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ヴィリジアン  作者: 千月志保
第10章 結界の向こう
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隠していたこと

「時間があるうちに休んでおくといい」

 そう言ってエストルはグレンに肩を貸した。グレンを背負うと、ベッドまで運び、寝かせた。

「ありがとう、エストル」

 寝かせてもらうと、呼吸が落ち着いてきた。エストルはベッドの横に椅子を持ってきて座った。

「何もできないが、せめて側にいさせてくれ」

「いいの? こんなときに僕についてくれていて」

「事態を部隊長たちに説明するために招集をかけた。まだ会議までに時間がある」

「僕も、出席するのかな?」

「体調次第だな。無理はしなくていい」

 言われてグレンは肩の力を抜いた。

「それに、その前にお前と二人だけで話がしたかった」

 エストルが言った。

「そうだね。お互い、隠していたことがたくさんあったから」

 二人とも憤りや苛立ちは湧かなかった。話すタイミングが来たら話すつもりだった。それまでは話さない方が良かった。エストルがウィンターたちに与していたことをもっと早い段階で知っていたとしてそれを隠し通し、何も知らない振りを演じ続けることができたとは思えなかった。すでに多くを抱え込みすぎている。これ以上は無理だった。また、逆に、ヴィリジアンを手にする前の段階でグレンがヴァンパイアであることを伝えても、それはエストルを困惑させるだけだっただろう。今、グレンを人間に戻す手段を手にしているからこそ、冷静でいられるのである。

「まさかお前がヴァンパイア化していたとは思わなかった」

「そう、だよね」

 やはりヴァンパイアになっていたことを告白するのは心苦しかった。

「いつ吸血された? やはり初めて上級ヴァンパイアに遭遇したときか?」

 グレンはうなずいた。

「あの上級ヴァンパイア。〈002 追跡者〉。そういえば、〈追跡者〉は、上級ヴァンパイアのこと、マスターヴァンパイアって言っていたね」

「上級ヴァンパイアがテルウィングの生物兵器だということは、お前も知っているな。テルウィングでは最初に人間の手で開発したヴァンパイア、つまり上級ヴァンパイアのことをマスターヴァンパイアと呼んでいる」

 エストルは言った。やはりエストルは全て知っているのだ。

「そのとき、ソードが見ていて、自分も小さい頃噛まれてヴァンパイアになったことを打ち明けた上でヴァンパイアになった僕の面倒を見てくれたんだ。話を聞いたり、吸血させてくれたり」


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