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第五話 目覚めた先。

「これは、どういうこと……?」


 雪は、理解が追いつかず混乱していた。

 数分前、彼女は暗い部屋で目を覚ました。

 壁伝いに歩き、階段を登って外に出ることに成功した。

 そして、今見ている光景を――目にした。


 一面に広がる、瓦礫と死体の山。

 焼けた人の匂いと腐敗臭が鼻を衝く。

 それは地獄絵図といっても過言ではなかった。


「一体……何が起こったの?」


(確か私は異世界に召喚されて、戦に勝って……夜は普通に眠りについたはず。

 いや、そのこと自体が夢だったのか? だとすれば、ここは地獄?)


 訳の分からぬまま彷徨っていると、金属の転がる音があがった。

 雪は視線を落とした。

 瞬間、彼女の眼が大きく見開かれる。


「嘘……これって――!?」


 それは、旗であった。

 そして、その旗印には見覚えがあった。


(これ、レイファルスの……!? まさか……!?)


 雪の脳裏にひとつの仮説浮かぶ。

 そして残念なことに、それはほぼ正解だった。


「国が……滅んだ?」


 そう。

 雪が寝ている間・・・・・・・に、首都が襲われ、王宮は跡形もなく破壊された。

 国民もほぼ皆殺しにあっていた。

 レイファルス王国は、滅んでいたのだ。


「そんな……。こんなことって……」


 雪は頭を抑えて記憶を探った。

 すると、いくつかおかしな点を思い出した。


(確か、私は王宮の中で眠りについたはず。でも、目覚めたのは地下の部屋だった……。

 それに、王国が落とされるほどの騒ぎに寝てて気づかないなんて……ありえない)


 混乱した頭を抱えながら必死に考える雪。

 すると、どこからともなく男の声が聞こえてきた。


「何だ、まだ生き残りがいたのか」


 声の方に顔を上げる。

 視線の先に、黒装束の男が立っていた。

 怪訝そうな目を雪へと向けている。


「随分、ラフな格好だな。民間人か?

 どうやってここに入ったのかは知らねえが……馬鹿なやつだね」

「あ、あなたは……?」

「今から死ぬのに説明が必要か?」


 嘲笑し、男は右手を雪へと向けた。

 雪は落ちていた鉄の棒を拾い上げ、ぎゅっと強く握った。


「なら、無理矢理にでも話をしてもらいます。聞きたいことが、山ほどあるので」

「はっ! やってみろよお!」


 叫ぶと、男の指先が光った。

 刹那、電撃が発生し、雪に襲いかかる。

 雪は左右に体を捌いて、それを躱した。

 躱されてもなお、男は電撃を放ち続ける。


(直線的な攻撃じゃない分、避けにくい……。でも、これならいける)


 勢いよく地面を蹴り、雪が男の眼前へと躍り出る。

 男は一瞬戸惑ったが、すぐさま笑みを浮かべた。


「へえ……。速いじゃねえか、おい」

「……死なないでくださいね。私……手加減下手なので」

「上等だ、ゴラ!」


 雪は手にした鉄の棒を振り抜いた。

 頭を打ち抜き、戦闘不能にする――つもりだった。


 しかし――


(え……!?)


 彼女は動揺した。

 放った一撃が、男の頭上二十センチ、何もない空中で止められたのだ。

 激しい放電音が鳴り響く。

 いくら力を込めても、それより先にいかない。


「何……これ?」

「ああ? 何驚いてんだ、ただの物理障壁に」


 男は涼しい顔で雪を見やった。


(物理……障壁!?)

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