1-5 魔神、これからを思う。
『シズク…か。
良い名前だね』
本当に、良い名前だ。
私が彼に、クロガミ・イツキに求めたのは、魔物であって魔物ではない、彼の眷属となる新たなスライムの、言わば種族名をつけてほしいと言ったつもりだった。
だが、彼が付けた名前は、このスライムのみに向けた、所謂個体名だった。
個体に対して、個体にのみ向けた、個体のみの名前。
それが意味するところを、彼は自覚していないだろう。
与えた魔力がスライムへと溶け込み、その存在が変わっていくのを感じる。
最も基本的な魔物であるスライムの1個体ではなく、【シズク】という存在、魔王イツキの眷属として。
その在り方そのものが変質している。
恐らく、【シズク】という名前は彼にとって【ヒトの名前】なのだろう。
それをどういうつもりで名付けたかまでは分からないが、そうした認識の中で付けた名前であることに変わりない。
名前に含まれているヒトとしての情報因子が、スライムを変質させてしまっている。
もはや、スライムとは呼べないほどに。
彼には未だ明確なビジョンはないだろう。
まだ私の助言に従い、この世界に慣れていくことしか考えていないだろう。
しかし、この個体の出現は間違いなく、この世界の転換点の一つになる。
神としての知識に頼ることなく、そう思える。
あぁ…
魔王である彼は、これから世界にどういう影響を及ぼすのだろうか。




