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ヴィリジアン  作者: 千月志保
第10章 結界の向こう
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綻び

 城が見えてきた。空はどんよりと曇っている。嫌な気配を感じてグレンは走り出した。

「何かあったの?」

 城門をくぐるなり、グレンは見張り兵に聞いた。

「グレン将軍!」

 巡回の途中で通りかかったデュランが走ってくる。

「将軍、城の二階に結界が張られて、陛下とエストル様が閉じ込められてしまったのです」

「何だって」

「ソフィア将軍たちと結界を解こうとしたのですが、我々の魔力ではびくともしないのです」

 グレンはエストルの言葉を思い出した。エストルはこうなることを予想していたのだ。なぜ予想できたのか。グレンは走りながら考えた。

「ソフィア」

 中央階段の前にその姿を見つけ、声をかける。

「待たせてごめん。ソードはまだ帰ってないの?」

「帰ってないわ」

「結界のこと、デュランから聞いた。状況は?」

「三日前から動きがないの。結界がなくなる気配もないし」

 グレンはそっと右手を前方に出して階段をゆっくりと上り始めた。何かが指に触れて反応する。

「結界。綻びた?」

 波紋がわずかに広がった。人差し指の先が少し触れただけで。ソフィアたちが五人がかりでびくともしなかった結界が。グレンは結界の意味を理解したと感じた。緊張を解くように一息ついて振り返った。

「ソフィア、見えた?」

「ええ。結界が、わずかに綻びを見せた」

 不安そうに見ているソフィアにグレンは凛とした表情でうなずいた。

「二階には、多分上級ヴァンパイアがいると思う」

「そんな。町の外で深手を負わせて撃退したのに。いくら上級ヴァンパイアでもあんな傷で場所をピンポイントで指定して瞬間移動できるはずないわ」

「自分で瞬間移動したとは限らない。それに城の内部にあらかじめ魔法陣を用意しておくことだってできる」

「内通者がいるとでも言うの?」

 ソフィアの声は震えていた。

「ソフィアも薄々気づいていたんじゃないの?」

 グレンにたたみかけられて、ソフィアは沈黙した。ある日を境にセレストが変わってしまったようだという話は聞いていた。同じ王騎士であったクレサックから聞いた。ソフィアもかつてヴァンパイア討伐を冷静に命じるセレストに対してグレンと同じように疑問を抱いたことがあった。ソフィアはクレサックに胸の内を隠さず話した。誰かに話さずにはいられなかったのだ。セレストが変わった話を聞いたのはそのときだった。

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