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ノーライフ・ライフ  作者: 黒留ハガネ
三章 魔力の深奥
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二十四話 魔質革命

「パリスチールを魔法研究に利用するとどうなるんですかー?」

「リアルな話をすると圧縮可能な魔力密度が38638656mpになる。パリスチールは魔力を通さないから限界まで魔力を圧縮できて想像を絶する魔力密度にできる訳だ。ましてその魔力で物質を魔化したら魔化が起こり得るあらゆる物質が魔化して大量の魔質が発見されて錬金術の発展がヤバい。パリスチールで錬金術がヤバい」

「さらにリアルな話をすると、実験の結果魔化するのは単体だけという事が分かって、今現在の技術力で単体を得られてかつまだ魔化してない元素は十八種類だから、十八+一種類の魔質が一気に発見された。それらの魔質の増産と解析が俺総動員で始まって精神的疲労がヤバい。パリスチールで俺がヤバい」

「また魔力側をリアルに説明すると、通常の圧力での限界密度は6216mp。それをパリスチールで1/6216に圧縮すると6216^2=38638656mpの結晶になって物質化する。この結晶の密度は約0.008(g/cm3)で、二酸化炭素よりは重いが、ラドン(標準状態で最も密度が高い希ガス)よりも軽い。風が吹けば飛んでく超高密度魔力結晶。結晶状態だと密度差による圧迫感は無いから扱いやすい。これも一応魔質に分類した」

「……ぱねぇー」








 という感じでパリスチール発見によって魔法学は目まぐるしい発展を遂げた。遂げた、と過去形にしたが、今も現在進行形だ。日進月歩というか日歩月走みたいな。卒論の提出ペースもヤバイ。研究員組のテンション振り切れ具合もヤバイ。お祭り騒ぎだ。

 さて、一連の動きを順を追って説明しよう。

 パリスチールの発見から間もなく、パリスチールを利用する事で魔力を圧縮できる事に気付いたんだが、これには三つ方法がある。

 まず単純にパリスチールの密閉容器で圧縮する方法。パリスチールの密閉容器を作り、中に魔力を入れて圧縮するだけの簡単な方法。

 次にフェンリウムを使った方法。同じくパリスチールの密閉容器を作り、中にフェンリウムを入れ、容器の外側から加熱する。すると容器内部でフェンリウムがダークマターを生産していき、密度が徐々に上がっていく。

 最後に真空を使った方法。真空中の魔力はランダムな方向に動き真空中から逃げていく。この時魔力は秒速数百km以上の速度で移動する。この魔力の移動先に口を開けたパリスチール容器を用意しておけば、容器内に魔力が超スピードで叩き付けられて溜まっていき、密度も上がる。ちなみにこの時パリスチール内に溜まった魔力の密度が6216mpだ。パリスチールを使った加圧をしない限界密度が6216mpなのだろう。

 これらをまとめて「パリスチール圧縮法」と呼ぶ。

 パリスチール圧縮法でチマチマ魔力密度を上げていかずとも高密度魔力が手に入るようになったので、現在単体を得られる物質を全て魔化させる事ができた。38638655.999999mpでも化合物は試した限り全て魔化しなかったから、常識的に考えて化合物は魔化しない、という事だろう。何か特殊な条件下ならば魔化する可能性が無いでもないが。

 新しく発見された魔質と、その概要は以下の通りである。




【元素名(魔化密度-原子番号)→魔質名】

 性質


【マグネシウム(24-12)→ミシディア】

 エーテルは通すが、dmは通さない。光沢のある銀灰色、金属のよう。

【ケイ素(28-14)→ブルーメタル】

 dmは通すが、エーテルは通さない。群青色、金属のよう。

【リン(30-15)→ムスペリウム】

 dmを吸収して熱エネルギーに変換する。色は紅蓮、硬く、脆い。

【硫黄(32-16)→メファイト】

 若草色のクリスタルのような魔質。微弱な電気信号を発し、勝手にランダムに魔法を構築し、使う。

【塩素(34-17)→ハオマ】

 金色の液体。特定の魔質と結合し、主に影響範囲を拡大させる。

【アルゴン(36-18)→アムリタ】

 水のような液体。接触した魔質から魔力を分離吸収し、物質に戻す。接触した擬似物質の残り存在時間をゼロにする。

【カリウム(38-19)→エンハンサイト】

 黒い液体。特定の魔質と結合し、オドを全て変換させる。

【カルシウム(40-20)→メタモリウム】

 最初に触れた魔質と同じ性質を持つ。水銀に似た魔質。

【チタン(44-22)→ゴースタイト】

 魔法を透過する。禍々しい暗赤色で、硬度が高い。

【鉄(52-26)→アダマンティウム】

 光沢のある緑色の金属のような魔質。魔力を拡散・変質させずに伝導保持する。

【銅(58-29)→オリハルコン】

 金色で、硬度と強度は鋼鉄と同程度だが、魔法による変質変化に高い耐性を持つ。

【亜鉛(60-30)→ドヴェルギウム】

 灰色の石のような魔質。限界魔力密度(60mp)での加工が容易。それ以下の魔力密度の時は非常に変形しにくく加工は不可能

【銀(94-47)→ミスリル】

 見た目は銀から変化しない。自身の内部とその周囲の空間のあらゆる魔力構造を破壊する(魔法を消す)

【スズ(100-50)→タルコフ】

 水晶のような透明な結晶体。周囲の魔力に応じて色が変わる。

【白金(156-78)→マテリア】

 寒天のような半透明の魔質。よく伸び、ちぎれにくい。内部で魔法を使おうとするとその発動はキャンセルされ、発動しようとした魔法を記録し結晶化(硬質化)する。電流を流す事で記録状態が解除され、記録されていた魔法が発動する。

【金(158-79)→ヒヒイロカネ】

 劣化変形しない。魔法による変化に弱い。緋色の金属のような魔質。

【水銀(160-80)→賢者の石】

 紅い石。自動的に周囲の魔力を集めて帯び、密度を160mpまで高める。

【鉛(164-82)→トラペゾヘドロン】

 黒い結晶体。魔力を記録し、同じ魔力を記録したトラペゾヘドロン間で記録されたものと同質の魔力の輸送ができる。




 ミシディアの密封容器の内外に俺を置くと、ダークマターの出し入れはできないが個体間の情報通信はできる。

 ブルーメタルの密封容器の内外に俺を置くと、ダークマターを出し入れはできるが個体間の情報通信はできない。

 大雑把に言えば上記のような理由からダークマター粒子は魔法的な情報伝達粒子でないと考え、ダークマターではなく、観測できない「理論上は存在するはず」の情報伝達粒子を「エーテル」と定めた。エーテルは基本的にダークマターと同一空間に存在するが、フェンリウムが生産するのはダークマターのみで、エーテルが無から出現する事は無く、ダークマターと同一空間でなければ存在できない訳でもないようだ。

 ダークマターが手紙で、エーテルが飛脚とでも考えておけば大体OK。喩えが古い上にイマイチ上手くないが。

 またダークマターと魔力の定義についても煮詰めなければならなくなってきたため、少々変更。

 dmをオドが満タンのダークマター、dm'をオド量が減少しているダークマターとする。単純に「魔力」と表記する時は八種類が平均的に混合された魔力を指し、YYY型やYNY型などの特定の種類の(成分が偏った)ダークマター、もしくはそれから成る魔力を指す場合は「YNNdm」「YYY魔力」などとそれと分かる表記方法をする。

 で、さっそくこの表記と概念、新発見の魔質を使った論文が幾つも出た。ナナニカによる「魔化同化関連考察」を一例としてあげてみよう。


一、


 フェンリウムによって生産されたdm'で魔化は起きない。エーテルが無い空間でもオドを充填してdmになれば魔化は起きる。ダークマターが物質に同化して魔化が起きているならdm'の状態でも魔化するはずで、オドが物質に影響を与えて魔化が起きているなら魔化後にダークマターを観測できなくなるのはおかしい。従ってダークマターがオドを保有する状態で物質と同化している、という認識が最も正しいと推察される。

 なお、この時オドは「消費」されていない。

 dm'とdmでは挙動が違う上、dm'をパリスチール圧縮法でマナ結晶にすると、38638656mpで結晶化するが、圧力を下げると途端に結晶化が解除されて魔力状態に戻る。dmのマナ結晶ならば結晶化後の圧力は関係なく結晶化したままになるため、dmとdm'では明らかに性質(この場合はdm間の結合力か?)が異なる。即ちオド量で示す性質が変化するという事である。

 加えて、アムリタによって魔化を解除され物質に戻った時、消失分の質量が戻ると共に、同化していたダークマターも吐き出される。この時吐き出されるダークマターはdm'ではなくdmであるため、魔化時にオドは消費されていないのだと考えられる。



二、


 アムリタによって魔化を解除され物質に戻る際、消失分の質量が正確に戻る。

 同位体である窒素14のタキオンと窒素15のタキオンは全く同じ性質を示し、区別が不可能だが、アムリタによって魔化を解除されると、窒素14のタキオンは14になり、窒素15のタキオンは窒素15になる。これは魔化時に質量が消失しているのではなく、一時的に観測できなくなっているか、もしくは別の次元・空間に一時的に格納されているだけである、という事を示している。どちらにせよ魔質が物質であった頃の情報を記録しているという事実は揺るがしようが無い。

 魔化の前後でダークマターの総数、オド量に変化は無いため、質量の格納と出現はエネルギーの損失無く起きているという事になる。これはユーミールの「質量消失拡張論」を補足・補強するものである。

 


 こんな理論がゴロゴロでてくるんだよ。

 俺も必死こいて検証考察をしているんだが、大学生も研究員も目の色変えてヒャッハーしているからどうにもこうにも。研究肌の人間達にニトロぶち込んだってのも確かだが、なんたって発見や考察を論文や研究成果として発表すれば定期収入が確約されるからさ。俺が見つけて発表する前に先取りしようという魂胆もけっこうあるっぽい。一攫千金だよほんと。ドサクサに紛れて「物質を材料に魔質は複製できない」という既に判明しているが明文化されていなかった事を論文にしようとする奴も出てきたぐらいだ。勿論ハネたが。

 金で釣るだけで研究が超加速してくれるなら儲けモンだけども、ちょっとインフレが起きそうなぐらい論文や研究成果の発表ペースが速い。ルフェインなんて既に月収二百三十万シアン(≒二百三十万円)だから。馬鹿じゃねーの? いや間違った、天才じゃねーの?

 元々三百人程度のコミュニティの経済だから金の価値の揺れ動きも大きい。何かしら対策とらないと貨幣がゴミクズになる。あれかな、やっぱ給料の代わりに特権かな。魔質を自由に扱っていいですよー、とか。最悪(最高?)アンデッド化を許可しますよー、とか。シルフィアと相談して決めていこう。


二十四話まとめ:

・38638656mpまでの魔力を手に入れられるようになった

・魔力は38638656mpで結晶化する。この結晶をマナという

・十八種類の魔質が発見された

・化合物は魔化しない

・魔法に関する魔法的情報は「エーテル」という粒子が伝達している

・オド満タンのダークマターをdm、オドが減っているダークマターをdm'と表記する


 魔質を使ったマジックアイテムを! 一心不乱のマジックアイテムを!


 こんなマジックアイテム作りたいとか、こんな性質の魔質あったら面白そうとか、そういうのがあったら感想でどうぞ。私一人では魔質利用の用途発見や魔質そのものの性質を考えるにも限度があるので。

 一、二話クッションを置いてからマジックアイテムの製作に入ります。あと、ここからは具体的な実験・検証の描写をかなり端折っていきます。概要と理論の骨子ぐらいは出しますが。これ以降は過程を具体的に書こうとすると正直手に負えない。


※青ピ的な何か→ナナニカ。論文に使わせて頂きました。ありがとうございます。

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[気になる点] > ダークマターがオドを保有する状態で物質と同化している マナ結晶化してるとき物質はどうなってる?
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