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不完全な契約魔法を結んでしまった相手は甘えたがりで甘やかせたりな魔女でした  作者: 水永 有軌


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第一話

 あるところに世界に魔法を与えた九人の魔女様がいました。

 魔女様は私たちの生活を発展させてくれる魔法を教えてくれました。ですが、魔法とは別の科学が発展したこの世界で、魔法は悪だと訴える人たちがいたのです。

 魔女たちから魔法を教えてもらった者達を筆頭に、魔法こそが新しい未来だと考えた魔法派の人々と、今まで通りの科学が今後の未来だと考えた科学派の人々で、大きな争いが起こりました。

 結果は科学派が勝利し、世界は今まで通りの生活を取り戻しました。ですが、魔女が与えた魔法は今でも残り続け、世界を混乱させているのです。

 そこで世界の国々は、魔法を与えた九人の魔女を、世界に大きな混乱与えた悪とし、その魔法を使う者達もまとめて悪だと宣言したのです。

 そして出来たのが、あなたのパパが働いている、世界魔法執行機関なのです。


『パパは世界のために働いているの?』


 そうよ、パパは悪い人たちを捕まえるために働いているの。


『じゃあ、僕も大きくなったらパパと同じ仕事をする!』


 あら。パパが喜ぶわね。

 けど、忘れちゃいけない大切なことがあるの。


『忘れちゃいけないこと?』


 そう。悪いことをすると魔女様がやってきて、あなたのことをどこかに連れて行っちゃうわ。


『なら、その時に僕が魔女様を捕まえるんだ!』


 ふふ、そうね。けど忘れないで。魔女様はいつでも、私たちのことを見ているわ。

 昔、母さんから教えてもらった魔女のお話。

 子供たちに悪いことをさせないようにとできた昔話、なぜ今になって思い出すんだろう。目の前にいる少女が、この記憶を思い出させた原因なのだろうか。


 ⁂


 一歩踏み出すごとに、床に散らばったガラス片が割れる音がする。

 俺が今いるのは廃病院、本来ならば単独任務などありえないが俺の場合は例外だ。

 任務の内容はこの廃病院内でする異音の調査。

 今のところ異音は聞こえないがこの病院はとても広い、奥の方まで調査しないとまた文句を言われそうだ。

 歩きながら周囲を見回しても特におかしなところはない。病室に採決室、それに上と下にそれぞれ続く階段があって……

 ん? 下に続く階段?


「俺がいるのは一階だよな」


 壁に描かれている数字を見てもその数は一で間違いない。つまり、この廃病院には地下室がある。


「一度報告をしに戻った方がいいか」


 本来ならばパートナーがいるため、相方に相談しに行くのが最善だ。だが俺にはパートナーがいない、そのため自由に行動を決めることができる。


「よし、降りよう」


 俺は腰に着けていたライトを手に持ち、服装内に銃があることを確認して階段を降りてゆく。

 階段を降りていくと途中で足が動かなくなる、何者かにこれ以上進むなと警告されているような気がする。

 だが俺はそれを気にせずに降りようと足を動かそうとしてみる。今の俺が死んでも誰も困る人はいないのだ、ならば俺は俺がやりたいように行動する。

 その信念で俺は足を無理やりにでも動かし、階段の一番下まで降りてきた。

 目の前に現れたのは廃病院らしからぬ一枚の扉。

 扉の先からただならぬ気配を感じる。これが最終警告だぞと訴えかけてくるように。

 それでも俺はそれを無視して、扉についているドアノブをひねり、扉を開ける。

 その先にあったのは廃病院とは言えないようなおしゃれな空間で、その空間内でとある少女がベットに寝転がり眠っていた。少女の身長は低くまだまだ成長しきっていない子供のようにも見える。

 一見ただのかわいらしい少女にしか見ることができず、その少女から先ほど扉の前で感じた気配を、感じ取ることは出来ない。俺はその少女に少しずつ近づいてゆき、少女に向かって手を伸ばした。

 その瞬間俺の頬から血が垂れた。

 目の前にいたはずの少女の姿はなく、俺の背後からただならぬ気配を感じる。


「おまえ、何者だ」


 声から感じられる殺気。今にでもお前のことを殺すことができるぞと声だけで感じさせる。きっとこの声は先ほどの少女なのだろう。


「おい、質問に答えろ」


 俺の首筋に冷たい何かが当てられる。ナイフなどの凶器ではない、だがそれと似たような者が俺の首筋に今当たっている。さすがにこのままいくと俺はこの少女に殺されてしまう。

 俺はゆっくりと口を開け、質問に答えることにした。


「俺は……世界魔法執行機関日本支部所属、宮成みやなりれい

「宮成……あの男の息子か」


 名前を口にした瞬間少女は俺の首に当てる何かをさらに押し付けた。首からは血が垂れてきており、いつ首が飛んでもおかしくない状況だ。


「なぜおまえはここに来た」

「任務だ。この廃病院から妙な音がすると、通報が来たんだ。そのための調査に来た」

「どうやってこの部屋に入った」

「階段が下に続いていた、そこを降りていたらこの部屋にたどり着いた」

「正規の道で来ただと……あの道には魔法が……」


 少女は俺に聞こえるか聞こえないかぎりぎりの声でつぶやいた。だが俺は聞き逃さなかった。この少女が魔法と言ったのを。

 少女が驚いた瞬間にできた一瞬の油断。この一瞬に俺は自分の命を懸けた。

 首に当てられていた何かに対し肘を上げ、首からずらす。膝を軸にし、少女がいるはずの後方に体を向けながら、服の中にある銃を取り出す。

 時間にして一秒もかかっていないだろう、少女に向けて銃を打ち込んだ。だがその弾は少女に当たることはなかった。


「なっ!」


 少女は避けたわけではない。俺が打った弾が少女のことを避けたのだ。

 少女は驚いた顔をしながらも、一瞬手を横に振る。

 階段を降りるときに起きたものが今、この少女によって俺の体に異変を起こされた。

 少女の顔は怒っているように見える。俺が動いて攻撃をしたことに怒っているのだろうか。


 俺はこの時改めて、自分の死を覚悟した。



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