表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
乙女ゲームで存在しない悪役令嬢の双子の兄に転生してしまった【第三章◇進行中】  作者: かみながあき
第二章◆初等部編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/62

【4/1 番外if 】○○しないと出られない部屋 ※長編【エイプリルフール時空】

お約束っぽいけどお約束じゃない感じの、会話メインのギャグです。

エイプリルフールは時空が歪んでいるので、アシェルくんが中等部二年生(14歳)くらいの時の出来事なのかもしれません。

どこまで本当かは分かりませんが、先の展開のチラ見えが気になってしまう方は、三章中盤まで公開後にお読みください。

※安定の『特別長編番外』になりましたので、お時間がある時にどうぞ!※

 

 

「……え。どこ、ここ…………見たことな、ってダリルさんっ!?」

 

「あ、アシェルくん。やっと起きた……」

 

 目が覚めると、知らない部屋にダリルさんと二人きりという、全くもって理解が追いつかない状況にいた僕。

 

 薄暗くて周りもよく見えないけど、あまり広くはなさそうで。

 ほとんど何もない空間に、やけに大きなベッドだけが異様な存在感を放っている。

 というか、今まさに目覚めたのがこのベッドの上なんだけど。

 

 これって夢なのかな?

 よく分からないので、とりあえずもう一度眠ってみることにします。

 以上。

 現場から、アシェル・ガルブレイスがお届けしました。

 

 

(って、終われるわけないよね!?何なんだこの状況は……)

 

「だっ、ダリルさんっ。この部屋、何なんですか?見覚えもないし……ダリルさんはどうしてここにいるんですか?」

 

「えっと。わたしも、少し前に気が付いたところなんだ……。どうしてこんな所にいるのかも分からなくて不安だったんだけど……」

 

「そう、なんですね……。とっとりあえず、出てみませんか?案外知ってる場所だったりするかもしれませんね……」

 

「それなんだけど…………うーん、見てもらった方が早いかな……」

 

「な、なんですか……?」

 

「とりあえず、こっちに来てみて?」

 

 曖昧な返答をするダリルさんに手を引かれ、無駄にでかいベッドから降りて、歩くことたったの数歩。

 窓もないらしいこの空間の唯一の出入り口っぽい扉は、物々しい……いや、いっそ禍々しいほどの南京錠に似た鍵と鎖で封鎖されていた。

 

「な……」

 

(何だよこれ…………。いよいよ拉致監禁の線が濃くなってきたな……)

 

 そんな不穏なことが頭をよぎったとき。

 扉の上部にあった、まるで非常口のランプのような四角い枠に明かりが灯った。

 

 よく見る緑ではなくピンクのライトが照らされて、文字が浮かび上がる。

 

【 ◯◯しないと出られない部屋 】

 

「は……!?」

「え………………ええっ!?」

 

 これってアレか!?アレなのか!?

 いわゆる、アレな感じのアレで見かけるアレのやつ……!?

 

 ダリルさんも驚いてるってことは、二人揃わないとあのランプは点かない仕掛けなんだろう。無駄に凝ってる……。

 

(…………って、いやいやいやいやいや無理でしょバカでしょ有り得ないでしょ……!)

 

 誰だよこんな部屋作ったやつ…………と、僕らをこんなとこに閉じ込めたやつ。

 いくら僕がダリルさんのことが好きでも、そういう外部からの圧力でなし崩し的にとか、嫌に決まってんだろ……!

 そもそも不本意ながら全年齢だぞ!?セルフレイティング仕事しろ!

 

 

「………………ダリルさん」

 

「ひゃいっ!?な、なに、アシェルくん……?あの、えっと…………え、えっちなのは、いいいいいけないとおも、思います……!」

 

「ちょっ!?そんなことしないしさせませんよっ!……いいですか?復唱してください…………ここは全年齢です」

「ここは全年齢です」

 

「あってもR15までです」

「あってもあー、る……じゅうご……!?まって、全然安心できない……!」

 

 もはや大パニックのダリルさんと、冷静なフリをしてても大混乱中の僕と。

 オロオロわたわたしているところに、「パァンッ!」と破裂音が響いて。

 

 心臓が止まるかと思うくらいビックリして、ハラハラと降り注いでいる何かの大元へと目をやると。

 そこには、天井から割れたくす玉が吊り下がっていた。

 これ見よがしな垂れ幕には――

 

【エッチなことだと思いました?残念〜っ!

 正しくは「秘密を暴露しないと出られない部屋」

 でぇぇぇぇぇす!!】

 

 ……そんな事がでかでかと書かれていた。

 

(ム…………ムカつく!どこのどいつか知らないけど、ほんとに性格悪い……!)

 

「よ……よかったぁ。…………ん?ほんとに良かったのかな……」

 

 隣でまたダリルさんが困惑している。

 

「えっ、待ってよ…………秘密を、暴露!?無理無理っ、無理だよ……!どうしよう、アシェルくん……!」

 

 違った。やっぱりパニクってる。

 ダリルさんの秘密なんて、興味あるに決まってるんだけど、こんなに嫌がってるのに口に出させるわけにもいかないよね。

 

(いや…………こんなに"無理"って言うほどの秘密なんて、逆に気になって仕方ないけどさ……)

 

 だがしかし!

 男、アシェル・ガルブレイス。

 好きな人が困ってるのにそれを放置するなんて、ありえない。

 

「任せてください、ダリルさん。僕がこの扉を開いてみせますから!ダリルさんはそこの無駄にデカいベッドにでも座って、のんびりしててくださいっ」

 

「アシェルくん…………」

 

「大丈夫ですよ。秘密の暴露くらい、命がかかってるわけでもないし」

 

「でも…………あの鍵、20個くらいあるよ……?」

 

「えっ……」

 

 思わず黙ってしまった僕を、ダリルさんが気遣わしげに見つめてくる。

 

「いやっ、流石に20個も秘密を晒せなんて言わないでしょう…………たぶん。た、試しにちょっとやってみます!もしかしたら、すぐに開くかもしれないし!」

 

「そうだといいんだけど……」

 

 結局ベッドには座らず、傍で見守ってくれているダリルさん。

 僕はひとつ深呼吸をすると、意を決して口を開いた。

 

 

「…………禁書庫の合鍵を持っています」

 

「え」

 

――ガシャン

 

 どういう原理かは分からないけど、僕が告げた途端に南京錠のような鍵が、外れて落ちた。

 

「くそ…………やっぱり一つずつなのか……」

 

「ね、ねぇアシェルくん?いまわたし、聞いちゃいけないことを聞いちゃった気がするんだけど……」

 

「…………細かいことは気にしないでください。なんだったら、耳を塞いでいてくれてもいいですよ……」

 

 僕のイメージと名誉のためにも……。

 

「う……うん、分かった。何を聞いても気にしないように、がんばる、ね?」

 

 あーっ!そっちが採用されちゃったかー!

 まあ、いいんだけど……ちょっと意外だな。

 

「とにかくこの調子でどんどん解除しちゃいますんで、任せといてください!」

 

「がんばって、アシェルくんっ……」

 

「ふぅ…………。箒で飛べないかなって試したことがあります」

 

「あ……わたしもやった…………」

 

――カシャン、ガシャン

 

「っ!?ナイスアシストです、ダリルさんっ!一気に二個も外れましたよ!」

 

「や、やるよね?みんな一回くらいはやってるよね?」

 

「ですよね?」

 

 ダリルさんは何をそんなに恥ずかしがっているんだろうか。

 よく分からないけど、いい調子だ。

 

「よしっ。……小さい頃、フェンリルに乗るのが夢でした!」

 

「……ん゛っ……」

 

――ガシャン

 

「裏庭で大豆を育ててます!!」

「……えっ、大豆!?」

 

――シーン

 

「くそっ、これはダメか……」

 

「あっ、あの。アシェルくん?わたしもなにか……」

 

「待ってください!今のはダメだったけど、まだありますから……!」

 

 気を遣って参戦しようとしてくるダリルさんを押し留めて、コイツの傾向を考えてみる。

 大豆はダメでフェンリルがオッケーな境目は何なんだろうか。

 

(……もしかして、何かしらのダメージを伴う暴露じゃないといけないのか……?だとしたら、本当にいよいよ性格が悪いぞ……!)

 

「ダリルさん。ちょっと試してみたいことがあるので…………合図するまで耳を塞いでいてもらってもいいですか……?」

 

「え…………う、うん……」

 

 戸惑いながらも、言われた通りにギュッと耳を押さえてくれるダリルさん。

 そんなところも可愛くて大好きです…………じゃなくて。

 

「ダリルさん?聞こえますか?」

 

 試しに声をかけてみるけど反応はなくて。

 僕はひときわ緊張しながら、そっと呟いてみる。

 

 

「僕は、ダリルさんのことが好きです」

 

 

――ガチャガチャガチャ!ガシャーン!

 

「っ、嘘でしょ…………マジかぁ……」

 

 一気に四個の鍵が外れて、うるさいくらいの金属音が鳴り響く。

 残り個数が減ったことは僥倖だけど、やっぱりこれは『秘密にもランク付けがある』ということが証明されてしまった。

 

「あっ、アシェルくんっ!?なに……今なにしたの?ねえ、まだ耳ふさいでなきゃだめ……?」

 

 視界までは塞いでいなかったダリルさんが、驚愕に目を見開いて驚いている。

 少しだけ悩んだけど、僕はダリルさんの手に触れて、そっとその耳から離すように誘導した。

 

「ご協力、ありがとうございました。やっぱりコイツ、かなり性格悪いです……」

 

「性格って?…………ううん。そんなことより、今、なにしたの?」

 

「いやあ……ちょっと、特大の秘密をですね?」

 

「…………やっぱりわたし、ずっと耳ふさいでた方がいい?」

 

 確かに、ダリルさんに聞かれているよりもその方が僕の精神衛生的にはいいかもしれない。

 けど……。

 

「いえ。……あれはただの実験だったんで。もういいです」

 

 なんとなく悲しそうな顔で尋ねてくるダリルさんに、そうして下さいとは言えなかった……。

 

「あ、そうなんだ?ふふっ、こんな時にまで実験だなんて、アシェルくんらしいね」

 

 さっきまでしょんぼりして見えたダリルさんは、すっかりご機嫌になっていた。

 あるいは、悲しそうに見えたのは、僕の錯覚だったんだろうか。

 

(僕の秘密を聞きたがってる、とか。あったりする……?仮にそうだとしたら、それって興味本位?それとも……)

 

「えっと、実はわたし――」

「わーっ!!ちょっと待ってダリルさんっ、言わなくていい!言わなくていいからっ……!」

 

 バカなこと考えてただけなのに、黙ってしまった僕のことを、『ネタ切れ』か何かだと思ったのかもしれない。

 突然ダリルさんが扉に向かって何かを言おうとするので、慌てて遮った。

 

「だって、アシェルくんにばっかり負担かけられないよ……」

 

「ダリルさん……。気持ちは嬉しいですけど、最初あんなに嫌がってたじゃないですか。気にせず任せてくださいよ……」

 

「それはそうなんだけど。なんか、アシェルくんの秘密聞いてて、そういうのでも良いんだって思ったら、わりといけそうかな?って」

 

「えぇ…………じゃあ、一回やってみます?」

 

「うん、少しはわたしも貢献したい」

 

 貢献って……さっき箒の時にダリルさんも一個開けたはずなのに。

 止めてもやるって言うんなら、ぜひ聞かせてもらいますけども。

 

「えっとね。実はわたし、朝弱いんだ……」

 

(は?なにそれかわいい……)

 

――シーン……

 

 開かないのかよ!

 せっかくダリルさんが勇気振り絞って言ったのに……!

 

「あれ……。ダメかぁ……」

 

 ほら見ろ、しょんぼりしちゃったじゃないか。

 

 

………………カチャン

 

「いや開くのかよ!?すっごい間があったな今!?」

 

「なんか、オマケしてくれた?みたいだね……」

 

 なんなの?ほんとに判定どうなってんの?

 ダリルさんがしょんぼりしちゃうよりかは全然良いけど、そんなだったら大豆もオマケしてくれても良かったんじゃないの?

 

(ダリルさんに甘いのか、僕に厳しいだけなのか。どっちなんだ……)

 

 

「…………実はわたし、目が悪くなったから眼鏡をかけてるわけじゃ、ないんだ」

 

「そうなんですか!?」

 

 考え込んでいるうちに、再びダリルさんが自身の秘密を暴露してしまった。

 

――ガシャ、ガシャ、ガシャン!

 

 "眼鏡"で謎に三つも外れたことに驚いて、思わずダリルさんを見つめる。

 僕が中等部になった頃くらいから、たまに見かけるようになったダリルさんの金縁眼鏡は……。

 

(視力が落ちたからかけてるんじゃ、ない……?)

 

「え、じゃあ……おしゃれアイテムかなにかなんですか?」

 

「う……うん。そんな感じ、かな?かけてる方が、落ち着くというか…………」

 

 なんとなく気まずそうに視線を逸らすダリルさん。

 かなり衝撃的だったけど、そこまで恥ずかしがる必要無いんじゃないだろうか。

 

「めちゃくちゃ似合ってますし、いいんじゃないですか?ただ…………視力に問題ないなら、たまには素顔も見たいですけど……」

 

「…………かっ、考えとく……」

 

 気まずい!

 いま僕、完全に余計なこと言った……!

 

 

 ◇    ◇    ◇

 

「っ、くそぉ……!僕のライフはもうゼロだよ……!」

 

 物々しい鍵の残り個数が半分を切ったからなのか、なんなのか。

 ダリルさんの"おしゃれ眼鏡"以降、うんともすんとも言わなくなってしまった……。

 

 伊達メガネ宣言がよほど身を削る暴露だったのか。

 それともダリルさんには秘密なんてほぼ存在しないのか。

 あの後はもう、僕のちょっとだけ恥ずかしい秘密にリアクションを返すだけのbotのようになってしまったダリルさん。

 

(部屋が反応してくれないから、ダリルさんがリアクションしてくれるだけ、救いなんだけどさ……)

 

 もうだめだ、こんな小さな擦り傷を増やし続けるなんてきっと無意味なんだ。

 覚悟を決めろ、アシェル・ガルブレイス……!

 

「実は五歳までアリシアと一緒にドレスを着てました!!!(やけくそ)」

「……えっ、えぇえっ!?」

 

ーーガチャン!ガチャン!

 

(やった!やっと反応した!)

 

「でも二個か……。眼鏡より下なのかっ…………!」

 

「……アシェルくん?今の、くわしく」

 

「ごめんねダリルさん……。後で説明するから、今は捨て身モードが解除されないうちに、やっちゃいます」

 

「わかった……頑張ってね……」

 

 クソトラップ部屋よりもダリルさんの方が食いついてきたけど、今はトラップ解除の方が最優先だ。

 見てろよ……!肉を切らせて骨を断ってやるからな。

 

「……初等部の遊戯発表の衣装、僕は嫌だったけどダリルさんが可愛いって言ってたからまだ捨ててません!!!」

 

「そうなの!?」

 

ーーガチャン

 

「ダリルさんにもらったタルトの包みのリボンを大事に取ってあります!!!」

 

「えっ!?まさか今までの、全部……?」

 

ーーガチャン

 

「全部、ですね。なんか捨てられなくて……」

 

「あ、でも……わたしもアシェルくんにもらったキャンディの小瓶、まだ置いてあるなぁ……」

 

ーーガチャン

 

 ダリルさんの言葉にも反応して、また錠が落ちた。

 これで扉を封鎖している南京錠(?)も、あと三個だけだ。

 

(でもどうする?もうこれといって秘密なんて…………。まさかこのまま『転生者バレ』までしないといけないのか……?)

 

「すごい!あと三つだよ、アシェルくんっ。もう少しだね!」

 

「そうですね……。でも、もう口に出せる秘密なんて……」

 

 うっかり弱音を漏らしてしまうと。

 ダリルさんは眉を下げて、申し訳なさそうな顔をした。

 

「そう……だよね。ごめんね、アシェルくんにばっかり頼っちゃって……」

 

「そこは気にしないでくださいよ。僕がダリルさんに無理してほしくなくて、勝手に自爆しただけなんですから……!」

 

 納得しきれていないのか、曖昧な顔で笑うダリルさん。

 

「とりあえず……なにも思い浮かばないのにずっと扉の前に立ってるのもあれなんで。ちょっと座りません?」

 

「そうだね……」

 

 座る場所といっても、例のバカげたサイズのベッドしかないので、ひとまず二人で縁に腰掛ける。

 今更だけど、本当に"R指定なお題"じゃなくて良かったな……。

 

「ねぇアシェルくん。さっきのはなし、聞いてもいい?」

 

「さっきの?…………まさか、ドレスのことですか?」

 

「う、うん。どういう事なのか、気になっちゃって…………あっ!言いたくないことだったら、無理にとは言わない、けど」

 

 ほんのり頬を染めながら、もじもじと落ち着かない様子のダリルさん。

 一体どんな理由を想像しているんだろうか……。

 

「いや、むしろ聞いてもらった方が、あらぬ誤解を受けなくて済みそうな気がします」

 

「そうなの?」

 

 小さく首を傾げてキョトンとするダリルさんに、僕は真相を語り始めた。

 

「あの頃はそんな病名なんて知らなかったけど、僕、回路奇形だったじゃないですか?だから、小さい頃は発作ばかり起こしてて……。父上が魔道具の腕輪を見つけてきてくれるまでは、本当に危ない状態だったらしいんです」

 

「…………うん」

 

「それで、あのー。魔除け?みたいな感じで、ある程度の年齢になるまで、女の子のフリをさせる……みたいな……?」

 

「聞いたことある……。どこかの風習で、そういうの。男の子の方が悪い霊に狙われやすいから、災厄から守るため、なんだよね……?」

 

「そうです、そんな感じのこと言ってました!ダリルさん、民間の伝承とかにも詳しいんですね……さすがですっ」

 

 そんな風に、一瞬閉じ込められていることを忘れて雑談に興じていたとき。

 

 

――ガシャン、ガシャン、ガシャン

 

 びっくりして音の発生源を見ると。

 どういう訳か、突然全ての錠が地面に落ち……。

 次いで、激しい音を立てながら、扉にかけられていた鎖が薄闇に溶けるように消えていった。

 

「なんで……?」

 

「わっ、何か落ちてきたよ」

 

 ひらりと舞い降りたのは、一枚の紙で。

 

「なになに?……文字数オーバーのため、解放します…………速やかにさっさと退室しやがれくださいぃぃ?……ふざっ、ふざけんな!今までの苦労と羞恥プレイは何だったんだよ……!?」

 

「でっ…………でも、これで出られるね……?」

 

 ダリルさんに宥められながら、不平不満を飲み込んで再び扉の前に立つ。

 さっさと退室しろって言うくらいだし、本当にこれでもう開くんだよな?

 

「アシェルくん、ありがとうね。アシェルくんが居てくれたから、こんな訳の分からない状況でも、怖くなかったよ」

 

「ダリルさん……。僕も、あなたがいてくれたから、取り乱さずにいられたんだと思います」

 

 あっ、いま『取り乱してただろ』っていうツッコミはいらないです。

 ちょっとした感動のクライマックスシーンなんで。

 ダリルさんの中で、最後は僕のキメ顔で記憶が上書きされて欲しいので。

 

 内心でどこに向けているのか分からない宣言をしつつ、おそるおそる手をかけてみると。

 

――キィィ……

 

 わずかに軋む音を立てながら、呆気なく扉は開いた。

 それまでの薄暗がりとは正反対に、隙間から差し込む光の強さに、咄嗟に片腕で目を覆い隠した。

 

「ま、まぶしすぎるでしょ……!」

 

「目を瞑っても真っ白になっていく…………ウソ、どうなってるの……!?」

 

 ダリルさんの言葉通り、腕で覆い隠しても、目を閉じていても、全てが白に飲み込まれていく。

 光の奔流に叩き込まれたかのように、足元の感覚や聴力さえも曖昧になって――

 

 

 

 気がつくと僕は、自室の机に突っ伏して、座ったまま寝落ちしたみたいな体勢で目を開けていた。

 

 

「んんん……?何だったんだ、今の……」

 

 なんだか長い夢を見ていたような気がする、けど。

 曖昧な記憶は、淹れたての熱い紅茶に角砂糖を落としたみたいに、あっという間に溶けて形を失ってしまった。

 

「なにか大事なものを失ったり、核心に迫るようなことを聞いた、気がする……のに…………」

 

 起き上がって辺りを呆然と見渡すと。

 窓の外はまだ明るく、午前特有のどこか爽やかな空気に満ちていた。

 

 そして。

 部屋の壁には、そもそもこの世界に存在しないはずの、かけた覚えのないカレンダーがあって。

 

 4月1日には赤い花丸が、4月5日の欄にはハートマークが描かれていた。

 

 

 

*4月4日(土)、20時の定期更新には

 何の影響もありませんので、ご安心くださいませっ*


ここまでお付き合い下さりありがとうございました!

なんとまたしても7,500文字オーバーです……。

特別番外のたびに長編になってしまい申し訳ありません!

懲りずに今後もお付き合いくださると幸いです。


エイプリルフールということで、メタとの境目が曖昧になった『頭空っぽギャグ』でしたが、

少しでも楽しんでいただけていたらうれしいです。

よろしければツッコミコメントなどもお待ちしております(笑)


【4/1 番外if】用の活動報告には、アシェルくんの幼い頃の○○○を着たお写真も掲載しますので、興味のある方は是非ぜひご覧になってみてください♪


それではまた、明日の『第二章の人物紹介ページ』の更新で(*^^*)

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ