天使の探索
イシグロは誰のものかわからない墓石で煙草を消した。上で土地を守る連中から黒い霧のようなものが見えたが、あれは何だと尋ねた。
「あれも天使ですよ。人の魂を喰らい続けた末路ですかな。強くなれますからな。魂とは麻薬のようなもんです。もはや半獣半人ですな」
「ちなみに知り合いにかわいい天使がいるんだが近付いてやらん方がいいのかね。何とか一人前に育てたい。前世くそ弱い天使と一緒に殺されたんだとさ。なのに天使に転生した」
老人は小さく頷いた。
「本人の気持ちですな」
「なるほどね。ウォルターハウス家について調べてるんだ。天使と通じ合える家柄だと聞いてる。どういう意味だ?」
「清らかな魂を捧げるのです。もちろん寿命を全うしてからですがね。通じているのが高位の天使になると、例えばウォルターハウス家などですが、気に入る魂をくれた人には新しい天使を遣わせます」
「お互い様だな。ちなみに清らかな魂をもらうと、高位の天使には何か特典でもあるのか」
「簡単な話です。いちばんいい魂は己たちで喰らうのですよ」
「喰らうというのは、人みたいに取り込むということか。実際にランチみたいに食うのか。見たいもんだ」
老人は革袋を覗き込んだ。汚れに汚れた魂だらけだなと苦笑してから、イシグロのスーツの上から拳銃のあるところを指差した。
「ロベルトから渡された」
「彼の二つ名はご存知ですか?」
「薔薇のロベルトだ。薔薇の肥料を荒らした奴を撃ち殺すところを見た。薔薇じゃなくて肥料だ」
「もう一つあるんですがね。天使殺しのロベルトです。ブレンディア伯爵のところにいた天使たちを虐殺した話は?」
「薔薇園を荒らしたので一掃したという話はしているが」
「一掃したのは確かですが、薔薇園が理由ではございません。当時天使たちは人の世界を支配しようとし、貴族の座をせしめようとしていました。世俗に塗れたのですな。まだ欲に塗れるものは許せましたが、天使は人の魂の選別しはじめたのです。頭に来たロベルトは各地の天使を殺しました。天使も反撃しましたがね」
やたら強いが滅茶苦茶なじいさんだと思っていたが、想像以上に滅茶苦茶だ。途中で良心のある高位の天使が仲裁に入ることで戦争は終結し、ロベルトは捕虜にした凶悪な天使を封じ込めておくための牢の番人「鍵を持つ者」とも呼ばれることにのるのだと話を締めた。
首からぶら下げた鍵を見せた。
「ロベルト殿はあなたを後継者として指名したということですな。あなたは前世から目を付けられていたのかもしれませんな。鍵を持つ天使もいます。一斉に使えば牢から、かつての業の深い天使が放たれると言われていますが」
「俺、返してくるわ」
イシグロはポリッシュした魂は、どうなるかわからないので、後で使いのものに取りに来るように言っておくと伝えておいた。
「ちなみに人に持たせればどうなる?」
「善は善に悪は悪に染まるかと。カケラを集めた弾も作れますが、銃にいかがですか」
「お高いんだろ?」
「限定お試しで作らせていただきます」
イシグロは墓地を離れるとき、例の私有地へ入ることはできないかと尋ねた。ブレンディア伯爵がどうしても欲しいものがある。金銀財宝でも埋まっているのではないかと話した。
「まさか。しかしこの丘の地下には地下墓地が巡らされているので、殺されることを恐れなければどこからでも入れると思いますよ」
「迷路をうろうろするのは性に合わん。ダンジョン攻略とかか。地図とかある?」
「役所に。川向いに移転したときに移転しました。職員が一人います。聞いてください」




