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ダブルサイココライド2 ―Saga Of Hermitー  作者: KJK
12章 円卓の勢力衝突・君主同盟VS悪魔党 
86/111

My Manifesto 悪党のVISION


賢人連盟最高指導者


賢者ダンカン・ダンヒル


背の高い痩せぎすの老人。髪は長くみぞおちまで伸びている白いアゴ髭。

年齢はかなりの高齢に差し掛かっていそうだった。

その割には背筋はしっかりとピンと伸びていて

Yシャツの上から灰緑のローブを羽織っている。



***



「実際に会うのは。初めましてだね、賢者のお爺さん。あの城では見かけてたけど。」


「おぉ、初めまして、魔女の嬢ちゃん。槍は壊れてしまったようだの。

いろいろ誤解も解きたい。ちぃと戦闘中止してくれ。」


老人が返し空気が和らぐ、

皆がホッとしたのも束の間。


「ちょ、ちょっと、ちょっと!? 全然壊れてないから! 

オジボルグ、まだ全然! 壊れてないからね!? 」


ーあぁ! でも壊さないでぇ!


全員が転がっていた巨大な槍の方に顔を向ける。

ソレはいつの間にか宙に浮いていて、静かに佇んでいた。


これからが本番だと言うように煙を吹きだし始め、火花を全身から

これ以上ない程に散らす。


そして形状が変化。もはや鉄柱ですらなくなり

表面はボコボコの歪な形に。まるで宇宙を彷徨う細長い隕石。

宿した魔力は今までの比では無い。



【賢者】が呟く。

おぉ? この槍、ここまでじゃったっけ?

……あ、マイケルが投資したから。



【星見】が霊的投資をし、そしてオジーが資源の要求者の技能を掛け合わせた。

他者からの資源を存分に使い、マイケルの力による更なる強化を経たオジボルグ。

遂に最終形態へ。オジボルグは全ての槍の目指す先へ到達した。


ーうわぁ…… 凄い… かっこいい…


オジーはオジボルグに見惚れ、呟くがそんな場合では無かった。

相変わらず壊れた感知系と認識系機能は修復されていない。

ここにいる全てのものがオジボルグの標的として認識された。


我に返ったオジーが逃げろ! と叫び

それをかき消すようにジェシーが言う。


「ダメです! 僕たちだけ逃げたら大勢の死人が出ます!

恐らく巨大な魔力反応には優先的に向かうから

それを利用して何とかしないと!」


賢者がため息をつき、ふわりと宙に浮いた。


オジボルグによる突撃を躱し、杖を振るう。

と人間サイズの霊気で作られた手が出現し杖を覆った。

オジボルグの軌道を変化させるように叩く。



「嬢ちゃん、悪いが手伝ってくれんか? どうせ戦後処理で悪魔党のものは総取りするんじゃろ?」


老人がハットの上から頭を掻きながら言った。


「もう、本当にいい加減にしてよ、あなたちさぁ!」


この日一番の大声を魔女が上げた。




@@@



「クラウス・ローゼンベルグ」


ど、ど、どうしてこうなった!


変な槍が制御不能に陥り暴走、全てを破壊するために突撃を繰り返している。

塔の天井付近を高速で周遊。気まぐれに突っ込んでは施設や機械兵、ロボットも破壊。

地獄のような光景、いやむしろ感覚としてはコントに近い。

いや、その両方なのかもしれなかった。なぜコントなのかもわからないし。

もう何でもいい。


何かとてつもなく阿呆な出来事に巻き込まれたような、

そんな空気の匂いを感じ取っただけなのだ。


轟音。横をアレが通り過ぎた。新幹線かと思った!

いや、それ以上だ。


かすってもいないのに翼が煽られて錐揉みするように吹き飛ぶ。

海で波に飲み込まれた時のようにもがく。

翼の角度を調整、必死に羽ばたき、表面のマナを動かし、

バランスを取り戻す。


たった今通り過ぎたと思った細長い隕石がミサイルのように疾走。

機械人とメカデビルをロックオン。加速して急降下。

跡形もなく粉砕し、次いでにビルを5棟串刺しにするかの如く突き抜け、

時間差で建物が倒壊。高度を上げて再度周遊。


あー、あぁ…全然たりねぇ… 暴れたりねぇよなぁ…

もっとぶっ壊しがいのあるものねぇかなぁ… なぁ!? ウラァァァァァ!


もしあれが人間ならそんなことを言い出しそうな凶暴さを感じてしまう。

ていうかあれ人工物だろ? いったいどんな奴が作ったんだよ!

作成者は知らないが、間違いなく人間が嫌いな奴に違いなかった。


それに報告自体は聞いたが、あんな物。槍じゃないだろう……

あれを槍だと思うやつは馬鹿だと思うね。


しかし問題はそこでは無い。

あれが飛び回っているところで人員の移送を指示されてしまったことだ!

無理だ! 怖すぎる!


要はベアを助けに行った魔女が敵と手打ちをしたらしく。

と言ってもそもそもが救いの党の人間ではないらしく。

魔女たち以外にも他の勢力が塔に忍び込んでいたらしく。

なんか色々面倒くさいことになってそうだ。


先ほど魔女の使う変な魚から思念を貰った。

その時は、へぇ、そうなんだ。知らないけど仲良く出来て良かったな。

他人事のように聞いていた。


しかし、その勘違いで敵対した奴らの決戦兵器が勘違いをし続けたまま

無差別に全てを襲っていて、しかも破壊するのが恐ろしく困難で、

魔女と賢者とかいう爺とジェシーとかいう知らない誰かが槍の燃料が尽きるまで、

タゲをとって消耗させるから、

その間人員の移送を槍がめっちゃくちゃに暴れまわってる階でもお願いね。

などという話を聞くまでは!


ていうか直せよ! そんな兵器。さっさと壊してしまえ! 正直そう思った。

そして塔を下に降りてきた実物を見た時に理解した。


「こりゃ、壊せないわ…」


とてつもなく頑丈そうだし、ていうかどう見ても槍じゃないし。

今も魔女とスーツの男2人が槍のタゲをとり、魔法使いみたいな爺さんが

槍をぶっ壊す気満々か? という勢いで攻撃。魔女と一緒に

蹴り飛ばしたり、魔法を当てて軌道を変化させたり……

被害を最小限に抑えようということらしいけど。この二人は壊す気自体はありそうだ。

ただ何をしようが壊れないから雑にタゲをとっているのかもしれないけど。


俺はペガサストランスポーターであって、ペガサス・レンジャーじゃない!

こんな混沌の中で天馬みたいな優雅な存在を酷使しないで欲しい。


嫌だ、嫌だ、と思いながら

その後も逃げ遅れた市民やら、負傷したジェイソンやら、

運びすぎて腰がイキそうだ。ジェイソンをアジト前で卸すとアジトが変形。

クレーンの腕が出てきて機械人を追い払う。そこに蜘蛛や狼などが現われて

三つ巴になったり。


滅茶苦茶だ、もはや誰が仲間なんだか…

蜘蛛たちはこちらを積極的に襲わないけど、市民たちは

機械人の仲間だと認識されると攻撃される。


ていうか、さっき俺死ぬ寸前だったよね? 最悪だ。

次の指定ポイントへ向かうと

天使のようなクール系美少女! イーヴィだ!


危ないぞ! 直ぐにでも逃げろ、と思いながら近づくと

アダムを託される。スーツの男たちに届けなければいけないらしい。


ん? 奴らは空飛ぶ隕石棒の相手をしているから無理なんだが?

と言うと。


ーとにかく届けて! 私はすぐに逃げないといけないので!


と謎に敬礼しながら言ってきた。 

うんうん、かわいい子は逃げたら? 私もそのほうがいいと思う。反対じゃないよ。

ただね、私も、逃げたいんだ。いやこの子に言っても仕方ないか。


あ、もしかして嘘だったりして? 

現実逃避で魔女と直通の端末で思念を送り確認。


するとジェシーが転移系の術で守るから来いと言われた。

え? 守れるの? マジでありがとう! 

と思いながら、もしそいつが守れなかったら?

と不安になって聞くとじゃあ『あたしが守るから来い!』 


OK! 心強いぜ!

当初の予想よりは危険な任務ではないことを

頭ではなく心で理解できた。早速アダムを背に乗せて翼を広げる。


この三人なら何かできるらしい。

アダムは霊気霧散スピーカーと鎖とジェシー?

誰か知らないけど。二人のうちどっちかのことだろう。

それらであの隕石棒の霊気を大量に消耗させられるとかなんとか。


まぁ、理屈とか方法なんぞどうでもいい。私には関係ない。

隕石棒があの二人から離れて、爺さんと魔女をロックオンしている隙に

あの男たちの場所まで近づく。


声をかけようとすると茶髪のスーツの男がこちらを見た。

目が釘付けになった。


こいつ強そうだなぁ…… 

あの魔法使いの爺さんとか魔女並みなんじゃないの?

そんな気がした。


というか、何か可笑しい、空間が…

こいつの周りと俺の周りで、異常なことが起きている気が…


突如空間が捻じられているような気がした。

それが今。空間が正常に戻された。背に乗っていたアダムが消え

いつのまにか奴の横に。


アダムとそいつがこちらへ手を振っている。


お疲れ、ありがとう。と言っているのが分かった。

どういたしまして。という感じで手を振り返して踵を返す。

抱えてる猫が可愛かった。


その瞬間、嫌な予感。

あの槍!こっちきてる!


何が起こったのかわからねーぜだが、いつの間にか、

違う場所に移動していた。さっきの能力だろう。空間をねじって置いて

一瞬で戻せる?


勝手にアトラクションに乗せられた感覚というか、

気持ち悪くて吐きそうだ。私はジェットコースターなども苦手な性質なので。

船酔いしたような気分。

また隕石棒が来たら嫌なので全力でマリオたちが作ったアジトへ帰還。



魔女からの思念を受信

ーアジトのポータルから外へ出て安全な場所へ行ってていい。

ー【鍵屋】が来る。ベアがポータルで待ってるから一緒に行って。


どっちだよ!

まぁ後者なのだろうが、上書きして思念を消し忘れたか感じか。

前者なら良かったのに。と思わず独り言ちた。


まぁいいや、了解。

というか鍵屋って? そんな存在は初耳である。

ベアに聞こう。



@@@


「My Manifesto」


死に物狂いでヘルシティの地下トンネルを抜け地上へ躍り出た。

ANKH3の軍勢の真っただ中。敵は既に待ち構えていた。


もはや悪魔党に勝ち目は無かった。出来ることは逃げることのみ、

しかし包囲を突破することは並大抵のことではない。



ゼフ・アドリエルの顔面は血だらけ、血は乾きこびりついている。

コンラッドはコックピット内で横たわっている。

死亡しているのだ。

唯一自分に最後まで付き合ってくれた奴だった。

ある意味でこいつこそが自分の保護者でもあった。

そしてそれが死んでしまった。と悪党は思った。


棺桶の中の職員たちも道具とまでは思ってはいない。

自身の中の悪魔の他に人間らしい部分を持ち合わせていること。

改めてこの時、ゼフは感じ始めていた。

むしろ今まで感じようとしなかったのだ。


色々とやらかしてきた。

それでも自分なりにやってきた。


そして今は逃げ場がなくなった。

ゼフはゆっくりと走馬灯を見始める。酷く時間があるような感覚。

最後の時が迫っているとは思えないほど。


スライドショーのように

今までの判断、選択が浮かび上がってくる。


そしてこの後のことも。

自分は地獄に落ちるだろうだとか、同情してほしいとか、

後悔している事だとかも。様々な感情が湧いてきたが

不思議と覚悟は決まっていて、清々しかった。


最後の最後で自分はやはり行き当たりばったりで、滅茶苦茶だ。

考えるのは面倒くさい。

ただ破壊とパワーでどうにかする。最後もそうしたかった。


気づくと動かなくなったコンラッドを見て

涙がとめどなく溢れ出ていた。


ーコンラッドォ…… テメェ勝手に死にやがって…


その時、湧き上がってきた記憶。

塔を建設する力を手に入れた時、コンラッドが言っていた台詞。


『親父ぃ! 世界中に塔を作ってもいいかもなぁ! イーヒヒヒ!

本当に俺らの塔が人類のセーフハウスになったりして!』


そのイメージがゼフに火をつけた。

力の限り叫ぶ。


ーコンラァァァッド! これが俺のぉぉ

マイ・マニュフェストォォォッォ!!


悪党の体の中から鉄槌が出現。

塔の外壁が崩れ、支柱が一人でに合体。自走するパーツとなり

ヘルシティへ集う。ビッグゼフの元へと。


戦車が、龍がそれを止めようとするが、出来ない。

引きずっていた棺桶も次々と合体。

ビッグゼフが新しい何かに生まれ変わろうとしていた。

その途中。


何かがビッグゼフのコックピットにまで

達していた亀裂の隙間からゼフの心臓を貫いた。

と同時に上空から巨大な雷が落ちた。


一瞬の出来事。


悪党は、言葉にならない呻き声を出し

操縦席からコンラッドの元へ、這っていき絶命、力尽きた。


(コンラッド、俺が悪かった。)


何故そんな台詞が出てきたのかゼフ自身もわからなかったが

それが最後に悪党が思ったことだった。


悪党の死をこの場にいた高位能力者すべてが感じ取った。

しかし合体は止まらない。ゼフの死はこの慣性までは殺すことはなかった。


巨大な塔の部位がビッグゼフと一体になり。

超巨大ロボットが誕生した。


「マイ・マニュフェスト」

超・巨大ロボット

全高150m

重量不明

技:塔建設 自給自走(LMP発掘)


* * *


自走する超巨大ロボットは世界各地に塔を建設するという

行動を繰り返す。いつこのロボットが世界から姿を消したのか、

塔が何に使われてきたのかは議論の分かれる所である。



>>>悪魔党 当主 【大悪党】ゼフ・アドリエル死亡




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