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第131.7話(前編):【開かれた鳥籠】敗北の烙印


深夜の佐藤家、屋根裏部屋。PCのモニターには、一期生「カニ」の卒業発表から数時間が経過した掲示板のログが、滝のような勢いで流れていました。


「……おばあ様、これ。SNSでも掲示板でも、みんな好き勝手言ってるわよ」


みゆが悲しそうにスマホを差し出しました。画面には「看板ライバーすら繋ぎ止められない」「完璧な統治の終わり」「咲良お婆様の敗北」といった、心ない見出しのまとめ記事やコメントが溢れています。


しかし、当の咲子はといえば、みゆの心配をどこ吹く風と受け流し、お気に入りの皿に乗った大福を愛おしそうに眺めていました。


「おほほ。敗北、ですか。随分と賑やかなことですわね」


咲子は黒文字で大福を丁寧に切り分け、一口分を口に運びました。


上品に咀嚼し、お茶を一口。その優雅な動作は、ネット上の喧騒がまるで別世界の出来事であるかのように感じさせます。


「カニさん、事務所にいればあんなに大切にしてもらえるのに。実写の個人YouTuberなんて、何の保証もない荒野じゃない……。咲良お婆様として、どうして止めなかったの? このままじゃ、おばあ様が失敗したみたいに言われ続けちゃうよ」


みゆの問いかけには、悔しさと不安が混じっていました。最強の外交官、最強のプロデューサーとして君臨してきた祖母に、初めて「泥」がついた。それを許容している咲子の真意が、どうしても掴めなかったのです。


咲子は最後の一口の大福を飲み込むと、懐紙でそっと口元を拭い、窓の外に広がる冬の夜空を見上げました。


「みゆちゃん。わたくしが本当に恐れていることが何か、分かりますか? それは、彼女がわたくしの庇護の下で、牙を失った『飼い犬』になってしまうことですのよ。安全な鳥籠の中で、決まった時間に餌をもらい、わたくしの用意した台本で歌う……。そんな姿、わたくしの美学が最も嫌う『退屈な死』ですわ」


咲子の瞳には、寂しさよりも、どこか晴れやかな色が宿っていました。


「……ちょうど50年ほど前になりますかしら。わたくしがまだ若く、今のあなたよりも少しだけ無鉄砲だった頃。ある『過保護すぎた親子』の仲裁に入った時のことを思い出しましたわ」

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