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ゼムナ戦記 英雄の条件  作者: 八波草三郎
第二話

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混迷の兵士たち(2)

 リュセルに案内されて農業プラントユニットを見学した生徒たちは、割り当てられた部屋に戻る前にシャワーを使っている。高機能なわりに使い方も簡単で助かった。


(そういえばメニューには普通に肉もあったけど、あれはどうしてるんだろう)

 気にはなったがエイマはとりあえず忘れることにした。


 セリナと二人で最年少のネリネとニッケの面倒を見る。二人とも八歳なので全部やってやらなくてもよいが、目新しい環境ではしゃぐのを注意しなくてはならない。


「ネリネはクストの妹なのよね?」

「うん、お兄ちゃん」

 セリナは兄弟がいないわりに世話上手だ。

「ニッケは兄弟いないの?」

「ひとりー。今日はいっぱいいて楽しい」

「そっかぁ。なんか合宿みたいだもんね。フユキは大丈夫かな?」

 弟のことが気になる。

「エイマはフユキのお姉ちゃん?」

「そ、仲良くしてあげてくれる?」

「うん!」


 弟もまだ九歳なのだから女子側に入れてやってもいいと思うのだが、本人が困った顔をするので男子グループに預けた。可愛いフユキと一緒にお風呂に入れるのもそう長くはないのかもしれない。


「ササラは大丈夫?」


 様子をうかがうとタマテやアスホと話していた。屈託なく接してくれているので問題なさそうだ。二人ともさばさばした感じなのは、類は友を呼んだのか。


「ふぁー!」

「これは便利ー!」


 ドライルームで一緒に温風を浴びて身体を乾かす。髪もあらかた乾いて一石二鳥だ。セリナくらいの長さだとこれだけで乾くだろう。エイマの髪の長さでもおおよそは乾いてくれた。


「きもちいい。ママみたい」

「そうかな」

「……ママ」


 ニッケの髪をとかしてやっていると思い出してしまったようだ。ちょっとぐずりはじめる。


「先生たちが調べてくれてるから大丈夫。きっと無事よ」

「……うん」


 ネリネも釣られてしまったようで瞳を潤ませている。二人は今夜はセリナたちの部屋で一緒に寝ることにする。


「お母さん」


 寝息を立て始めたニッケの頭をなでながら言葉がもれてしまった。彼女とて不安がないわけではない。下の子の手前、我慢していただけ。


(フユキも呼んでやればよかった)

 後悔する。今頃泣いているかもしれない。


「心配?」

「そりゃね」

 セリナが訊いてくる。

「わたしも。でも、今は頑張ろう? 一番上なんだもの」

「我慢しすぎないようにね。あたしもいるし、タイキ先生だっているから」

「そうよね」


 不安はくすぶっているが、昼間の疲れがエイマを眠りに誘った。


   ◇      ◇      ◇


「情報分析班の仕事ぶりはどうだ?」


 デレイフ率いる部隊が降下したのは、今度は大陸の北側の地域。そこにはメタリヤ連邦という国があるそうだ。第四惑星の中で最も勢力を持つ大国をまず押さえにかかる計画である。


「しっかし、こんな惑星一つにどれだけの数の国があるっていうんだ? どうやって治安を保っているんだか」

 トゼルが不思議そうに言う。

「だよな。互いに意見がぶつかり合って戦争ばっかになりそうなもんだけど」

「実際そうなのかもしれないが、使ってる武器もちんけな物理弾頭だったから、たいしたことにならないんじゃないか?」

「なるほどな」

 ハガーも楽観的に答えている。

「そうでもない。油断してくれるなよ。核兵器みたいな骨董品を平気で保有していたりするぞ」

「核兵器ってなんです、隊長?」

「あれだよ、ハガー。核分裂や核融合エネルギーをそのまんま熱として使う兵器さ。とびきり効率悪いけどな」


 核反応で得られるエネルギーを攻撃に使う兵器などは、彼らからすれば骨董品。もっと安全で運用しやすいビーム兵器が主流になる。威力がコントロールしやすいし、スペースをとられることもない。そもそも物理弾頭など速度の遅い兵器は、人の手を煩わせずとも自動迎撃が可能。


「そんなん放射能汚染だってするだろ? ここの原始人がターナ(ミスト)だけ持ってるとは思えないぜ」

「だよな」

 二人の考えは軽い。

「汚染の影響も害として利用するのだ」

「正気ですか? そいつはいかれてますぜ、隊長」

「彼ら未開人が他の人類と同様に抑止力として利用していることを祈っていろ」


 万が一を考え、今回は母艦ドルセセフも降下してきている。いざとなったら放射能帯域用ターナ(ミスト)を散布するためだ。人的被害があまりに多くなるのは後々困った事態を引き起こしかねない。


「じゃあ、やるぞ」

「全機、警戒を厳に」


 情報分析班が解析した言語、この国の他に地域的にしか通じないメタリヤ語という言語で警告アナウンスをする。作り出された合成音声で降伏を訴えるものだ。


(攻撃してくるようなら都市の一つも焼くしかないが、やりたくないものだ)


 眼下の都市に電波でアナウンスを送る。有翼戦闘機が集まってきており、攻撃されれば応じなければならない状況。


(あんな防御フィールドも持たない都市なんて一分で火の海になってしまう。どれだけ死ぬことか)

 それが民間人ならなおさら避けたい。


「武器じゃなく言葉で応えてくれよ」

 ただの蹂躙などしたくない。

「*******。**********」

「応答きた。なんて言ってる、ジル」

「名乗ってるみたい」

 通信士(ナビオペ)が翻訳結果を教えてくれる。

「***********、**********?」

「交渉を要求してきたらしいわよ? ずいぶん偉そうに……、あ、この国の元首だった」

「それなら間違いないな」


 住民虐殺をしないですみそうだとデレイフは胸をなで下ろした。

次回『混迷の兵士たち(3)』 「それでは降伏なさるので?」

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