きよ」
母の声は、涙で震えていた。
そして二人は去っていった。
僕を暗い路地に、一人残して。
僕は言われた通りにした。
じっと黙って、濡れた段ボールの陰に隠れ、自分の膝を抱えた。
しばらくして、母の悲鳴が聞こえた——夜を切り裂くような悲鳴。
今も耳から離れない、あの悲鳴だ。
続いて父の叫び声。
抵抗する音。
物が叩きつけられる音。
そして——銃声。
何度も。
鋭く、耳をつんざくような音。
その後は、静寂だけが残った。
僕は声を殺して泣いた。
自分の手で、自分の口を塞ぎながら。
動くことも、考えることも、怖すぎた。
どれくらいそこにいたのか、分からない。
気づけば僕の足が勝手に動き出し、全身が拒否しているのに、隠れ場所から一歩を踏み出していた。
そこで、僕はそれを見た。
父と母が、地面に倒れていた。
血はすでに端の方から乾き始めていた。
二人の目はまだ開いたままで、まるで暗闇の中に僕の姿を探しているかのようだった。
僕は叫ばなかった。
もう泣くこともなかった。
あったのはただの空虚さ——それが次第に、胸の奥で熱く渦巻く何かへと変わっていった。
憎しみ。
怒り。
幼い僕には重すぎる二つの感情。
それでも不思議なほどはっきりと、僕はそれを理解していた。
僕は背を向け、両親の亡骸を残して歩き出した。
二度と完全には癒えない傷を抱えたまま。
翌日、僕はあの場所の近くへと戻った。
理由は自分でも分からない——もしかしたら、全部悪い夢だったのではと、まだどこかで期待していたのかもしれない。
だが見つけたのは、警察車両の列と、現場を囲む黄色いテープ、そして忙しく現場検証をする制服姿の人々だけだった。
僕はただ遠くから無言で立ち尽くし、すべてを無表情に見つめた後、背を向けてその場を離れた。
その日から、路上が僕の家になった。
最初はきつかった。
本当にきつかった。
橋の下で迎えた最初の夜、僕は寒さに震えながら丸くなり、腹の音が自分の運命に抗議するかのように大きく鳴っていた。
だが人間というのは、どんなことにも——たとえそれが苦しみであっても——不思議と慣れていく生き物らしい。
僕はゴミの山から食べ物を探すことを覚えた。
まだ食べられるものを選び分けることを。
日雇いの仕事も覚えた——荷物を運んだり、屋台を掃除したり、大人が小銭をくれるならどんな仕事でも。
ゲンゾウさんという年老いた行商人がいて、よく売れ残りの半分を僕にくれながらこうつぶやいた。
「こんな小さい体でろくに食べないなんて、これじゃあ将来のヒーローになれないぞ」
ヒーローが何なのか、僕には分からなかった。
でも、いつも礼儀正しく頷きながら、渡されたものを何でも平らげた。
どれほど少ない報酬でも、僕は決して不満を言わなかった。
得られたものに、いつも感謝していた。
ある日、僕と同じくらいの——いや、もっと幼いかもしれない——別の子供を見かけた。
その子の体は僕よりも痩せ細り、服はもっとぼろぼろで、目は僕が寝床の近くで見た割れた鏡に映る自分の目よりも、さらに空虚だった。
その子を見て、なぜか僕はさらに感謝の念を強くした。
自分の苦しみは分かっている。
でも、常に自分よりも苦しんでいる誰かがいるのだと、そのとき知った。
そんな日々が続いた。
生き延び、働き、感謝する。
そしてある夕方、すべてがまた変わった。
その夕方、空は紫がかった橙色に染まっていた。
僕はちょうど、ゲンゾウさんの屋台の片付けを手伝い終えたところだった。
その日の報酬はパン一切れ分にしかならなかったが、僕はいつものように薄い笑みを浮かべてそれを受け取った。
「気をつけて帰るんだぞ、坊主」
ゲンゾウさんはいつものように手を振りながら言った。
歩道を歩きながら、昔からの癖で歩数を数えていた——一、二、三、四。
「家」(実際には橋の下でしかなかったが)へ帰る道が少しでも寂しく感じないようにと、自分で作った小さな遊びだった——。
そのとき、誰かが僕の目の前でぴたりと足を止めた。
僕は顔を上げた。
背が高く、がっしりとした体格の男だった。
鋭い眼光を持ちながらも、なぜか脅威は感じさせなかった。
髪はところどころ白くなり始めていたが、その姿勢はまるで、長年最前線に立ち続けてきた者のようだった——背筋がやけにまっすぐで、まるで曲がり方を忘れた電柱のようだった。
暗い色の長いコートを羽織り、質素ながらも整った身なり——路上でいつも見かける人々とは、明らかに違っていた。
靴までぴかぴかに磨かれていて、そんなもの久しく見た覚えがなかった。
男はしゃがみ込み、僕と目線を合わせた。
近くで見て初めて気づいた——顎に細い傷跡が一筋残っていて、しゃがみ方さえも、普通の人にしては妙に姿勢が良すぎた。
まるで骨自体が、リラックスの仕方を忘れてしまったかのように。
「一人か?」
低いが、荒々しくはない声だった。
僕は黙っていた。
いつものように警戒しながら。
悪意を持って近づいてくる大人を、僕はこれまで何人も見てきたから——誘拐しようとする者もいれば、報酬なしで働かせようとする者もいた。
路上の本能が、簡単に人を信じるなと教えていた。
「歳はいくつだ?」
彼は動じることなく、再び尋ねた。
まるで、僕よりもっと無口で頑固な人間を相手にすることに慣れているかのように。
「……五歳」
ようやく、小さな声で答えた。
「名前は?」
「ヒカル」
「ヒカル、どこに住んでいる?」
僕はうつむき、答えなかった。
橋の下が今の僕の家だなんて、どう説明すればいいのか分からなかった。
口に出したら、なんだか間抜けに聞こえる気がした。
彼は急かすことなく待った。
不思議なことに、急いでいる様子さえなかった。
まるで彼の周りだけ、時間の流れがゆっくりしているかのようだった。
そして最後の質問が、先ほどより静かな声で投げかけられた。
「お前の両親は……どこにいる?」
その問いを聞いた瞬間、胸の奥で何かが砕けるのを感じた。
僕は唇を噛みしめ、この見知らぬ男の前で泣かないよう、必死に耐えた。
「もう……いない」
ようやく絞り出した声は、ほとんど聞き取れないほど小さかった。
男はしばらく黙り込んだ。
鋭かった眼差しが、和らいでいく。
だがそこには、憐れみとは違う何かがあった——理解、とでも言うべきものだ。
まるで彼自身も、同じような何かを失ったことがあるかのように。
「そうか」
彼は僕にというより、自分自身に向けてつぶやいた。
しばらく考え込むように黙り込んだかと思うと、突然、自分の膝を大きな音を立てて叩いた。
あまりの音に、僕は少し飛び上がってしまった。
「よし。俺の名はアラリック」
ようやく彼が口を開いた。
「アラリック・シロガネだ。周りからは大佐と呼ばれている——もっとも、もう退役しているから、その呼び方はとっくに意味を失っているんだがな。それでも皆、頑固にそう呼び続ける」
何を言っているのか完全には理解できなかったが、その声にはどこか冗談めかした響きがあって、なぜか——あの夜以来初めて——僕は笑いそうになった。
彼は手を差し出した。
大きく、ごつごつとした手のひら——長年の労苦を物語る手だった。
「一緒に来るか?」
僕はその手を、長い間見つめていた。
路上で培った本能が、警戒しろ、疑え、逃げろと叫んでいた。
だが、それよりもずっと深いところにある何か——単なる生存本能を超えた何か——が、僕の手をゆっくりと持ち上げさせ、彼の手を掴ませた。
「途中で気が変わったら、そう言えばいい」
彼は立ち上がりながら、僕を導くように歩き出した。
「無理強いはしない。だが先に言っておくが——俺の家はちょっと散らかっている。本と得体の知れない道具が至る所に転がっているんだ。もし妻がいたら——いや、仮に妻がいたとしたらの話だが——とっくに小言を言われているだろうな」
僕は困惑した顔で彼を見つめた。
何と返せばいいのか分からなかった。
この大人、変な人だな、と思った。
でも、なぜかその「変」が、不思議と心地よかった。
その時の僕は知らなかった。
あの夕方、見知らぬ男の手を握るという小さな決断が、僕の人生すべてを変えることになるとは。
アラリック・シロガネという男が、ただ通りすがりの親切な人間などではなく——各国で尊敬される、元高位軍人にして天才科学者であり、世界各地に隠された拠点を持つ人物であったことも。
だが、それはまだ先の話だ。
今の僕が知っているのは、ただ彼の手のひらの温もりと、彼の歩幅が大きすぎて半分走るようについていかなければならないことだけ。
そして、あの恐ろしい夜以来初めて、僕はほんの少しだけ——安心を感じていた。
「そうだ」
彼は振り返りながら、何か大事なことを思い出したように言った。
「お前、何が好きだ? 俺は三品しか作れないが、どれも味は似たり寄ったりだぞ」
僕は答えなかった。
だが久しぶりに——本当に久しぶりに——笑いたい気持ちになっていた。
だが、その小さな笑いが唇からこぼれ落ちるよりも先に——。
エンジン音が、それも一つや二つではなく、何台分もの音が同時に、静かだったはずの通りを埋め尽くした。
アラリックの足が止まった。
彼と出会ってから初めて、あの穏やかだったはずの瞳の奥に、何かがよぎるのを僕は見た。
恐怖ではない。
警戒だ。
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