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アルバム

卒業生の写真には写らず、イベントの写真にのみ写っている女性が居た。


 銀髪の美少女、名前は秋月 望。



 その写真には、文芸部の部室でお姉ちゃんと共にいる姿があった。


 気がついたら、駆け出していた。



 隣の部屋をノックする。



「なに? どうしたの?」



 返事を聞き終わる前に、俺は詰め寄った。



「ふ、文君! そういうのはダメだって……」


「秋月 望って知ってるか?」



 何やら話していたが、俺の言葉を聞いて静かになる。


 そして、小さな声で。



「望のこと、なんで知ってるの?」



 と、驚いた表情をしていた。


 そうなると、俺の考えは根底から覆される。



 望は妄想なんかじゃなかった。生きた人間だった。



「望は、この世にいるのか?」


「いるもなにも……一年前から、寝たきりだよ」



 どういうことだ。俺の脳が思考に追いつかない。



「一緒に部活を設立して、そこから一ヶ月後に……事故にあったんだ」



 お姉ちゃんの目は、遠くを見ている。


 その瞳は愁いているように見えた。



 俺は、ゆっくりと頭を捻る。そして



「ごめんこんな時間に」



 そう言い俺は、部屋に戻った。



「だとしたら、あいつはなんなんだ」



 俺の目にははっきりと見えた、聞こえた。


 完全に自立していたし、外見もこのアルバム写真にそっくりだった。



 そして色んなことがあった。バンドをしたり、小説を見てもらったり。


 俺を外に出して邪魔もした。



「……」



 そうだよ。別に、あいつの事なんてどうでもいい。もう夏休みは半分をきってる、時間だって無い。


 かまってる暇なんてないんだよ。



 パソコンの前に立ち、執筆用のソフトを開く。



「ん、あれ? 半分?」



 ふと、思い出した。


 あと半分しかない。この夏休み、ずっと執筆を行ってきた。



 やってないことが、あるような。


 忘れてはいけない物があったような。でも思い出せない。



 何か怖くなって、鞄の中を覗く。



「……やべぇ」


 本当に馬鹿だ、俺は。


 執筆の事ばかりに頭がいって、全く夏休みの宿題をやってなかった。



 鞄にたんまりと詰まったプリントと、課題の束。



「だけど、書かねぇと……」



 だが、この状態。どうしても宿題のことが頭をちらつかせる。



「くそっ……二、三ページやった振りをしておくか……」



 適当にプリントを掴んで広げる。


 え、なんだこれ。



 驚きの光景で目を見張る。


 宿題は全て終わっていた。とても綺麗な字で。



 全て掴み、並べる。そのどれもがほぼ終わっている。


 俺はやっていない。こんな事が出来るとしたら、ただ一人。



「……望」



 今思えば、外に放り出したあの日。望は宿題をやってくれていたのかもしれない。


 だとすると、部屋が荒れていたのも本当に掃除をするため?



 そういえば、文芸部当初の部屋も汚かった、根本的に片づけが下手なのか……。



「なんで黙ってたんだよ」



 体の芯が熱くなった気がした。


 自分の不甲斐なさとか、望への申し訳なさ、色んな感情が暴走して俺の心が軋む。



 気がつけば、夜の住宅街を駆けていた。


 まだ少し寒気がする暗闇の中を必死に走る。



「望! どこにいるんだ!」



 望は不確かな存在じゃない。確かに俺の前で、話して動いて、笑っていた。


 確実にいる存在だ、あいつに正面きって話をしなければ気が済まない。



 通学路や、学校帰りに寄った場所、望と一緒に歩いていた場所を、思い出しながら俺は走る。


 だけど、少しも姿を見せない。



「はぁ……はぁ、なんなんだよ」



 息が荒くなる。


 止まることなく走り、息を吸うことを体が拒否する。



 苦しい、だけど止まりたくない。止まれない。



「あれ、文夜? どうしたの、こんな所で」



 俺の前に、明るい声が響く。


 顔を上げると、そこには柔らかな笑みを浮かべた千春。



「こんばんは、文夜!」


「……お前こそ、なんでこんな所にいるんだよ。しかもそんな格好で」



 月夜に照らされ、服装が薄く見える。巫女服のようなものを着ていた。


 手には、ひらひらした紙がついている棒。



「い、いいでしょっ! パトロールの仕事中なんだからっ!」



 頬をぷくっと膨らまし怒る千春。彼にとって服装を馬鹿にされるのは、許せないらしい。


 こんな時なのに、そんな姿に癒される。



「まぁ……頑張れ。というか、何か見つかったのか?」



 首を絞められた事件以降、割りとそういうのは気になる。


 千春は眉を引き締め、真面目そうな表情をして、うん、と頷く。



そして、


「女の子を見つけた」


 と言った。



「へぇ、すごいな。どんな子だ」


「すごい綺麗だった!」 



 そうか、そうか。幽霊を見つけたということは、お仕事をちゃんとしている証拠だな。



「それでね。ちょっと無口そうな女の子だった!」


「ほぉ……ん?」



 相槌を打とうとした瞬間、俺は引っかかりを覚える。


 なんだ、既視感というか違和感。



 何度か質問を投げかける。



「なぁ、それってうちの学校の制服を着てたか?」


「うん、着てたよ」


「しゃべり方とか分かるか?」


「少しずつしゃべってたかな。何々を、する。みたいに」


「……ふむふむ」



 俺の脳は、数少ない特徴を聞き、一つの結論に導き出される。



「……の」


「の?」


「望だああぁあああああああああ!」

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