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3/7

性質

………………。

『結花』という存在は、ぼくにとって恐怖の対象だった。

ぼくは彼女と正真正銘血が繋がっていたが、それでもそんな繋がりで理解できるほど姉は簡単な構造をしていなかった。

未知。理解不能。

蜘蛛の巣のように、無作為に張り巡らされた無数の神経。

マンホールみたいに、底が見えない心中。

結花の存在というのは、ただひたすら深くて暗かった。

幼い時分から黒魔術なんかの本を片っ端から読み漁り、解剖学や心理学に制限無く手を出し、無軌道な言動を繰り返す。

しかしそれも家でいる時、しかもぼくが相手である時だけにしか行わなかった。両親や周囲に対しては、そんな愚かな様子を露とも見せなかった。それどころか、優秀で理知的な子供として有望視されていたのだ。何も知らない大人達は、結花を神童や才女と呼び大切にした。

そんな姉の姿を傍で見ながら、ぼくは恐怖に近い感情を抱いていた。

 

――あいつには魔女の名がぴったりだ。


ぼくは小さい頃から確信していた。

更に結花は聡明でありながら性悪でもあった為、優しい顔で人を甚振る最悪な人種だった。あのまま放っておけば、間違いなく他者を絶望のどん底に突き落とす人間になっただろう。

人の足を引っ張り、陥れ、引き摺り落とす事で伸し上がっていく。

そんな手が付けられない才能を秘めた存在に成長していただろうと、ぼくは常々思っていた。だから、こう言っては悪いかもしれないけど――


結花が早く死んで良かったと、ぼくは密かに安堵していた。


結花がトラックに轢かれたと聞いた時、ぼくはこんな事を思った。

大きな大きな黒い輪。物語に出てくる凶悪な化け物が填める、指輪。

それが姉を轢き殺してくれた。

まるで、化け物がどこかから姉を婚約者として迎えに来たように。

化け物から化け物への、求婚の証。こっちにおいで、と。

そんな下らない事をイメージした。冗談かと思うくらい結花には相応しいと、ぼくは不謹慎ながらも納得していた。

やっと、あいつに迎えが来たのだ。

本来いるべき場所へと戻ったのだ。

そう信じていた。

死んだ状態の結花はとても凄惨で、さすがに可哀想だと思った。だがこれが正しいのだ。仕方が無いのだ。


だから――――



こうやってまた結花の姿を見るのは、絶望に相当した。


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