↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゼムナ戦記 英雄の条件  作者: 八波草三郎
第五話

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
64/305

少年探検隊(1)

 独立した農業プラントから艦内に戻った少年少女は周囲を見回す。探検するとは言ったが行き先が決まっているわけではない。


「ウォン」

 ベフがついてきているのにザイハは気付いた。

「一緒に行きますか。とすると、ウルはエイマたちのほうへ?」

「ワン」

「では護衛は彼に任せましょう」


 活発なほうのナバック犬は一番小さいネリネとニッケの護衛を自任しているようだ。クストのあとに続く。


「どこに向かうんです?」

「男は黙って武器庫だろ?」

 コウヤは自信満々に言う。

「きっとビームライフルとかあるぜ。オレたちだって自衛は必要だろ、自衛は」

「無理だと思いますよ。有ったとしても、そういう場所にはリュセルが入れてくれないでしょう」

「知っとくだけでも大事なんだって、いざってときのために」


(なんだかんだ言って武器に触りたいだけでしょうに)

 コウヤの心理を見抜く。


「下だな。格納庫(ハンガー)近くにあるんじゃね?」

 順当な意見だ。

「そうでしょうね。でも、ビームライフルは無いと思いますよ」

「無くはないだろ」

「仕組みを聞いた限りでは小型化できるものではありません。人間の扱えるサイズにはならないでしょう」

 リュセルに聞いたことがあるのだ。

「ザイハ、説明(あれ)解ったのかよ」

「解りますよ。かなり噛み砕いて教えてくださいましたから」

「僕でもざっくりとは解ったし」

 シュカが続き、クストまで頷くにいたってコウヤはおののいていた。


 アームドスキンの扱う携行武器は力場形成系のものと重粒子発射系に分かれる。前者が力場刃(ブレード)と防御に使う力場盾(リフレクタ)、後者がビームランチャーなどの銃器型である。


 重粒子発射系の武器は、基本的にプラズマビーム投射兵器だという。高熱のビームで対象を溶解させるもの。しかし、それでは効果が薄い。一定時間照射できないと対象を破壊できない。

 そのうえで考案されたのが重粒子ビーム型だ。プラズマビームに重粒子を乗せて射出し、対象を高熱にさらして結合を緩くすると同時に質量を衝撃させて破壊するという原理。


 そのために重粒子発射兵器にはプラズマを蓄積しておく燃房(チャンバー)と、質量体となる弾液(リキッド)を必要とする。発射時に両方を収束磁場内に噴射して投射する構造になっている。

 複雑な仕組みとプラズマチャンバーに必須の外殻が相当な重量になるために人間が携行できるサイズには収まらないのだそうだ。最小でも数mの代物になるらしい。


「アームドスキン用のものはあるでしょうが、まさかそれを担いで撃つとか言わないでしょうね?」

 撃ったほうもただではすまない。

「ちぇ、つまんねー」

「ですが、レーザー系の携行武器はあると思います。なにせライバーンではどの方向からのミサイルにも対処できるくらい全身の各所に配置されていますから。それなりにハイパワーなものでも携行銃器レベルじゃないでしょうか」

「それだ! レーザーガンか、格好いい」

 もう手にしたような騒ぎようだ。

「もう一度言っておきますが、決して触れられる場所には……」

「あー、お掃除くんだー!」

「あ、こら」


 ネリネとニッケが同時に駆け出す。向かった先には床を這い回る30cmほどのお掃除ロボットが向かってきていた。


「駄目だよ。お仕事中なんだから邪魔しちゃ」

 クストが注意しているが近付いた二人はペンペンと叩いている。

「こういう機械が進化してないのは不思議だよな」

「技術的進歩はしていると思いますよ。清掃の能力が高いのに、あれほど触れられても止まりません。ネリネたちにぶつかったりもせず、淡々と機能しています」

「だよな。この広い艦内で目に付くほどの台数が稼働してるわけじゃない。それなのにピカピカに維持されてるし」


 たまにしか出会えないから幼年組は触りたがっているのだ。彼らがもうひと月近くも生活しているのに汚れているという印象がない。


「たしかに掃除らしい掃除もしてないよな」

 コウヤも改めて思い出したようだ。

「農業プラントで作業するときにこぼした栽培液や浸透パウダーを片づけるくらいでしょう?」

「壁なんかどうしてんだか」

「僕、知ってる」

 シュカが手を挙げる。

「なにを見たんです?」

「前に夜中にトイレに起きたとき、外から小さな音がするから覗いてみたんだ」


 そうすると高さを合わせたバーが壁面に沿って走ってきていたという。なにかの液体を噴射して、それをエアで吹き飛ばし乾燥させつつ移動していたらしい。


「僕が覗くと同時に止まっちゃってお見合いしたんだ。つい『ご苦労さま』って言って閉めちゃった」

 微かなエアの噴射音が室内まで聞こえてきていた。

「眠ってる間に綺麗にしてくれてるみたいだね」

「うんうん」

「え、フユキ、お前も知ってたの?」

 少年も頷いていた。

「前に見た」

「教えろよ!」

「やめてよー」


 コウヤがフユキをくすぐる。いやがって逃げ出したあとを清掃ロボットが静かに追いかけていく。その上にはネリネとニッケが乗っていた。


(地味に見えて、かなりの部分が自動化されているんですね)

 考えてみると、洗濯や調理も機械任せだ。

(本来は宇宙という厳しい環境下で人間が快適に生活できるよう、高度な技術が用いられているわけですか)


 ザイハは物質文明の行く先をその目で見ているのだと知った。

次回『少年探検隊(2)』 「君ならあっちに乗りたがると思ったんですけど」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] お掃除ロボットは私も欲しい……!
[一言] 更新有り難う御座います。 これは日本人ならではの感覚かな? 銃という簡単に人を殺せる道具を手にする事の不安と嫌悪。 勿論(?)格好良いと言う憧れ(?)も有りますが……。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。