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第126話:【狂った賭け】一期生サバイバル・ルーレット――その指先に、仲間の命を乗せなさい

櫻守事務所のメインスタジオ。そこには、一期生であるましろ、アイリス、HAL、そして華蓮の4人が並んでいました。 しかし、いつもの華やかな配信風景とは異なり、スタジオの空気は凍りつくほどに張り詰めています。配信のタイトルは、『【緊急】櫻守事務所、存続をかけた運命の勝負』。


「おほほ。皆様、お集まりいただき感謝いたしますわ」


画面の中央に現れた咲子は、手元の扇子をカチリと閉じ、視聴者とライバーたちに宣告しました。


「本日、華蓮さんには一つのゲームに挑んでいただきます。勝てば、一期生全員に生涯遊んで暮らせるほどの報酬を。……けれど、もし華蓮さんが負ければ、一期生4名はその場で引退、櫻守事務所は解散とさせていただきますわ」


【ライブコメント欄】 :え? 引退!? 解散!? 何言ってんの!? :お婆様マジかよ……これ放送事故だろ…… :ましろちゃんの顔、真っ青じゃん…… :華蓮、冗談だろ? 笑えねーよ!


「ええっ!?」「ちょ、おばあ様……!?」「解散って、そんな……!」


ましろたちが驚愕に目を見開く中、華蓮だけは顔を青ざめさせ、震える手でテーブルを見つめていました。昨夜、咲子に言われた**「仲間の人生を無責任にチップにする子供」**という言葉が、呪いのように脳裏に響いています。


絶対に間違えられない「選択」

ゲームは至極単純な『ハイ&ロー』。 伏せられたカードが、今見えている「7」より大きいか、小さいか。 確率はほぼ二分の一。これまでの華蓮なら、鼻歌まじりに「直感」でボタンを押していたはずの盤面です。


「……っ」


しかし、華蓮の指は、タッチパネルの上で激しく震えていました。 隣を見れば、ようやく嘘を脱ぎ捨てて自分らしく生き始めたましろが、怯えたように肩を震わせています。 自分を律し、逃げていた過去と向き合ったアイリスが、祈るように胸に手を置いています。 そして、ようやく外の世界に一歩踏み出したばかりのHALが、不安そうに自分を見つめている。


(もし……もし私が外したら、この子たちの努力も、未来も、全部私が殺すことになる……)


これまでに賭けてきた何千万、何億という大金が、紙屑のように軽く感じられました。 「他人の人生」というチップの重み。それが、これほどまでに指を動かなくさせるとは、華蓮は知らなかったのです。


【ライブコメント欄】 :華蓮の指、めっちゃ震えてる…… :おい、時間制限出たぞ! あと30秒! :どっちでもいいから押せ! 押さなきゃ負け確定だろ! :これ、いつものギャンブルと重みが違いすぎる……見てらんねえ……


絶望の淵での「決断」

「どういたしましたの、華蓮さん。早く選ばなければ、時間切れで『敗北』となりますわよ」


咲子の冷徹な催促。残り時間は10秒を切りました。


「……できない」


華蓮の口から、掠れた声が漏れました。


「できないよ……! 私一人の金なら、いくらでも賭けられる。でも、こいつらの……こいつらの『これから』は、私の勝負の道具じゃない! こんなの、スリルでも何でもない、ただの恐怖だよ……っ!」


華蓮は泣きながら、ボタンを押すのを拒否してその場に蹲りました。 ギャンブル狂の女王が、初めて**「勝負を降りる(ドロップ)」**という選択をした瞬間でした。


「……おほほ。合格ですわ、華蓮さん」


咲子の声が、一瞬で柔らかなものに変わりました。 モニターの数字が消え、スタジオの照明が温かな色に戻ります。


「あなたが守りたかったのは、お金でもスリルでもなく、隣にいる仲間たちでしたわね。……自分の破滅よりも、仲間の損失を恐れるようになった。その『臆病さ』こそが、真のリーダー、そして大人への第一歩ですわ」


華蓮は呆然と顔を上げました。ましろたちが駆け寄り、泣きじゃくる華蓮を抱きしめます。


コメント:

……え? 終わり? :華蓮、降りた……?

あのギャンブル狂が……?

「合格」って……そういうことかよ。咲良お婆様、あんた凄すぎるわ……

泣いた。華蓮が仲間を選んだんだ……


一円も増えていない。むしろ、大金を稼ぐチャンスを捨てた。


それなのに、華蓮の胸には、どんな大勝ち(ジャックポット)の時よりも熱い、確かな充足感が込み上げていました。

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