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ヴィリジアン  作者: 千月志保
第6章 モーレ
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繰り返す悪夢

「ウィンター」

 グレンの体がどさっとウィンターの方に倒れてくる。慌てて両腕で受け止めるが、体が小刻みに震えている。

「グレン?」

 見たことのない反応にどう対処して良いのか分からず、ただ戸惑う。

「悪い夢でも見たのか?」

 だとしても、この反応は尋常ではない。グレンは生気のない声で答えた。

「う、うん……」

 そして、小さく呟いた。

「夢、夢だよね」

 言い聞かせるように確認すると、少し冷静になった。グレンは体を起こす。

「魔獣は?」

「倒したのではないのか?」

 ウィンターは驚いて聞き返す。

「いや、僕は」

 そこでグレンは口をつぐんだ。ウィンターは続きを待ったが、その後には沈黙しかなかった。仕方なくウィンターは自分の成果を公表した。

「念のため倒せていない可能性も考えて付近を捜索した。見当たらないから倒したものだと」

「そう」

 グレンは唇を噛み締めた。だが、すぐに口元を緩めて、時折見せる朗らかな笑顔になる。

「暖かいね」

 二人の横には火が焚かれている。ここは意識がなくなった場所、上級ヴァンパイアと対峙した岩棚だ。うっすらと霧がかかり、ひんやりとしていた。ウィンターが焚いてくれたのだろう。

「こんなところに何時間も倒れていたら、ただでは済まない」

「そうだね。ありがとう。いつも助けてもらってばっかり」

「いや。こちらも油断していた。ワイバーン型の魔獣と聞いていたから、すぐに片づけて帰ってくるとばかり思っていた。まさかこんなところで倒れているなんて」

 グレンは押し黙った。そして、しばしの沈黙の後、無表情に呟いた。

「上級ヴァンパイアに、会った」

「何?」

 ウィンターは驚いて言った。

「上級ヴァンパイア? どんな?」

「男性の容姿をしたヴァンパイア」

「だとしたら、〈002 追跡者〉もしくは〈005 執行者〉」

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