【掌編】孤独だった聖夜祭
最近町並みがキラキラしていることがテオは不思議で仕方なかった。
テレビではなんだか美味しそうなもののコマーシャルがよく流れているし、それに街を歩く人達もどこか浮ついているような感覚がする。若い男女のカップルは勿論。
分からないことはなんでも聞いてね、という主人の言葉に従い、テオは疑問を口にする。
「ゆい、さいきん、まちがきらきらしてるのはなんで? テレビでよくきく、せいやさい、ってなに?」
「あ、テオは聖夜祭初めてだっけ……。ええっとね、元々は宗教行事で、この世界を作ってくれたって言われてる人の御子の生誕を祝ってお祈りしたりする行事なんだけど、今のこの国じゃカップルで過ごしたり、家族と過ごしたりするんだ。ケーキとか、チキンとか、ごちそう囲んでね」
それを聞いて、テオが笑顔になる。
「ごちそうたべられるの!?」
「うちじゃ、当日じゃなくて前倒しで23日とかにするけどね、パーティー。当日はお姉ちゃんもお兄ちゃんも忙しいから」
「どうして?」
「お姉ちゃんは恋人がいたりしたり、協会の定例会合が重なることが多いし、お兄ちゃんは仕事が忙しくなるんだよ。宗教儀式にかこつけて、邪教徒が悪さしたりするから、去年は明け方まで帰れなかったし。友達も彼氏と過ごしたりすることが多かったし……。今年はエノシマがいるかと思ったけど、友達のパジャマパーティーにお呼ばれされちゃったみたいだし」
「そうなんだ……。じゃあ、ゆいはせいやさい、とうじつはいつもひとりだったの?」
「うん……まぁ、ここ数年はね。でも、慣れたよ」
テオは腰をかがめ、由比に目線を合わせると由比の目を見て、はっきりと言う。
「ゆい。ゆいはもうひとりにはしないよ。テオがいつもいっしょにいるから。テオは、ゆいからはなれないから。ずっと。ずっと。ゆいがおよめさんになっても、テオはずっと、ゆいのじゅうしゃだから」
由比はぽかんとしてそれを聞いていたが、涙目になりながらも笑顔を作り、テオに抱きつく。ふわふわの被毛に顔を埋め、両手にぎゅっと力を入れる。
「そうだね……。そうだよね。ありがとう、テオ。聖夜祭、楽しみだね」
「うん! かぞくのパーティーのケーキはしょうがつくるの?」
「毎年そうだよ。お兄ちゃんのケーキ、美味しいから楽しみだね」
「そうだね、たのしみだ」
由比は改めてテオという存在がいてくれて良かったと噛みしめる。聖夜祭の特番を見ながら、ぼんやりと過ごす夜はもう味わわなくていいのだ。
「そうだ、テオに聖夜祭のプレゼント用意しなきゃね」
「プレゼント?」
「大事な人に渡すんだよ。神様からの贈り物だよって。何がいいかなぁ」
「テオ、ゆいがいればなにもいらないよ?」
「プレゼントを悩む楽しみっていうのもあるんだよ。テオは私の大事な従者なんだから、労ってあげなきゃ。だから、悩ませてね?」
「そうなんだ……。じゃあ、たのしみにしてるね!」
ふたりは手を握り合い、小さく笑い合う。
聖夜祭にひとりで過ごすか、ふたりで過ごすかなんて、些細な違いだ。けれど、それはとても大きな違いだ。
この小さな、けれど大きな違いを存分に楽しもうと、由比は決めた。
当日の夜はコンビニで小さなケーキを買って、ジュースを買って、ふたりっきりの聖夜祭を楽しもう。
もう孤独な夜は来ないのだ。
由比の主催するパーティーの参加者はテオだけだけれど、それは十分すぎるビッグゲストだった。




