第22話・特別
一瞬辺りが静まり返る。
「シ・・・・・・シノン、大丈夫か?」
セーナがシノンを起こすとシノンは泥が少しついた顔でニパアと笑った。
か・・・・・・かわいいっ!
女の私でさえこれなのだからルークだって惚れちゃうよ・・・・・・ね。
むなしくなった瞬間、セーナが笑った。
少し、ドキリとした。
「仕方ないなぁ、シノンは・・・・・・足元には気を付けなきゃダメだろ?」
そういいながらシノンのかすかについた顔の泥を落としていた。
うわ・・・・・・セーナって・・・・・・なんて優しそうな顔して笑うんだろう。
無邪気に笑ったシノンが頷いた。
なんか、姉と妹って感じかな。
かわいいな。二人とも。
背も小さくて可愛らしいのに私は背がでかくて可愛いわけでもなければ美人でも特別スタイルがいいわけでもない・・・・・・はぁ・・・・・・落ち込んじゃうなぁ・・・・・・。
体育座りをしてため息を吐いた。
「どーかした?」
後ろから声が聞こえて振り向くとナツハが木によりかかりながらこちらを見下ろしていた。
「う、うわっ!?ナツハ、いつの間に気配を消せるようになったの!?」
「なってないよ、スィルが気が付かなかっただけ。」
ナツハは私を見ながら苦笑した。
「・・・・・・いや、なんか、あそこの二人が可愛くて・・・・・・。」
「そうかな。」
何をいうんだろうかナツハは。
あの二人は可愛いに決まってるのに。
「そうだよ。私なんか背ばかり二人よりでかくて特別何かがいいわけでもないし・・・・・・なんか落ち込むなぁ・・・・・・。」
「スィル、立ってみなよ。」
ナツハに言われたとおり、お尻を払いながら立った。
「立ったよ、だから何?」
「スィルも僕やシュウナンより小さいじゃないか。」
「と、当然じゃん!」
「そ、だから別に背が大きいとか気にする必要もないし、特別なんていらないと思わない?スィルはスィル。皆は皆。一人一人違うのに比べるなんて間違ってる。」
ああ・・・・・・私のこと、励ましてくれてるんだなぁ・・・・・・。
でも・・・・・・。
「そうかな・・・・・・特別はやっぱり欲しいな。私は人間だから!でも、ありがとね、ナツハ。」
私は特別が欲しいよ。
ナツハと違うから。
一人一人違いがあるから“こそ”だよ。
私はルークの特別になりたいし、こんな自分を変えられるような何かが欲しいけど。
これも私だから。
今を受け入れていくしかないって事はわかったよ。
「・・・・・・特別・・・・・・ね・・・・・・僕も変わったもんだ・・・・・・なあ、ココット?」
その頃、私は笑顔でセーナやシノンに話し掛けていた。
私はココットの存在すら気付かず、さらに忘れていたのにナツハは気付いた。
ナツハって・・・・・・やっぱり何者・・・・・・?
「おいらの存在なんか忘れてんのかと思ったぞ、ナツハ。」
「僕が?君を?ハッ。忘れるわけないだろ。なんたって君と僕は精神的には一番近いんだからね。」
「おいらを人間なんかと一緒にするな。」
「落ちこぼれ悪魔?はは・・・・・・笑わせんなよ。人間ができる過程で生まれたのが君たちだと僕に言ったのは君だろ?まあもっとも、その生命体は理にかなわなかったみたいだけどね。」
「なんだとっ!?と・・・・・・怒りたいところだが、事実を否定しても何にもならない。実際おいらは悪魔となったしな。」
「はは・・・・・・やっぱり最高だよココット。楽しいね、同じような考えの奴が入るって事はさぁ・・・・・・?」
「だがおまえは変わっている。あの娘におまえがおまえから望んで近づいている。おいらみたいに傍観したいわけじゃない。お前がおまえ自身で望み、あの娘の事を知ろうとしている。だからおいらに向かってかけた声のはじめが・・・・・・僕も変わったもんだ・・・・・・だったんだろう?」
「さあ・・・・・・どうかな。」
いつも通りの声で、いつも通りの顔でナツハはさらりと言い切った。
「ナツハー!?」
遠くから聞こえるような声にナツハはすぐ返事を返す。
「すぐ行くよ!・・・・・・さあ、ほら、ココット・・・・・・行くぞ。」
ココットは呟いた。
「まぁ、興味深いよな。期間の過ぎた娘、さらにはその謎に包まれたさらなる謎の家系に・・・・・・おいらだって気付かなかったら見過ごすところだったんだ。こんなに面白いゲームが繰り広げられてるのに。」
ナツハがココットを振り返ったが、ココットはそれ以上何も言わなかった。




