部下に誤解をさせてしまったので辞任しますと言うべき
また間をあけてしまいました。引き続きゴールまでがんばります。
鮮やかな新緑の初夏も過ぎた頃になって、後藤三世がビジュフォンで陸奥六郎を呼び出した。
「夏休みですね。お盆は、惑星大阪の実家でお過ごしですか? こちらはお盆休みを取らなかったので、仕事漬けで、しかもめったにない残業漬けになってしまいました」
陸奥六郎がすぐに返事をしてきた。「いやー、寝盆でしたね。惑星大阪に実家はないですよ。嫁と子供は、惑星宮崎で南国満喫ですから、自分的には、久しぶりに、ある意味本当の休みを得ることができましたね。一人、惑星熊本の自分の一国一城で、昔の好きな映画をゆっくり観ていましたよ。後藤三世さんこそ、持病の仮病ライクの頭痛の調子は、如何なんでしょうか?」
「いやー、仮病なんかじゃないんですが―― あまりにマスコミの追求が厳しいと体調不良で病院に入院して、ほとぼりが冷めるまで待っているかのような心境になってしまうのですよ。夏休みも取らず、社内の監査業務の最中で毎日毎日、残業ざんまいです。寿司とかをざんまい食べられると良いのですが――
きちんと監査業務を進めないと、例えば、文書管理規程に従わないで、一ヶ月もしない内に、会議の議事録などの重要文書を『廃棄しました』とかいう輩が現れますからね。しかも、その文書を本当は廃棄せずにロッカーとかに隠していたりするので、公務員じゃなくても油断できません。ところで、肝心の頭痛を止める魔法の追求ですが、バファリンでもケロリンでも成分は一緒なんですよ。その成分は、その名も薬の王様、サリチル酸です。これは、外惑星ではアスピリンって言われていますね。この時代では当たり前の合成薬品ですが、元々の構造体は、西洋柳の皮を剥いたときの樹液に含まれる成分です。以前、なぜ、柳の皮に頭痛を治せたり、筋肉痛を和らげる力があるのか、それは―― それこそが魔法でしょ。なんて言ったと思います。今は更に理解が深まり、『サルチリ酸は、植物の防衛反応によって生じる植物ホルモンの一種、化学物質です』と真実を話すことができます」
後藤三世が続けた。「しかし、相変わらず残暑がきついですね。今日は病院に向かっているところで、今、衛星戸塚を過ぎたところです。山北まで遠いですね」
魔法については触れずに陸奥六郎が返事をした。「山北まで、病院に行ったんですか? それは、大変ですね。そんな場所の病院に行く理由はなぜなんですか」
「そこに優れた奥義を身に付けた医師魔道師がいるからです」と軽く答える後藤三世。
それには、触れずに話を進める陸奥六郎。「私の方の頭痛は、たぶん夏風邪だったと思います。頭痛薬が効かなかったので。もう、良くなりましたけど、その後なぜか、体がダルイ状態が続いてますね。夏バテになるような事してないのですが―― ただ、体力は低下してるはずです。後藤三世さんのお仕事、忙しそうですね。まあ、でも給料の為なら仕方ないですね」続けて陸奥六郎が台風について言及した。
「台風は、今朝五時頃、風が強烈でしたけど、まあ被害は・・・庭の植え込みが、少し倒れかけたくらいですね。大陸由来の化学物質の関連とは違うでしょうが、サガミハラとかカワサキとか、惑星横浜の周辺では、最近CO2排出が流行ってるようですね」
「惑星熊本の大雨、大丈夫でしたか。被害が少ないようで何よりです。ところで、前に、惑星アステロイドの品物を外惑星人相手に、どれでも千ボッタクリ円で販売する会社がありましたが、ビジネスをピボットしてしまい、惑星スペインの人形を販売する会社になるそうです。それで、ステータスは以下の通りです」と言いながら、後藤三世は、最近作成した文章のコピーをビジュフォンに表示させた。
『了解です。翻訳権は、惑星アステロイド、惑星コリアでの本の販売権とセットで交渉して下さい。ロイヤリティのパーセントも確認しておいて下さい。これはそのままでオーケーかどうかは、出版社との交渉になりますので、現段階では参考までに聞くというスタンスです。ところで、このやりとりで気づいたことがあります。本が出版できたら、本屋でも人形を扱ってくれる可能性大です。現在、出版不況なので、本屋も本以外のモノも売りたいはずです。』
後藤三世が調子づいて続けた「という具合に翻訳本の出版に向けて、ネクストビズの歯車を回し始めたところです。翻訳者は、坂本龍馬と岩崎弥太郎から名前をあやかって、『キリン太郎、惑星高知出身』にしようかと考えています」
陸奥六郎が困惑気味に。「ビジュフォンに表示された文章ですが。後藤三世さんの、いつもながらのインテリジェントブローカー風ほら吹き男爵がアレンジしたかのような作り話のようなお話を、今、まじめに読まさせて頂きましたけど、少々分かりにくかったです。その惑星スペインの人形を販売する会社が、後藤三世さんのサポートで訳本を出版して売り出す? で、ペンネームが・・・」




