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ヴィリジアン  作者: 千月志保
第10章 結界の向こう
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力の代償

「グレン将軍?」

 デュランの体が反射的に動いたが、エストルの目を見ていたクレッチがそれを制した。

「エストル様、グレンは……」

 グレンの後ろ姿を心配そうに見送っていたソフィアは、エストルの方に向き直って聞いた。

「少し休ませてやってくれ。本来なら立っていることもままならない状態なんだ」

 努めて冷静に答える。

「後ほど部隊長も集めて説明をするが、先に少し状況を話しておこう。聞いてくれるか?」

 ソフィア、リン、ルイ、クレッチ、デュランの五人はうなずいた。

「隣の応接室に行こう」

 六人は応接室に向かった。ここでエストルから真実を聞かされることになる。


 グレンは部屋に入ると、乱暴にドアを閉めた。我慢していたようにドアに寄りかかると、歯を食い縛ったが、結局耐えきれず声を上げて体を折る。先ほど遮断した苦痛の感覚が限界になり、解放されたのだ。グレンは胸を押さえて息を整えようとした。しかし、乱れた呼吸はグレンの言うことを聞いてくれなかった。この苦痛が去るまで待つしかない。上級ヴァンパイアの血をこの体が完全に受け入れるのを待つしかない。

 強大な力を手に入れた、その代償。

 グレンは一人、苦痛と闘った。


 どのくらいの時間が経っただろうか。とりあえず苦痛は収まったようだ。再発する可能性はあるが、グレンはひとまず壁にもたれかかったまま座り込んだ。体力を消耗したのか、疲労が大きかった。

 ドアの向こうから声がした。

「入るぞ」

 答えを待たずにエストルが入ってきた。ドアを閉めて、その横に座り込んでいたグレンの前に屈み込む。

「大丈夫か、グレン」

 呼吸がまだ整っていなかった。大丈夫だと答えようとしたが、声が出なかった。エストルは注意深くグレンを観察した。拒絶反応はもうないようだった。

「収まったようだな。水でも飲むか?」

 エストルはテーブルの上に置いてあったグラスに水を注いだ。グレンは差し出されたグラスを受け取ると、一気に飲み干した。まだ胸は大きく上下しているが、飲む前と比べて格段に呼吸の間隔が延びた。

「少しは楽になったか?」

 エストルが顔をのぞき込むと、グレンも弱々しい笑いを浮かべた。

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