1-0 初めまして、 魔王です。
拝啓。
この文章を読んでいる貴方へ。
いかがお過ごしでしょうか。
私は今までただの男子高校生として生きてきました。
それなりに勉強も運動も出来て、それなりに友達がいて、自分なりに高校生活を満喫してきました。
ところがこの度、突然にも異世界へと飛ばされてしまいました。
知らせる事情すら覚束ない身ではありますが、今まで育ててくれた両親に無事を伝えることすら叶わないのは無念に思います。
さて、私が飛ばされた異世界のことなのですが。
どうにもこの世界の人々は過酷な環境にあるようです。
私が以前暮らしていた地球のような、環境汚染はありません。
ボタン一つで大都市が消失するような大量破壊兵器もありません。
人間の悪意というものを比べるなら、この世界は地球よりもよほど安全と言えるかもしれません。
しかしこの世界には地球には存在しなかった、人類の天敵が存在します。
魔物。
そう呼ばれている存在が、常に人々の生活と生命を脅かしています。
この世界の人間は、地球の人々とは比べものにならない身体能力を備えています。
まずこの世界には魔力というものが遍在しています。
これを身体の中に取り込むことによって、この世界の人間は強くなるそうです。
その魔力が濁り固まったものこそが、人類の天敵である魔物という存在だそうです。
つまり人類を辛うじて生き永らえさせている魔力こそが、魔物を生み出している元凶ということです。
さて、この魔物についてなのですが。
魔物というものは、自分以外のあらゆる存在に敵対しているそうです。
人類はもちろんあらゆる生命に対して、そして人工物や自然物に向けてすら、無限と言える破壊衝動を発揮するのです。
魔物という天敵があるが故に、人々はこれに対することを余儀なくされ続けているのです。
文明が急速に進むことを許されず、人口が爆発的に増えることを許されず、その版図を広げていくことを許されない。
本当に、紛れもなく魔物というものはこの世界の人間の不倶戴天の天敵です。
さて、こんな過酷な世界で私はこれから生きていきます。
いつか、誰かが、地球から来てしまった誰かが、この文章を読んでいるのなら、私を探て頼られることもあるかもと思い、この文章をしたためています。
可能な範囲で助けになることを約束して、別れの挨拶とします。
敬具。
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追伸。
私はこの世界で魔王となりました。
まだまだ弱輩な身ではありますが、人の天敵たる魔物を救うためにこの世界に飛ばされました。
とりあえず、自分がやりたいことを、自分に出来る範囲でやっていきたいと思います。
それでは。
魔王 黒神樹




