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第254話:【五千人の重みと、未来への投資】

琴音さんとの配信から数日が経ち、興奮の余韻が残る部屋で、私はひまりと一緒に自分の管理画面を見つめていました。


「……見て、ひまり。登録者数が、ちょうど五千人を超えたわ。それに、この『収益』っていう項目……。初めて有効にしたけれど、こんなにたくさんの方々が、私に直接言葉を投げかけてくださるなんて」


画面に並ぶスーパーチャットの履歴。


一つ一つの金額に、あの日飛び交った温かいメッセージが宿っているように感じられます。


「おめでとう、みゆ! 五千人って、この大学の生徒数よりもずっと多いのよ。みんな、みゆの笑い声に救われてるんだね」


ひまりが自分のことのように目を輝かせて、私の肩を優しく叩きました。


でも、私は喜びと同時に、ある種の「責任」のようなものを感じて、少しだけ背筋が伸びる思いでした。


「……ねえ、ひまり。この初めて手にしたお金で、まずは咲子さんに返済をしたいの。外注費として、かなりの額を前借りさせてもらったから」


「ええ、咲子さんを驚かせたいんでしょ。でも、全部返しちゃうの?」


私は頷きました。咲子さんの厚意に甘え続けるのではなく、自分の足で立った証を早く見せたかったのです。でも、同時にある悩みを抱えていました。


「……返済したら、残りでさらに編集や素材制作をお願いする人を増やそうと思っているの。今のまま、台本から編集まで全部自分でやろうとすると、どうしても時間が足りなくて……。もっと動画を届けたいけれど、体力が追いつかないのがもどかしいわ」


私は、キーボードを叩きすぎて少し強張った自分の指先を見つめました。


「本当は全部、自分でやり遂げたいの。私の声で、私の作った世界を、完璧な形で届けたい。……でも、今のままじゃ、またみんなに心配をかけてしまうかもしれないわね」



少しだけ俯いた私に、ひまりが真剣な眼差しで向き合いました。


「みゆ。……あなたは昔から、何でも一人で背負い込みすぎるところがあるわ。特にお休みしていた時期があるから、『遅れを取り戻さなきゃ』って焦っているんじゃない?」


「……。それは、そうかも」


「いい? 配信を楽しみにしてる五千人のみんなが一番見たいのは、『完璧な動画』じゃないの。……元気に、心から笑っている『今の守乃みゆ』なのよ。あなたが机にかじりついて倒れちゃったら、その笑顔は守れないわ」


ひまりの手が、私の手をそっと包み込みました。


「外注を増やすのは、手を抜くことじゃないわ。それは、あなたが『一番大切にするべき時間』……つまり、みんなと笑い合ったり、新しい物語を考えたりする時間を確保するための『投資』なの。咲子さんに返して、余った分で頼れる仲間を増やす。それが、長く続けていくためのスマートなやり方じゃない?」


「……投資、ね。みんなと笑うための、時間を作るための……」


ひまりの言葉に、ふっと肩の力が抜けました。全部自分で抱え込むのが「正解」だと思い込んでいたけれど、誰かに頼ることで、より広い世界を見せられるのかもしれない。


「ありがとう、ひまり。……そうね、私一人じゃなくて、みんなで作る『守乃みゆ』になればいいのよね。まずは咲子さんに連絡して、返済計画を話してみる」


「その意気よ! さあ、そうと決まれば、今日はお祝いで美味しい紅茶でも淹れましょうか。これは私が、特別に無償で外注を引き受けてあげるわ!」


親友の茶目っ気たっぷりな言葉に、私は今日一番の、心からの笑顔を浮かべたのでした。

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