第11話・皮肉
「スィル?どうした?」
セーナが私の肩をつかんでかすかに揺らした。
「ダメだっ!」
そんなときハッとした。
目の前にはナツハがいた。
「過去の事を思い出しているんだろう、それが嫌な過去なら無視したほうがいい。無意識に叫んだり暴れたりすれば傷つくのはセーナ、君だ!」
ああ・・・・・・うん、そうだ。私は仲間で一度暴れ狂って叩いたりしたんだ、ナツハを・・・・・・。
「ごめ、なんでも・・・・・・ないよ。」
私が言葉を発するとナツハが振り向いた。
「本当に・・・・・・?」
小さい子供のように顔を覗き込まれ、すこし冷たい手のひらが顔に触れる。
「う・・・・・・ん。」
思わずビクリとして顔をそらす。
その時、かすかにナツハが寂しそうな顔をした気がした。
「えっ。」
向き直ったときにはナツハは別の方向を向いてて、いつも通り笑いながら「さあいこう。」って言っていた。
そう言えばナツハは人の心配するときとか真面目な話をするとき一切笑わないね。
いつも笑ってるように見えるのに・・・・・・別に真面目な話でも茶化しながら言ってもいいのに。
彼の中の何かが彼にそれを許さない。
でもね、ナツハを縛り付けるものは今の私たちやここにはない。
ナツハを縛り付けてるのはナツハ自身なんだよ。
それが言えるのはナツハだけじゃない。
シュウナンもルークもそう。
でもシュウナンは歩み寄ってくれた。
そしてとらずにいた仮面をとったんだ。
だから次はルークとナツハの番。
縛り付けないで、気付かないままだと思わないで。
あなた達を縛り付けようとするものはどこにもないよ。
だから知って。
一人じゃ解決できないこともあることを。
だから遠ざけないで。
あなた自身を知ろうとするものを。
だって、そのための仲間でしょう?
やっぱり遠ざけるだけじゃ何も変わらないよ。
「そう言えば、悪魔は死なないと言ったな。ならなぜ倒せるんだ?」
セーナが唐突に言いだすとシュウナンが口を開いた。
「逆だ。悪魔は死なない。だからこそ半分だけ悪魔であり人間であるあざつきじゃないと倒せない。悪魔が人間になろうとすれば話は別だろうが、そんなやつはいないだろう。」
「そんな・・・・・・むちゃくちゃじゃないか!なんでこっちは期限まで決められて、あざつきじゃないものまで狙われるのに、向こうは永遠なんだ!?それに戦い用がないじゃないか!」
「そう、ムチャクチャ、壊れまくってる。世界が・・・・・・悪魔の存在によって。」
そして悪魔狩りの日々が始まり、数日後、私たちは立派な悪魔狩りになっていた。
ガサガサガサ・・・・・・葉を掻き分け、走りだす。
「そこだっ!シノンっ!」
シノンに合図を送り、シノンが頷くとバキュンバキュンバキューン!という凄まじい音が聞こえ、悪魔は逃げ場を失った。
グサッ
「さあ、吐きなさい。シノンの契約主はどこ!?」
「ちょ、まてよ!まさか本気・・・・・・」
「もちろん本気だけど。」
悪魔の首に剣を突き付ける。
「くそっ!何でそんな物騒なもん・・・・・・。」
「私はシノンの契約主を聞いているの。聞こえなかった?」
「ま、まて!俺はそいつの契約主は知らない!だが、お前の契約主なら知ってるぞ!お前、スィルとか言う名前だろう!」
「名乗っていないのに・・・・・・どうして。」
ニヤッと悪魔は笑った。
「やっぱりそうだ、お前があの狂った奴の契約者か!俺様が食らってやりたかったのに・・・・・・惜しいなぁ・・・・・・惜しいなぁ」
ニヤニヤしだしたので気持ち悪くて切った。
悪魔は消えた。
悪魔は体が一度破壊されてももう一度復元される。
だからこそどんなに悪魔を倒していても契約元である悪魔とあえる可能性は低い。
「ごめん・・・・・・シノン・・・・・・あいつ、気持ち悪くて切っちゃった・・・・・・聞き出せなかったね。」
武器が手のひらで結晶に変わり、私がシノンを抱き締めるとシノンは頭を横に振った。
この結晶はあざつきにしか作れない特殊なもの。
神の涙、神の血、神の生み出したもの。呼ばれる名前は数知れず。
ダイヤモンドのように硬く、強く、光を通す。
そして滅多にないきれいな結晶。
でもこれを生み出したのは神でもなければ自然でもない。
皮肉な事に契約者を最も嫌う一般的人間が欲しがる結晶は契約者によって生み出されたもの。
そして唯一悪魔と対等に戦える武器で、悪魔を倒せる武器。
この結晶は触れた人の波長にあわせてその人にあった武器に形を変える。
でも、この結晶は契約者一人につき一つしか作れないからなくさないようにしないとならない。
これの作り方を知っていたのはナツハ。
昔、元あざつきだった老人から旅の途中で聞いたんだって。
そして結晶は生み出されて契約解除を果たすと結晶も契約印と共に消えるが、目的を果たせずに悪魔、または何ものかに襲われ、死んだ場合、結晶はただの結晶になり、消えることなくその輝きであざつきでない人間達を魅了する。
そしてあざつきがその結晶を持っていたことからあざつき狩りが行われ、この方法を知っている人がほとんどいなくなってしまったのだという。
それが忌み嫌われ、時には悪魔や人間にも命を狙われるあざつきの宿命なのだろうか・・・・・・。
「宿命や、運命か・・・・・・。」
本来なら生きているはずのない命が運命も定めもないか・・・・・・。




